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第六章
92:急激に変化したから、インポになっちゃったんだろ?
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「エイト。キメセクってさあ。実際、どんな感じなの?あ、貝殻」
彼は浅瀬で泳いでいる小さな魚を追いながら、びっくりすることを聞いてくる。
「あ、貝殻じゃねえよ」
「だって、僕の退院祝をいつまでたっても受け取ってくれないし」
「勿体無くて受け取れねえの」
「はいはい」
と言いながら、零はエイトをチラリと見る。
「何?」
「エイト。角が取れちゃったね」
「どういう意味だ?」
「前はビルの間を吹き抜ける真冬の風みたいな雰囲気だった。今は、瀬戸内のオレンジみたい」
「はい?」
「そこら辺に居るただのニイチャンってことだよ。街で出会っても、通行人が雰囲気にビビったりしないタイプの」
「変わってしまった俺に六月礼王さんはご不満と」
「そんなこと無いよ。ちょっと心配なだけ。昔と今じゃ随分違うからさ。急激に変化したから、インポになっちゃったんだろ?」
「インポ言うな」
零の言う通り、精神的な不調はあった。
大切な相手と触れ合いたいと思っても、肝心な部分が役に立たないのだ。
挿入が全てではないから、零を感じさせてやる術はいくらでも持っているが、零は物足りないらしい。
だから、最近わがままだ。
まだ多くは食べれないのに、いろんな種類のケーキを焼けとエイトをこき使う。
余った分は、朝市に出すのだ。
素人だからまだ味に自信が無いため、値段は安い。だから、一時間ほどで綺麗に売れていく。楽しいが儲けは無い。正直、赤字だ。
「またケーキを焼けばいいのか?今度はどんな種類のだ?」
「大家さんを美味しいって唸らせるレベルのヤツ」
瀬戸内に越してきてからも、大家との関係は続いている。
零は物件を探しているようで、大家のツテを辿って情報を集めているのだ。
「唸るのはいいけど、原価率がどの、利益率がどうのってうるせえからな、あいつ」
「でも、数学が楽しくなってきたろ?」
「まあな。この勉強はこのためにあるって分かると面白い」
エイトの隣に戻ってきた零が携帯を見始める。
見ているのは物件情報だ。しかも、廃屋寸前の古い家屋ばかり。
ここ半年、ずっとこんな感じだ。相当、日本家屋に憧れがあるらしい。
「一軒家なんてまだ無理だぞ。セキュリティが甘えから。どこからでも入ってこられる」
六月礼王の銀行口座に現預金は殆どない。大家が分散してくれたので、ここまでやられてしまうとタタキの旨味はまるでない。だが、現状を確認せずFリストだけ見て、どうにかして零を見つける馬鹿もいるかもしれないので油断はできない。
「分かっているって、住むのはマンション。仕事はこっち。小さな塾をやってみようかと思って。エイトを教えるの楽しかったからさ」
「いいんじゃね?入院する前も言ってたもんな」
彼は浅瀬で泳いでいる小さな魚を追いながら、びっくりすることを聞いてくる。
「あ、貝殻じゃねえよ」
「だって、僕の退院祝をいつまでたっても受け取ってくれないし」
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「はいはい」
と言いながら、零はエイトをチラリと見る。
「何?」
「エイト。角が取れちゃったね」
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「前はビルの間を吹き抜ける真冬の風みたいな雰囲気だった。今は、瀬戸内のオレンジみたい」
「はい?」
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「変わってしまった俺に六月礼王さんはご不満と」
「そんなこと無いよ。ちょっと心配なだけ。昔と今じゃ随分違うからさ。急激に変化したから、インポになっちゃったんだろ?」
「インポ言うな」
零の言う通り、精神的な不調はあった。
大切な相手と触れ合いたいと思っても、肝心な部分が役に立たないのだ。
挿入が全てではないから、零を感じさせてやる術はいくらでも持っているが、零は物足りないらしい。
だから、最近わがままだ。
まだ多くは食べれないのに、いろんな種類のケーキを焼けとエイトをこき使う。
余った分は、朝市に出すのだ。
素人だからまだ味に自信が無いため、値段は安い。だから、一時間ほどで綺麗に売れていく。楽しいが儲けは無い。正直、赤字だ。
「またケーキを焼けばいいのか?今度はどんな種類のだ?」
「大家さんを美味しいって唸らせるレベルのヤツ」
瀬戸内に越してきてからも、大家との関係は続いている。
零は物件を探しているようで、大家のツテを辿って情報を集めているのだ。
「唸るのはいいけど、原価率がどの、利益率がどうのってうるせえからな、あいつ」
「でも、数学が楽しくなってきたろ?」
「まあな。この勉強はこのためにあるって分かると面白い」
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見ているのは物件情報だ。しかも、廃屋寸前の古い家屋ばかり。
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