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第五章

86:あいつ、組織に知られてない金、まだ、持ってるぜ。ケツ穴調教して聞き出したから本当だ

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 この病院は零がずっと世話になってきたところだ。各階のどこに公衆電話があるのか把握している。
 なんとかそこまで行こう。
 不当な養子縁組が行われようとしていることを伝えるのだ。
 掛け布団を巻き込むようにして床に落下する。
 そこから這い出して床を進む。
 いいぞ。あと少し。
 しかし、足音が近づいてきて、スライド式のドアが空き、上原が戻ってきた。
 白衣のポケットから携帯を取り出し、零に聞かせてくる。
 バアンっと何がを蹴る激しい音がして、
『新田ぁっ!!』
というダミ声が聞こえてきた。
 暴力に免疫のない零は、携帯越しでも心臓がドキドキする。
『てめえ、組織を出し抜こうとしやがって。落とし前を付けさせてやるからな』
 続いてエイトの声。
『だから、知らなかったんだって。しつけえな』
『てめえ、こいつと養子縁組済みって本当か?役所に確かめんぞ、ゴラア。嘘だったら逃げられんねえからな。こっちは組織に入る時に提出させた住民票やら免許証やらをまだ押さえている。実家に追い込みかけんぞ、新田ぁっ!』
『実家は勘弁しろって。マジで』
 エイトが情けない声を出す。
『サインはした。後は出しに行くだけってときにあんたらが来たんだろうが。だから、用紙はヤサにある。取り戻そうとしても警察が張ってっから無理だろうけれどな。あいつ、組織に知られてない金、まだ、持ってるぜ。ケツ穴調教して聞き出したから本当だ』
「幾らだ?」
『あんたらが把握している額にプラスしてあと七億』
 電話の向こうが一瞬静かになった。
『なあ。どうせ、成功報酬なんて一人五パーセントだろ?三億の五パーセントって幾らよ。あ、たった一千五百万?』
 零はエイトはニヤッと笑う顔が目に浮かんだ。彼が次に何を言うのか想像出来たからだ。
『七億の方は、内緒で分けちゃわね?上に知られてないんだからさ』
『一億ちょっとか』
 その声は、もらうもん貰ってとっとと終わりにしてえと零を拐ったバンの中で呟いた男のものだった。
『騙されんな。相手は新田だぞ』
 こっちは運転手の声。
 そして、開き直ったエイトの声。
『疑いたきゃ疑え。あんたらがもたもたしているうちに、あいつが死んだか金は国行きだ。知っているか?コッコってのに入るんだ。国庫。ニワトリみたいだな』
 しばらくの沈黙。
『なあ。一人一億五千万は硬い。手にしたら海外に高跳びして一生優雅に暮らせばばいい。メイド付きマンション買ってさ。俺はそうするつもりだぜ』
『……どうやるつもりだ?』
 一人が乗ってきた。
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