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第五章
82:確保
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それならば、部屋にいないのはおかしい。
やがて、ドリルの音がする。
「もしかして、扉を壊そうとしている?」
重病人がいたとしてもドアをこじ開けるためには警察立会いの元でされるはず。
でも、警察を名乗る声はない。
この状況、変だ。
零は防犯スティックをなんとか掴んだ。数十秒かかって顔の側まで手繰り寄せ、取っ手を歯で噛んで紐を引き抜き民間警備会社にSOSを送る。
ドリルの音は止まない。
「霧島さーん。霧島零さーん。大丈夫ですからね。もう間もなくですからね」
別の男の声もする。
何人いるんだ?
本当に救急隊なのか?
零の予想よりもずっと早く扉が開けられた。
ストレッチャーを走らせながら部屋に入ってきたのは、四人。着ている救急服は、
「何で、白?」
零はすぐに恐怖を覚えた。
救急服は淡いブルーなはず。病院通いが長いから、彼らが偽物であると一目で違うと分かる。
これ、手の込んだ演技だ。
どうしてここの居場所が解った?
大家さん?
まさか、エイト??
しゃがみ込んだ二人の偽救急隊員が零を敷布団ごとストレッチャーの上に乗せる。
「確保」
一人が携帯電話でどこかに連絡を入れている。
救護人のことを確保なんて救急隊員は絶対に言わない。
オートロックマンションといっても他の住人に続いて入ればいいので、中に入りむのは簡単だ。でも、零を連れて出るのは大変だから、一階にいるコンシェルジュの目から逃れるためにこんな手の込んだことを。
関係者から見れば素人丸出しなのに、それをかき消してしまうほどの行動力が恐ろしい。
「放せ」
力を振り絞って暴れようとすると、口を布で抑えられた。軽く首を閉められ一気に意識が薄れていく。
ガラガラとストレッチャーが動き出すのがなんとなく解った。
空気が変わる。
ガンガンに暖房を入れていた部屋から、ひんやりとした廊下に出たようだ。
「おい。どこに連れて行く気だ。おい!」
遠くから大声。
聞き覚えのある男の声だ。
「エイ……ト」
声は蚊より小さな声量だ。
偽救急隊は搬送車をバンドでストレッチャーに固定する初歩的なことすらしていない。だから、身体を捻って床に落下しようと試みたが無理だった。
やがて、ドリルの音がする。
「もしかして、扉を壊そうとしている?」
重病人がいたとしてもドアをこじ開けるためには警察立会いの元でされるはず。
でも、警察を名乗る声はない。
この状況、変だ。
零は防犯スティックをなんとか掴んだ。数十秒かかって顔の側まで手繰り寄せ、取っ手を歯で噛んで紐を引き抜き民間警備会社にSOSを送る。
ドリルの音は止まない。
「霧島さーん。霧島零さーん。大丈夫ですからね。もう間もなくですからね」
別の男の声もする。
何人いるんだ?
本当に救急隊なのか?
零の予想よりもずっと早く扉が開けられた。
ストレッチャーを走らせながら部屋に入ってきたのは、四人。着ている救急服は、
「何で、白?」
零はすぐに恐怖を覚えた。
救急服は淡いブルーなはず。病院通いが長いから、彼らが偽物であると一目で違うと分かる。
これ、手の込んだ演技だ。
どうしてここの居場所が解った?
大家さん?
まさか、エイト??
しゃがみ込んだ二人の偽救急隊員が零を敷布団ごとストレッチャーの上に乗せる。
「確保」
一人が携帯電話でどこかに連絡を入れている。
救護人のことを確保なんて救急隊員は絶対に言わない。
オートロックマンションといっても他の住人に続いて入ればいいので、中に入りむのは簡単だ。でも、零を連れて出るのは大変だから、一階にいるコンシェルジュの目から逃れるためにこんな手の込んだことを。
関係者から見れば素人丸出しなのに、それをかき消してしまうほどの行動力が恐ろしい。
「放せ」
力を振り絞って暴れようとすると、口を布で抑えられた。軽く首を閉められ一気に意識が薄れていく。
ガラガラとストレッチャーが動き出すのがなんとなく解った。
空気が変わる。
ガンガンに暖房を入れていた部屋から、ひんやりとした廊下に出たようだ。
「おい。どこに連れて行く気だ。おい!」
遠くから大声。
聞き覚えのある男の声だ。
「エイ……ト」
声は蚊より小さな声量だ。
偽救急隊は搬送車をバンドでストレッチャーに固定する初歩的なことすらしていない。だから、身体を捻って床に落下しようと試みたが無理だった。
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