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第五章

75:ケツ穴に入るってことか?普通の体調でもきついと思うぜ?

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 エイトが零の髪を掬う。
「百個でもいい」
「そこまで持たないよ、この命。僕、セックスしてから死にたい。真似事じゃなく、挿入までした本気のヤツ」
 腕を掴まれた。エイトの股間に導かれる。
「ケツ穴に入るってことか?普通の体調でもきついと思うぜ?」
「でもしてみたい。入れられてみたい」
 エイトが向き合うようにして零を膝の上に抱き上げた。ぎゅっとされる。
「僕、これ好きだ。死ぬ瞬間、エイトにぎゅっとされたいなあ」
とかすれ声で言うと、エイトはさらにきつく抱きしめてきた。

 風呂に入っていると、扉が叩かれた。
「いつまで身体を磨き上げてんだ?茹だるぞ」
 零が倒れていないかどうか、心配して声をかけたのだろう。
 かなり熱いお湯に入っているはずなのに、全然、身体が温まらない。
「うん。今、行く」
 湯船の手すりを掴んでなんとか立ち上がる。
 このマンションに身を隠して三日。食べては吐くの繰り返しですっかり弱ってしまっていた。
 それでも、少しは穏やかな時間があって、エイトと映画を見たり、身体を触ってもらったりした。
 お菓子も作って貰った。エイトは真剣な顔をして携帯画面で動画レシピを見ながらやってくれてそれでも最初の数回は焦げたり、生焼けだったりして、零を笑わせてくれたが、最終的には濃厚なチーズケーキを作ってくれた。サイコロ一つ分、食べられた。美味しかった。
「うわ。また鼻血」
 曇った鏡を手で抜くと、鼻の下が赤くなっている。
 風呂に持ち込んでシナシナになったティッシュを抜き取って鼻の穴に詰める。
「これからセックスしようっていうのに、かっこわる」
 明日にはきっと動けなくなる。
 そんな予感が合った。
 風呂場を出ると、エイトが待っていた。
 零をふわふわのバスタオルで包んでくれる。
「寒ぃ?」
 鎖骨の辺りに軽く触れられた。
「ううん。温度調節が上手く行ってないんだと思う。暑いのか寒いのかも分からない」
 風邪を引いたときみたいなゾクゾク感、それに油汗。
「またにしないか?」
 エイトが濡れた襟足を拭きながら言った。
「またっていつだよ。僕の身体にかかる負担は気にしないで」
 初めてだから、尻が切れて出血だってするかもしれない。でも、どうせ、もうすぐ土に還るはずの身体だ。少しぐらい傷ついたっていい。
「エイトとセックスしたっていう記憶を持ってこの世から消えることができるなら、僕、それでいいんだ」
 敷布団の上に座る。
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