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第四章

63:医者は役に立つからな

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「延命するようなのはあるよ。ゲーゲー吐いてしんどくてたまらなくて、最後ベットで寝たきりになって意識が無くなるやつ。わあ、エイト、すごい顔。さあ、暗い話は止めよ。せっかくのデートだし?そうだろ?」
 ケーキ屋に入ると、零はケーキとともになぜかナポリタンを注文した。そちらは時間がかかるという。
「悪い。うんこしてくる」
「電話は?」
 自分の携帯を差し出してくる零に、「いい」と首を振る。
 さっき駅ビルの中で公衆電話を見かけたのだ。レアキャラでも見つけた気分だった。
 公衆電話からパンの携帯に電話をする。公衆電話からかけているので非通知表示が出ているはずだ。警戒して出ない。しつこくかけなおした。やがてしびれを切らしたのか、
『誰?』
「てめえ、電話するって言っただろうが」
『何だ。ハジメンか』
「ちゃんと調べたんだろうな」
『調べた、調べた。上原って医者は、ここ数年、バカラにドハマりしている。いろんな裏カジノで負けている。消費者金融、闇金にも借金あり。首が回らなくなって、闇金に追い込みをかけられてハジメンのとこのカンパニーに売られて、借金おまとめ精算。で、その見返りに駒にされているっぽい」
「医者は役に立つからな」
 診断書の偽造。薬の横流し。臓器売買。きっとこの医者は骨までしゃぶりつくされている途中。
『死亡保険金の支払いリストの件も調べた。名簿屋に聞いたら最近、特に出回っているって。タタキもやばくなってきたから、流れが変わってきたってことだね。んで、どうすんの?』
「どうもしねえよ」
 エイトは受話器を叩きつけた。
 さすがのパンも零にはたどり着けないだろうが、万が一知って興味を持たれては困る。人間、金が絡めば刑務所行きが濃い案件でも飛びつく馬鹿は大勢いる。
「待たせた」
 エイトは駆け足で店に戻る。
 ナポリタンもケーキもすでにテーブルにあって、零は食べずに待っていた。
 食事を始める。ナポリタンを口に運んだ零は、「懐かしい味だな」と言った。
「ソフト麺っぽいとこが学校給食みたい」
 いいなあ、こういう日常会話。
 闇組織に連中と話すことと言えば、女、薬、金。あとは、どうやって警察を巻くかだった。
 普通ってこういう生活なのか。
 いまとなっては、どうしてあそこまで闇組織にいることに固執したのか分からない。 
「ぼんやりしている。どうしたの?」
「でかいうんこが出てびっくりして」
「食べているときにそういうこと言わない」
「ん」
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