【完結】そっといかせて欲しいのに

遊佐ミチル

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第四章

61:僕を本気にさせたのなら、よそ見なんか許さないからな

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 悲鳴みたいな声があった。
 零は初体験についていくだけでいっぱいいっぱいのようだ。
 床に落ちていたローションボトルを持ってきて、自分と零のにたっぷりつけた。
「最後までっ、できないっ」
「最後?!」
「入れるんだろ、お尻の穴に」
 ゲイのセックスの知識はほとんど無いが、どう考えても負担が大きそうだった。それに相手は病人だ。
「無理じゃね。急には」
 ローションが垂れる指でそこに長めに触れると、「んーんー」と唸って零が身をよじらす。
 その姿にすごく興奮した。
 生まれて初めて、エイトだけにさらけ出してくれただろうから。
 零に覆いかぶさり張り詰めて痛い性器を零のに重ねる。
「知らないから。こんなことして。僕を本気にさせたのなら、よそ見なんか許さないからな。……うわ、自分に引く」
「シュウチャクしてくれるってこと?」
 エイトは腰を上下に滑らす。
 呻きながら「そうだよっ。執着!めちゃくちゃしてやる」と零が言う。
「きっといいストーカーになれる」
 濡れて擦れ合う性器が気持ちがいい。それも途方もなく。
「すげーね。セックスの真似事。最高だわ」
「良すぎて、僕、死にそう」
と零が笑えない冗談を言う。
「俺のテクが良すぎるんだわ、きっと」
とエイトは耳元で囁く。
「どっからその自信。えっと、デリヘルボーイしてたときのこと聞いていい?めちゃくちゃ売れっ子だった?ああいうのって人気、不人気あるんだろ?」
「残念ながら、売れっ子ではなかったかな。小柄なのを好むのが多かったし」
「言っておくけれど僕、エイトの身体目当てじゃないからね。エイトだからよかったんだからね」
 ベットに投げだされていた零の腕がエイトの首に回る。背中を擦られて、エイトはぐっとくる。
 もういらない。
 どの女もそう言った。
 身体が大きくなったから、年齢がいって希少価値が無くなったから。ヒモのくせに不在にする日が増えたから。
 あんたなんて、最初からいらなかった、って言われたこともあったけ。
 その女は自分を孕んで産み捨てただけ。コインロッカーや公園に捨てなかったことを褒めてやらねばならない。
 八日と付けたのも、生まれたのがその日で、父親が誰なのか分からない赤ん坊の名前を考えるのが面倒だったから。立て続けに中絶してもう産めない身体だと思ったのに妊娠に至って迷惑だったと言われた。
 腰をぬるりと動かす。
 零が目を瞑って喘ぐ。
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