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第四章

54:じゃ、いつすんだよ、セックスは

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「口、開けて。ちょっとだけ」
 薄く開いたそこに舌先を侵入させる。
 エイトは今までどの相手にもそこまで気を使ったことは無い。
 サオをしていた頃の客はその当時のエイトと二十も三十も年が離れていて、セックスに貪欲だったし、ヒモをしていた頃の女は、チャラ打ち、つまり会ったその日にその日限りのセックスになんの抵抗もない女ばかりだった。
 だから、キスだけで震える零にこっちまで震える。
 舌の気持ちよさを覚えたのか、零が大きく口を開けるようになった。
 両耳を揉み込むようにして手を動かし、舌は腰をピストンするみたいにすると、アフアフと感じた声を漏らす。口の端からは涎が垂れ始めた。
 エイトは変な制圧感を覚える。
 頭が痛くなるほどキスをし続けた。
 スウェット越しにレイをあぐらをかいた膝の上に乗せると、零のが反応しているのが分かる。小ぶりだが硬い。エイトのスウェットはサイズが小さいので形が丸わかりだ。
「枯れた、……ん、じゃなかったの?」
 尻でそれをこすられた零が喘ぎながら言う。
「復活した」
「現金すぎる」
「あ?」
「打算的だって言ってんの」
「ダサンテキ?なあ、紙の辞書って本屋に売ってんの?」
「聞いている、人の話?!そもそも、展開が早すぎだよ!キスだって付き合って三ヶ月過ぎてようやくするものなのに」
「じゃ、いつすんだよ、セックスは」
「半年後。それでも早いぐらい」
 チラリとエイトを見ながら言うので、彼を抱え直して、自分ので零の下半身を擦り上げる。
「あっ……」と艶めいた声が上がった。
「なるほどなあ。焦らしプレイってことか」
「違っ」
 首筋に軽く噛みつくと、零が身体をのけぞらせた。

 夕方、零が「じゃあ二時間ぐらいで帰る」と言って部屋を出ていく。
 飯を食べに来いと大家に言われ、七階に出かけて行ったのだ。
「エイトも来ていいって言ってたよ」と誘われたが、丁重に辞退した。
 積もる話があるだろうし、こっちも出かける用事があったのだ。
 きっかり十分がすぎ、零が戻ってこないことを確認すると、零は部屋を出た。
 零より早く帰るつもりだが、帰りが遅くなってしまった時用に、「でっかいうんこしてくる」と書き置きは残してきた。
 目指すは池袋だ。ラブホテルが連なる北口。そこの手前にある雑居ビルに一般人は入れないカジノがある。つまり、裏カジノ。
 半年ぐらいの短いスパンで場所を変える裏カジノだが、ここは随分池袋警察に付け届けをしているらしく何年も場所を変えていなかった。
 賭け事がしたいわけでは無かった。
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