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第二章
38:あいつ、ゲイでしょ。根っから女が駄目なタイプ
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「あれ、予約する女を間違えたか?」
女は、中へ。
しかし、十分もしないうちに外に出てきた。
キョロキョロと辺りを見回している。
エイトが選んだ店から派遣されてきたデリヘル嬢なら、ドライバーが来るまでどこかで時間を潰す必要がある。繁華街に行けば休める場所がたくさんあるからどっちの方角なのか探しているようだ。
「なあ、あんた。ちょっと」
エイトは店を出て声をかける。
ナンパかキャッチだと思ったのか女は声など聞こえていないようにスタスタと歩き出す。
エイトは部屋番号を告げた。
「部屋にいたのは友人。予約したのは俺だけど、相手をしてやって欲しいのはあっち」
女は足を緩めない。
「あ~。店に電話しちゃおっかなあ。まだ十分しか経ってないし。返金になるぞ、きっと」
それが嫌だったらしい。女は物凄い勢いで振り向いた。
「分かったわよ、何!?!」
「デリドラ待つんだろ?美味いんだかまずいんだか俺にはよくわからんねえけど、すぐそこに喫茶店がある」
エイトは女を店内に入れた。もう一杯コーヒーを注文する。
女が苛立ったようにテーブルに片肘を付いた。エイトの予想とは違い化粧はそこまで濃く無く目鼻立ちのはっきりした華やかな女だった。
「向こうが帰っていいって言ったんだからね!地雷なんてしていない」
短時間で終わるよう、そっけなく、もしくは意地の悪い接客はしていないと言いたいようだ。
エイトは声をひそめる。
「相手は童貞だってみりゃわかっただろ。緊張しまくってたんだ。空気呼んでくれよ」
「あいつ、全然、やる気なんて無かった。ハグしてやったって身体をガチガチにするだけ。キスしようとしても顔を背ける。シャワーに誘ってもいらないっていう。仕方ないから一人で浴びれば、廊下に服や荷物、お金が置いてあって部屋から『もういいです。帰ってください』って叫ばれたわ。最低でしょ。寒い廊下で着替えたつの」
「風呂入っただけで四万五千円貰えるんならいいじゃねえか」
それは、こっちがゴミに二日半まみれて得た金なんだぞ、と言ってやりたい。
女はエイトをギロッと睨んだ。
「手取りは三万。あのさあ、私を呼んだのは罰ゲーム?あいつ、ゲイでしょ。根っから女が駄目なタイプ。従兄弟があんな感じだったから絶対そう」
「は?」
エイトの時は止まった。
そっちの線は全然考えたことがなかった。
大寒波の夜の風呂で妙に零が艶めかしく見えたのも、自分がムショ帰りで、枯れた性欲が狂い咲こうとしたのだと思っていた。そこからずっとそれは続いていて……。
「知らなかったとしたら、こういうの本人にとっては余計なお世話だと思うけど?」
「いや、余計なお世話っていうか……」
あいつは病気が再発して、だからできるうちにしたいことを。
女は、中へ。
しかし、十分もしないうちに外に出てきた。
キョロキョロと辺りを見回している。
エイトが選んだ店から派遣されてきたデリヘル嬢なら、ドライバーが来るまでどこかで時間を潰す必要がある。繁華街に行けば休める場所がたくさんあるからどっちの方角なのか探しているようだ。
「なあ、あんた。ちょっと」
エイトは店を出て声をかける。
ナンパかキャッチだと思ったのか女は声など聞こえていないようにスタスタと歩き出す。
エイトは部屋番号を告げた。
「部屋にいたのは友人。予約したのは俺だけど、相手をしてやって欲しいのはあっち」
女は足を緩めない。
「あ~。店に電話しちゃおっかなあ。まだ十分しか経ってないし。返金になるぞ、きっと」
それが嫌だったらしい。女は物凄い勢いで振り向いた。
「分かったわよ、何!?!」
「デリドラ待つんだろ?美味いんだかまずいんだか俺にはよくわからんねえけど、すぐそこに喫茶店がある」
エイトは女を店内に入れた。もう一杯コーヒーを注文する。
女が苛立ったようにテーブルに片肘を付いた。エイトの予想とは違い化粧はそこまで濃く無く目鼻立ちのはっきりした華やかな女だった。
「向こうが帰っていいって言ったんだからね!地雷なんてしていない」
短時間で終わるよう、そっけなく、もしくは意地の悪い接客はしていないと言いたいようだ。
エイトは声をひそめる。
「相手は童貞だってみりゃわかっただろ。緊張しまくってたんだ。空気呼んでくれよ」
「あいつ、全然、やる気なんて無かった。ハグしてやったって身体をガチガチにするだけ。キスしようとしても顔を背ける。シャワーに誘ってもいらないっていう。仕方ないから一人で浴びれば、廊下に服や荷物、お金が置いてあって部屋から『もういいです。帰ってください』って叫ばれたわ。最低でしょ。寒い廊下で着替えたつの」
「風呂入っただけで四万五千円貰えるんならいいじゃねえか」
それは、こっちがゴミに二日半まみれて得た金なんだぞ、と言ってやりたい。
女はエイトをギロッと睨んだ。
「手取りは三万。あのさあ、私を呼んだのは罰ゲーム?あいつ、ゲイでしょ。根っから女が駄目なタイプ。従兄弟があんな感じだったから絶対そう」
「は?」
エイトの時は止まった。
そっちの線は全然考えたことがなかった。
大寒波の夜の風呂で妙に零が艶めかしく見えたのも、自分がムショ帰りで、枯れた性欲が狂い咲こうとしたのだと思っていた。そこからずっとそれは続いていて……。
「知らなかったとしたら、こういうの本人にとっては余計なお世話だと思うけど?」
「いや、余計なお世話っていうか……」
あいつは病気が再発して、だからできるうちにしたいことを。
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