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第二章
33:舌とかちんこ使う方なら
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「あの姿、このマンションの冬の風物詩。ショールももう十五年選手だよ。母さんが死んで三年になるけど、その年からもう羽織らないかなあって思ってたらまだ続いている」
「あんたが取り持ってやればよかったのに」
「僕が大家さんの気持ちに気づいたのは中学の終わりだよ。大人をくっつけるなんて無理」
「俺だったらするね。そうしたらこのマンションの相続人になれた。安定が転がり込んでくる。こびへつらうなんて安いもんだ」
「そうかな?」
「小っせえ頃から自分の身体がヤバいって分かってんなら、身の回りに有るものは何でも使っておけ。そうすれば、あいつが家族になってくれてあんたを看取るっていう選択肢も残せた」
「かもね」
「俺には理解できねえ。得もないのに、母親が編んだ色違いのショールをわざわざ羽織って見せに行く行為」
すると笑っていた顔が寂しげなもの変わった。でも、むりやり唇の端を引き上げている。
「ああやって会うと赤の他人でも繋がっている気がするんだ。母さんが残してくれた縁みたいなさ」
「ふうん」
「そんなに僕の考え、気に入らない?」
と聞き返される。声が尖っていたらしい。
怒っているのか喜んでいるのかも分からないとよく言われてきたのに。
「別に。あんたの人間関係だし」
「あんたじゃないよ。零」
そう呼んで欲しいという意味なのだろう。
でも、何だか呼ぶのに抵抗があった。
仲間意識は危険シグナルが灯った証拠。
動物的勘がそう言っていた。
「僕ら、さっきケンカっぽくなったね?」
「なってねえし」
「ほら、今も」
ペットボトルを握る零は何だか楽しそうだ。
「これラベルを剥がさなきゃ。キャップも外さないと。缶の方はアルミ缶とスチール缶で分別」
エイトは気持ちを切り替えた。
今は汚部屋に掃除。しかも自分が持ってきた案件だ。
「やること多そうだな。午前中でゴミ出し。午後に粗大ごみで終わるかと思った」
「まずかさばるペットボトルをまとめてゴミステーションに出しちゃおうか。そっちでキャップとラベル剥がしかな。頼めば掃除のパートさんらがやってくれるかも」
「OK」
エイトはどんどんペットボトルをゴミ袋に入れていく。
「エイトって肉体労働のバイトしたことあるの?」
「舌とかちんこ使う方なら」
「赤裸々な表現だな。幾ら貰ってた?」
「あんたが取り持ってやればよかったのに」
「僕が大家さんの気持ちに気づいたのは中学の終わりだよ。大人をくっつけるなんて無理」
「俺だったらするね。そうしたらこのマンションの相続人になれた。安定が転がり込んでくる。こびへつらうなんて安いもんだ」
「そうかな?」
「小っせえ頃から自分の身体がヤバいって分かってんなら、身の回りに有るものは何でも使っておけ。そうすれば、あいつが家族になってくれてあんたを看取るっていう選択肢も残せた」
「かもね」
「俺には理解できねえ。得もないのに、母親が編んだ色違いのショールをわざわざ羽織って見せに行く行為」
すると笑っていた顔が寂しげなもの変わった。でも、むりやり唇の端を引き上げている。
「ああやって会うと赤の他人でも繋がっている気がするんだ。母さんが残してくれた縁みたいなさ」
「ふうん」
「そんなに僕の考え、気に入らない?」
と聞き返される。声が尖っていたらしい。
怒っているのか喜んでいるのかも分からないとよく言われてきたのに。
「別に。あんたの人間関係だし」
「あんたじゃないよ。零」
そう呼んで欲しいという意味なのだろう。
でも、何だか呼ぶのに抵抗があった。
仲間意識は危険シグナルが灯った証拠。
動物的勘がそう言っていた。
「僕ら、さっきケンカっぽくなったね?」
「なってねえし」
「ほら、今も」
ペットボトルを握る零は何だか楽しそうだ。
「これラベルを剥がさなきゃ。キャップも外さないと。缶の方はアルミ缶とスチール缶で分別」
エイトは気持ちを切り替えた。
今は汚部屋に掃除。しかも自分が持ってきた案件だ。
「やること多そうだな。午前中でゴミ出し。午後に粗大ごみで終わるかと思った」
「まずかさばるペットボトルをまとめてゴミステーションに出しちゃおうか。そっちでキャップとラベル剥がしかな。頼めば掃除のパートさんらがやってくれるかも」
「OK」
エイトはどんどんペットボトルをゴミ袋に入れていく。
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