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第二章

29:わかりやすく言えば男のデリヘルだよ。

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 数ヶ月で運命の相手、エイト的には鳥肌が立つ表現なのだが、そんな人物と出会うのはちょっと難しいかもしれない、でも、それに近い体験なら。
「怒るなよ。下世話的な意味じゃなく、死ぬ前にセックスしてえか聞いてんですけど。なあって」
 こたつの中で軽く足を突くと、
「……したい、けど、それは、僕の個人的な問題で」
「あんた、どうしてそう面倒くさい言い方すんの?」
「動物じゃないから」
「じゃあ、何か?俺が動物だって言いたいのか?」
「エイトはセックスが仕事だった時期があったんだろ。そして、それが好きじゃなかったから性欲が枯れた。じゃあ動物とは違うだろ」
「……」
「何で、エイトが黙るんだよ。センシティブな話を振ってきたのはそっち」
「分かんねえけど……、あんたの言い分、あっそうかって思えて。俺はただ、セックスなんてそこまで構えるもんじゃないぜって言いたかっただけ。なんせ、ヒモの前はサオをやらされてたし」
 大寒波の夜に命を救ってくれた男もこれで大いに呆れるだろうと思うと、なんだかせいせいした。
 メンソールのタブレットを口の中に放りこんだみたいな気分になれると思った。
 零と出会ってから警戒心というものがおかしくなっていた。
 なんでもかんでもゲロりたくなる。
 身知らずの相手に過去を語るのは危険だとわかっているのに。
 調子こいた半グレは、どこそこでタタキ(強盗)をやったと仲間に自慢して、後になって謳われ捕まったりする。
 世の中、どこでどう繋がるか分かったものじゃない。
 でも、言いたい。
 この男に限っては。
 零はぽかんとしている。
「わかりやすく言えば男のデリヘルだよ。小学生、中学生専門の」
「ちょ、待って」
 零が手を突き出し、目を白黒させた。
「そんなの違法だろ?」
「おう」
「当然のことみたいに頷くな。そんなところで働かされてて」
 エイトは眉根を寄せる。
 違法は違法だけど、周りにはそんな同年代ばっかりだった。そして、みんなそこそこ幸せだったはず。
 金はきちんともらえる。うまいもんだって食わせてもらえる。
 商品だから殴られることもない。
 なのに、零は無抵抗の子供がひど目に合ったみたいな顔をしている。
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