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第二章

27:僕、再発しちゃって。その報告

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 マンション住まいは数年してきたが、大家に挨拶に行く住人なんて初めて見た。零には濃い人間関係があるらしい。見るからに幸薄そうな感じなので、なんだか、それが意外だ。
「大家さんさ、うつ病なんだよ。ただでさえ重く捉えるから。話もなんだかんだで長いし」
 エレベーターで七階へ。
 ここがこのマンションに最上階だ。下の階は単身者用、上の階はファミリー用で間取りや広さが違い、全部で五十部屋あるらしい。
「前はさ、こっちの階に住んでたんだ。大家さんの隣の部屋。母さんが死んで家賃の安い下に引っ越したんだ」
 零は通り過ぎざま部屋番号の表札を眺め懐かしそうな顔をする。
 そして、隣の部屋のインターフォンを押した。
「あれ?いない。見回りかな」
 大家は一棟まるごと所収していてマンションの管理人も兼ねているらしい。家賃収入だけで優雅に暮らせるだろうから、管理人ぐらい雇えばいいのに。ケチな奴なのかもしれないなと思いながら零と一緒に引き返しかけたとき、
「いた」
 大家の部屋とは真反対側にある部屋の扉を開けて、部屋から出てくる業者を渋い顔で見送っている男がいた。ひょろっとした神経質そうな細面。年齢は五十代に手が届きそうなぐらい。学者っぽい雰囲気を漂わせている。なぜか、零が羽織っているショールと別の色で同じ柄のを肩に羽織っていた。
「あれ、零」
 男は気さくに声をかけてきた。
 なぜか分からないが、エイトはいらっとする。
「七階に行ったら大家さんいなくて。この家、何かあったの?うわっ」
 零があまりのも驚くのでエイトも覗かせてもらうと、
「汚部屋」
 部屋は零のところより遥かに広いが、天井近くまで缶やペットボトル、弁当のプラスチック類が積み重なっていた。
「臭っ」
 耐えきれず言うと、大家が扉を締めきっちり鍵をかけた。
 誰もこんなとこに盗みに入んねえっつのとエイトは突っ込みたくなる。
「身寄りのない方でね。病院から亡くなったって連絡が入った。部屋を開けてみたらこの通り。原状回復するのに幾らかかるか業者に見積もりに」
「業者は何て?」
「四十万円」
「うわ!そんなに?」
「3DKにこれだけゴミが詰まっていれば、そういう値段になるらしい。作業始めたらもっとかかるかもしれないって。ああ、頭が痛い。金額も臭いも何もかも。冬だからこれぐらいの臭いで済んでいるし、まだ近所から苦情は来ていないけれど早々になんとかしないと。あ、何か用だった?」
「うん。僕、再発しちゃって。その報告」
 大家がゆっくりと瞬きした。
「……そうか。入院は?」
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