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第二章

22:築年は古そう。

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 闇バイトに応募してきた者を実家の住所も抑えた上で逃げられなくさせ、電話をやらせるのか、空き巣をやらせるのか、ひったくりをさせるのかなどなど振り分け、盗んできたものは信用できる換金先に下ろす。金持ちの家の中を知る引っ越し業者、リフォーム業者、配達業者から情報を引っ張るのもエイトの役目だった。
 ここまでくると月数百万以上金を得ることができた。
 いつ辞めてもよかった。
 零も闇バイト応募上がりだが、他のと違って抜け道があったのだ。
 でも、麻薬のように止めることができなかった。
 出どころが黒い金だから、家など価格のでかいものは買えない。車もそうだ。女にもファッションにも興味が無かった。
 でも、辞められなかったのは毛嫌いしていた仲間意識というものに知らず知らずのうちに毒されていたのかもしれない。
 仕事を、つまり世間で言う犯罪を一度犯しただけで親友だと言い始めるのに辟易としていたのは事実だ。それは、連帯感が作ったまやかしだと分かっていたからだ。だから、簡単に親友の物を奪って売り飛ばしたり、捕まって謳ったり、相手の女を寝取ったりする。
 実際、最高の精鋭チームが出来たなと思っていた矢先、一人がヘマをし、警察に大規模な追い込みをかけられた。カンパニーは壊滅寸前になり、ヘマをしたのは当然エイトの名前も謳った。 
 逮捕されてようやくここが世界の底なんだと思ったが、まだまだだった。
 刑務所の同部屋はエイトを含めて六人。シャブ中やらヤクザやら、殺人を犯したのやらが一緒くたにされていて、初犯はエイトだけだった。 
 少年院時代まで足したら人生の三分の一、悪くしたら半分を刑務所で過ごしているような奴もいた。
 エイトが最も惨めだと感じたのは、老人の受刑者だ。シャバに出たって受け入れ先がなく、みみっちい罪を犯して舞い戻ってくる。自分の家みたいなものだと他の受刑者に言っているのを聞いて、ゾッとした。
 こうはなりたくないと強く思った。
 でも、満期で出所しても行き先は昔の女しか選択肢が無かった。更生施設に行くという手もあったのだが、あそこは更生する施設ではなく犯罪を再び犯すための予備校のようなものだと他の受刑者に聞かされていたので最初から除外。
 真夏に捕まったので服は半袖とジーンズ。
 持ち物は財布、携帯。それに指輪。
 犯罪者支援組織から貰った臭いネルシャツと三年間の作業費である報奨金二万五千円。
 たったこれだけで外に放り出され、運の悪いことにその日は史上最大の大寒波。
 コートから長財布をはみ出させぼんやりしている零を見て生存本能が働きひったくりのシュミレーションを脳内でしてしまう始末だった。
 エイトは零から預かった鍵をチャラチャラ鳴らしながら、ゴミ捨て場を出た。
 数歩下がってマンションを見渡す。
「築年は古そう。でも、昔の方がしっかりした建材を使って建てられたりしてるんだよな」
 駅のすぐ側に鉛筆みたいな細さで乱立する小綺麗だけれど中身がスカスカなコンパクトマンションよりよっぽど資産価値がありそうだった。
 一棟乗っ取ったら数十億。
 電卓を叩きかけてやめた。
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