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第一章

19:十四歳からヒモしてたからな。用済みになれば新しい女へってのを繰り返してた

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「うん」
 別れはあっさりしたものだった。
 雑誌が並ぶコンビニの窓からエイトが駅に向かう様を眺めているとすぐに見えなくなってしまった。
 虚しさに襲われて、店内をぶらぶら一周し何も買うこと無く外に出た。
 彼はもう電車の中だろうか。行き先は昨晩話題に出た池袋、もしくは新宿?
「困ったことがあったらまた来なよ」
 言いたかったが言わなかった。
 ふらっとエイトがやってくることを期待してしまうだろうし、本当に来られたとしてももうあの部屋にはいない可能性がある。
 未練がましく彼が去っていった方向を見ると、街路樹のベンチを背にして座っている男の姿があった。見慣れた茶色のコートの裾が見えた。
 隠れているようで丸見え。
 それは何だか零に見つけて欲しいというように思えた。
 側に寄っていくと、難しい顔をして中指の指輪をくるくる回している。
 零が近づいて来たのは分かっていたのか、顔を上げずに言った。
「ここら辺にさ、電話ボックスってあったっけ?」
「緑色のやつ?最近見ないな。撤去されたかも」
「マジかよ。まあ、そうか。携帯がありゃあ、公衆電話なんていらないもんな。前はコンビニの前にもあったりしたけど」
「電話したいの?貸そうか」
「あんまいい相手じゃないから、あんたの携帯番号が知られるのはよくない」
「特殊詐欺仲間とか?」
 すると、エイトが失笑した。
「あいつらとは手を切った。俺は慎重すぎるほど慎重にやったのに、ヘマしやがって。挙句の果てに捕まって、俺の名前をポリにウタった。普通のリーマンなら仕事で失敗したって怒られるだけですむのに、俺は他人の失敗でムショ行き。犯罪ってのは全然割に合わないって身に染みた」
「歌う?」
「バラすってこと。あと、電話したいのは、昔世話になった別の女」
「転がり込める相手、まだいたの?」
「十四歳からヒモしてたからな。用済みになれば新しい女へってのを繰り返してた」
 中学二年生でヒモ?!
 その頃、自分は病気で苦しんで入院していた頃だ。
 世界がまるで違う。
「用済みって表現が……なんか、ひどいな」
「俺が女のことを用済みにしたんじゃねえぞ。その逆」
「あ、そうなんだ」
 贅沢だなあその女、と零は思った。
 自分だったら一緒にいてくれる相手は絶対に離さない。
「僕の勝手な想像だけど、相手の都合で求められるんだろ?だから、枯れた?」
「枯れたのはヒモ以前の生活のせい」
 この男、まだ底がある?
 零はエイトに闇みたいなのを感じ始めた。
「ぎゃ、虐待とか?」
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