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第一章

18:なんか、ダルそうな顔してんな

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 普段より微熱感が強かった。
「おはよ」
 エイトは零の定位置、ベットとこたつの狭い隙間に入りこんで真正面のローボードの設置されたテレビを片肘をついて見ている。映像は、最近、大きなニュースとなっている広域強盗犯のものだった。
 現金や高級時計、宝石などを自宅に持っている資産家の家にわざと住人がいるときに押し入って金品の保管場所を吐かせ強奪し、口封じのために殺してしまうのだ。どうやら犯人は複数いるようで、いずれも捕まっていない。
 零が声をかけてもエイトは反応を見せない。
 眠っているわけではなさそうだ。
「ねえ、エイト」
 少し大き目の声量で声をかけると、エイトがのけぞってこっちを見た。
「起きたか?」
「うん」
「なんか、ダルそうな顔してんな」
「体調不良はいつも。慣れている」
「だったらいいんだけれど」
と言いながらエイトが立ち上がる。そして、充電が完了した携帯を引き抜いた。
「あんたが起きたことだし、俺、行くわ」
「え?うん。分かった」
 部屋に身内以外の誰かがいるという生活は慣れなくて正直疲れを覚えたが、嫌な疲れではなかった。
 昨晩は、吹雪の中で指輪を見つけたことで互いにテンションがおかしくなり、風呂まで一緒に入ってしまった。あと、過剰なスキンシップも。
 彼はさっさと帰り支度を始める。
「あ、待って。ヒートテックもあったはず。マフラーも。リュックもいる?取っ手の部分が外れかけているけれど」
 自分の物を分け与えるのは形を変えた執着に思えた。全然、好みに合わないだろうから生活に余裕ができればさっさと捨てられる。その時、彼はこれは誰から貰ったんだっけと思うかもしれない。
 でも、零にとっては昨晩のことはいつまでも反芻できる貴重な思い出だ。
「助かる」
 服を着込んでコートを着終わったエイトがリュックを背負う。
 自分が着れば低価格のカジュアル服で体型と背丈のせいで貧相丸出しなのに、ガタイのいいエイトだと違うブランドの服みたいだ。
「じゃあ」と言いかけるエイトに、
「待って。僕もコンビニまで」
 零も素早く服を着込んでコートを羽織った。
 玄関を開けると、
「凄えな」
「別世界だね」
 外廊下は真っ白だった。見たこともないほど雪が積もっている。
 エレベーターを降りても、エントランスを出ても全然話が弾まなくて、黙ったままコンビニまで歩く。
「どうもな」
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