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第一章
16:僕、女じゃないよ
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「出ちゃうよなあ、そういう声。よし、いいぞ」
湯船を勧められ、まだ完全に湧いていないそこに浸かると、肌の内部が急激な温度差を感じて痛かった。
エイトはシャワーを浴び続けている。
「シャワーだけじゃ寒くない?変わろうか?」
エイトが湯船の中の零をじっと眺めるので、零は膝を抱えた。
「な、何?」
「あんた、服を脱ぐとさらに さらに小っちぇえなあって」
「エイトみたいな身体に生まれたかったよ」
「これは暇に任せてこうなっただけ」
そう言ったエイトが、いきなりシャワーヘッドを湯船に突っ込んできた。
「ちょっと寄って」
戸惑っているうちにエイトが中に入ってきて、バックハグでもするみたいに零を後ろから抱きかかえてきた。
「温まるまで我慢な」
湯船に突っ込んだシャワーヘッドを掴むと、零の鎖骨の辺りにあててくる。
「ああ、最高」
エイトが安堵の息を付く一方で、零の心拍数は上がった。
恋愛経験がないのだ。すなわち、誰とも肌を合わせたことがない。
キスどころか手だって繋いだことがない。
「冬場に一日二回も風呂に入れるなんて天国だ」
一方、エイトはそう漏らしながら、零の首筋などを徐々に熱くなる湯船の湯で拭ってくる。まるで犬猫でも可愛がるようなやり方だ。手慣れている。全然知らないエイトに出くわした気分になりさり気なくその手から逃れようとすると、
「悪い。つい、癖で」
癖ってなんだろう?年の離れた妹でも面倒みてきたのだろうか。
「ゆっくり入っててよ。僕はもう温まったからさ」
零は湯船の底に手を付いて、立ち上がろうとした。
シャワーヘッドを持ったままエイトが零のウエストに手を回してくる。最大の水圧にしたそれが下腹部にあたって妙な刺激を感じる。
「まだ身体、冷えっ冷えっのくせに」
そして、ダイレクトにシャワーヘッドを股間に押し付けてきた。
「う、あっ。やめろ、やめろって」
空いている手で腰にしっかり手を回され、背中から抱かれ逃げようがない。
その部分が形を変えそうになり、
「やめろってっ!!」
と零が叫んだ。
ぱっと何もかもが離れる。ふっと身体が軽くなったのが悲しかった。
でも仕方がない。エイトにとっては度の過ぎた戯れなのだから。
「悪ぃ。俺、テンション変だわ。あんた、細いし白いから」
「僕、女じゃないよ」
同性が好きなゲイだよ。
そう言ったら、指輪を無くしたときみたいにこの男は焦るのだろうか。
なんとなく真実を告げたい意地悪な気分になった。でも、ぐっと我慢した。
エイトが言い訳を始たからだ。
湯船を勧められ、まだ完全に湧いていないそこに浸かると、肌の内部が急激な温度差を感じて痛かった。
エイトはシャワーを浴び続けている。
「シャワーだけじゃ寒くない?変わろうか?」
エイトが湯船の中の零をじっと眺めるので、零は膝を抱えた。
「な、何?」
「あんた、服を脱ぐとさらに さらに小っちぇえなあって」
「エイトみたいな身体に生まれたかったよ」
「これは暇に任せてこうなっただけ」
そう言ったエイトが、いきなりシャワーヘッドを湯船に突っ込んできた。
「ちょっと寄って」
戸惑っているうちにエイトが中に入ってきて、バックハグでもするみたいに零を後ろから抱きかかえてきた。
「温まるまで我慢な」
湯船に突っ込んだシャワーヘッドを掴むと、零の鎖骨の辺りにあててくる。
「ああ、最高」
エイトが安堵の息を付く一方で、零の心拍数は上がった。
恋愛経験がないのだ。すなわち、誰とも肌を合わせたことがない。
キスどころか手だって繋いだことがない。
「冬場に一日二回も風呂に入れるなんて天国だ」
一方、エイトはそう漏らしながら、零の首筋などを徐々に熱くなる湯船の湯で拭ってくる。まるで犬猫でも可愛がるようなやり方だ。手慣れている。全然知らないエイトに出くわした気分になりさり気なくその手から逃れようとすると、
「悪い。つい、癖で」
癖ってなんだろう?年の離れた妹でも面倒みてきたのだろうか。
「ゆっくり入っててよ。僕はもう温まったからさ」
零は湯船の底に手を付いて、立ち上がろうとした。
シャワーヘッドを持ったままエイトが零のウエストに手を回してくる。最大の水圧にしたそれが下腹部にあたって妙な刺激を感じる。
「まだ身体、冷えっ冷えっのくせに」
そして、ダイレクトにシャワーヘッドを股間に押し付けてきた。
「う、あっ。やめろ、やめろって」
空いている手で腰にしっかり手を回され、背中から抱かれ逃げようがない。
その部分が形を変えそうになり、
「やめろってっ!!」
と零が叫んだ。
ぱっと何もかもが離れる。ふっと身体が軽くなったのが悲しかった。
でも仕方がない。エイトにとっては度の過ぎた戯れなのだから。
「悪ぃ。俺、テンション変だわ。あんた、細いし白いから」
「僕、女じゃないよ」
同性が好きなゲイだよ。
そう言ったら、指輪を無くしたときみたいにこの男は焦るのだろうか。
なんとなく真実を告げたい意地悪な気分になった。でも、ぐっと我慢した。
エイトが言い訳を始たからだ。
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