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第一章

11:いや。あんたは責任感じなくていい

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 綺麗に畳んで部屋の隅に置かれていたズボンから携帯を取り出し、零が貸した充電器をコンセントに繋いだエイトが、
「昔、世話になった女がまだ住んでるかなあと思って」
「どうだった?」
「引っ越してたわ」
「連絡してから行けばよかったのに」
「捕まってから携帯料金を払えてなかったから。データは残ってても、電話もメールも出来ない」
「そっか」
「支援団体から寄付された服は臭せえし、ダイカンパでありえねえほど寒ぃし積んだなって思ってた最中だったんだ。あんたを見かけたの」
 そう言いながらエイトがズボンのポケットを探した。
「あれ?」
と首を傾げ、さらに、別のポケットを探ってさらに首を傾げた。
「指輪がねえ。どこいった?」
「指輪?どういう色?」
「シルバー。チャック付きのビニール袋に入っていた。釈放される日に、捕まったときの荷物は全部返されるんだよ。……えっと、この駅に降りたときは持っていた。女のマンションを訪ねたときもあった。たぶん、無くしたのは古着屋の辺りだ」
「ひったくりを追いかけてくれたとき?」
 零が聞き返すと、
「ちょっと探してくる」
 エイトは零が血の汚れを落としたコートを薄いパジャマの上に羽織って外に出ていこうとする。
 零は、
「無理だよっ」
と思いの外、大きな声で叫んでいた。
 びっくりしたようにエイトが振り返った。
 引き止めるのに必死な自分に、少し恥ずかしくなる。
「だ、だってさ。外、雪」
 東京は思えないほど吹雪いている外を指差す。
「暗くて何も見えないよ。それに積もるかもしれない。明日、昼ぐらいに探しに行くのはどう?僕も手伝う。無くしたの、僕のせいだし」
「いや。あんたは責任感じなくていい」
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