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おまけのバットゥータ

167:なら、今後、手すら繋ぎませんからね

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と叫ぶスレイヤーを抑え込んで止血剤を切れた部分にぐりぐり塗り込みつつ、小さな尻を一発、きつく叩いた。
「痛っ」
「育ての親にこんなことさせないでください。どうしようもない気分になる。はい、終わり」
 ずらした下着を戻し、めくりあげていた長衣も直す。
 膝の上の身体を起こしてやると、スレイヤーが抱きついてきた。
「バットゥータ。昨日の夜みたいに、口付けて」
 若いハリのある肌は、抱いて育てた赤ん坊の頃とは違うが、やはりスレイヤーはスレイヤーだ。
 だから、バットゥータはスレイヤーの顔面をわざと掴んで押し戻す。
「卑怯な誰かさんに薬を盛られたので、覚えてません」
「お願い!一回だけ。そうしたら、今夜は帰るから」
「あなた、大分、頭の中がお花畑ですね?オシメを変え続けてきた相手に、本気の口付けなんてできるわけないでしょうが」
「今、ボク、オシメなんてしてないもん。もう、十四才だもん。今のボクを見てよ」
 バットゥータは思いっきりスレイヤーを突き飛ばした。
 倒れる場所は絨毯の上。
 身体や頭を怪我させる物は転がっていないと充分確認した上で。
「いつまでたっても帳簿は読めない。商談は言いくるめられる。朝は起きられない。食べ物は粗末にする。おまけに船酔いのゲロの始末まで俺にさせておいて、何が今のボクを見てよ、ですか?え、どこを?魅力皆無ですが?」
「……若いもん」
「ガキは嫌いです。あと、馬鹿も」
「ボクはバットゥータにどんなことを言われても好きだもん」
「ええ。薬を盛って抱かせるほどにね」
「何言われても、いいよ」
「次はどんな手で来るんですか?刃物で脅す?それだと勃たないですよ」
 すると、倒れていたスレイヤーが突っかかってる。
「ボクは、したいだけじゃなくてっ!バットゥータにボクのことを好きなってもらいたいのっ!」
 またスレイヤーの目に涙が溜まってきた。
 本気で泣かれると面倒くさい。
 バットゥータはため息を付きつつ、仕方なくスレイヤーを軽く抱きしめる。
「だから、あなたのどこに俺が好きになる要素があるっていうんです?」
 すると、スレイヤーはすぐに調子に乗って、バットゥータの唇を求めてくる。
 だから、手でそこを塞いでやった。
 苦しがってスレイヤーが暴れると、血流が良くなったのか、小鳥に締められた指の後が白い喉にくっきり赤く浮き出てくる。
 恋の前には誰しもが愚かになってしまうということは、経験済みだから、スレイヤーの行動も分からなくはない。
 だが、彼はアドリーと小鳥の大切な息子だ。
 自分が育ての親でもあるという自負もある。
 諦めるまで遊んでやるかという気持ちには絶対になれない。
 かといって、冷たくもできない。
 自暴自棄になられて、おかしな奴らとつるまれても困る。
「館に帰りましょう。送っていきます」
 スレイヤーの口から手を離し、有無も言わさず腕を取って立ち上がらせる。
「嫌だって!泊めてって!」
と喚くスレイヤーを、
「いいから、いいから」
と適当になだめ、家から押し出す。
 バットゥータが歩きだすと、スレイヤーがふてくされて道端にしゃがみ込む。
「帰りましょうって。ほら」
 手を差し出し、ひらひらさせる。
 すると、スレイヤーが顔をそらした。
「なら、今後、手すら繋ぎませんからね」
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