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第七章
126:下着を脱いじゃったから、く、臭いと思うし。その、興奮したら尿だって漏れちゃうから。だから、来ないで
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『二回、去勢手術を受けさせられたんだ。一回目は、七歳のとき。二回目は十五歳のとき。二回目はどう考えも必要のない手術だった。だって、その時、もう声変わりが始まっていたんだもの』
鼻が垂れてきて、拭う。
『アフメト一世が言っていた。マッティオは、闇医者を使っているって。僕もそいつにやられたんだと思う。ただでさえ短かった性器をほとんど切り取られちゃった。でも、女を孕ますことはできるんだよ。尿は出きらなくて漏れてくるし、自慰だってまともに出来ないくせに』
僕は立っていられなくて、その場に膝を付いた。
そして、うずくまる。
息が上手く吸えない。
「小鳥。もう、いいから」
『よくないよ!』
僕は、涙と鼻水だらけの顔で言った。
『アドリー様はずっと、赤ん坊をこさえた僕を軽蔑していた。でも、僕は、ムルサダの娘に誘われてすらいない。男奴隷らを三人引き連れて僕の房にやってきて、仰向けにした僕を一人が足を押さえ、もう二人が手を抑えるんだ。嘘じゃない。彼らの名前だって言える。そして、ムルサダの娘は僕の不出来で不細工なここに無理やり乗るんだ。おかしなことに、僕のここ、あふれるほど精液が出るんだ。二回も去勢手術を受けているから孕ませることなんてないと思ってたのに、あいつがっ、勝手にっ、生まれていたっ!!』
アドリーにだけは、絶対に告げたくない真実だった。
でも、言った瞬間、僕は体重が一気に十キロは軽くなった気持ちになった。
それだけ、僕が抱えていたものは重かったらしい。
走ったわけでもないのに、はあ、はあと息が弾む。
アドリーの表情を伺うと、彼は呆然としていた。
そして、頭を抱え天井を見上げながら、
「……ごめん……な」
とかすれ声で言った。
「オレは、勝手な妄想でお前が……」
僕はアドリーがこっちを見てくれるのを待って口を開いた。
『アドリー様は、一度でも奴隷になったことがないから、知らなくて当然』
すると、アドリーが思うことがあるというような気まずそうな顔をした。
やがて、僕に向かって両手を広げる。
僕らの距離は大人の背丈一人分は離れているので、届きはしない。
「小鳥、ちょっとこっち来て。オレがそっちに行くのが道理だろうが、杖がな」
アドリーが寝台の方を見る。
座っている位置から少し遠い場所に、杖が転がっていた。
「来てくんねえかのか。じゃあ、オレが這って行くか」
本当にアドリーが動き始めたので、僕は座ったまま後退した。
『よくない。下着を脱いじゃったから、く、臭いと思うし。その、興奮したら尿だって漏れちゃうから。だから、来ないで』
「別に、オレ、気にしないし」
『僕が気にすっ、あっ』
長衣の裾を捕まれ、僕は逃げられなくなった。
アドリーの腕の力はかなり強く、身長差があるのに、僕は彼に引き寄せられてしまう。
そして、抱き寄せられた。
『だから、匂いがっ』
「黙れって」
どうやっても逃げ切れないことが分かって、僕はアドリーの肩に額をくっつけた。
まるで、十一歳のラシードに出会ったような懐かしい気分だった。
「考えたくないだろうが」
とアドリーが前置きした。
「現実問題、赤ん坊はこに世にいる。どうする?あいつだけでもローマへ届けるか?」
僕は顔を上げ、言った。
『どうしていいのか分からない』
「この国で養子に出すって手もあるけれど。後は……。ま、今日、明日、急いで出す結論じゃねえな」
『僕は、この館にいていい?』
鼻が垂れてきて、拭う。
『アフメト一世が言っていた。マッティオは、闇医者を使っているって。僕もそいつにやられたんだと思う。ただでさえ短かった性器をほとんど切り取られちゃった。でも、女を孕ますことはできるんだよ。尿は出きらなくて漏れてくるし、自慰だってまともに出来ないくせに』
僕は立っていられなくて、その場に膝を付いた。
そして、うずくまる。
息が上手く吸えない。
「小鳥。もう、いいから」
『よくないよ!』
僕は、涙と鼻水だらけの顔で言った。
『アドリー様はずっと、赤ん坊をこさえた僕を軽蔑していた。でも、僕は、ムルサダの娘に誘われてすらいない。男奴隷らを三人引き連れて僕の房にやってきて、仰向けにした僕を一人が足を押さえ、もう二人が手を抑えるんだ。嘘じゃない。彼らの名前だって言える。そして、ムルサダの娘は僕の不出来で不細工なここに無理やり乗るんだ。おかしなことに、僕のここ、あふれるほど精液が出るんだ。二回も去勢手術を受けているから孕ませることなんてないと思ってたのに、あいつがっ、勝手にっ、生まれていたっ!!』
アドリーにだけは、絶対に告げたくない真実だった。
でも、言った瞬間、僕は体重が一気に十キロは軽くなった気持ちになった。
それだけ、僕が抱えていたものは重かったらしい。
走ったわけでもないのに、はあ、はあと息が弾む。
アドリーの表情を伺うと、彼は呆然としていた。
そして、頭を抱え天井を見上げながら、
「……ごめん……な」
とかすれ声で言った。
「オレは、勝手な妄想でお前が……」
僕はアドリーがこっちを見てくれるのを待って口を開いた。
『アドリー様は、一度でも奴隷になったことがないから、知らなくて当然』
すると、アドリーが思うことがあるというような気まずそうな顔をした。
やがて、僕に向かって両手を広げる。
僕らの距離は大人の背丈一人分は離れているので、届きはしない。
「小鳥、ちょっとこっち来て。オレがそっちに行くのが道理だろうが、杖がな」
アドリーが寝台の方を見る。
座っている位置から少し遠い場所に、杖が転がっていた。
「来てくんねえかのか。じゃあ、オレが這って行くか」
本当にアドリーが動き始めたので、僕は座ったまま後退した。
『よくない。下着を脱いじゃったから、く、臭いと思うし。その、興奮したら尿だって漏れちゃうから。だから、来ないで』
「別に、オレ、気にしないし」
『僕が気にすっ、あっ』
長衣の裾を捕まれ、僕は逃げられなくなった。
アドリーの腕の力はかなり強く、身長差があるのに、僕は彼に引き寄せられてしまう。
そして、抱き寄せられた。
『だから、匂いがっ』
「黙れって」
どうやっても逃げ切れないことが分かって、僕はアドリーの肩に額をくっつけた。
まるで、十一歳のラシードに出会ったような懐かしい気分だった。
「考えたくないだろうが」
とアドリーが前置きした。
「現実問題、赤ん坊はこに世にいる。どうする?あいつだけでもローマへ届けるか?」
僕は顔を上げ、言った。
『どうしていいのか分からない』
「この国で養子に出すって手もあるけれど。後は……。ま、今日、明日、急いで出す結論じゃねえな」
『僕は、この館にいていい?』
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