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第五章
100:緩まねえなあ。痛む回数は減ってきたっていうのに
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家業のためとはいえ女性と常にイチャイチャし、僕に厳しいアドリーという男には心が砕けない。
この部屋にやってきたのは、少しでも自分の心象をよくするため。
それ以外の意図はない。
「あんたが積極的なとこ、始めてみた」
バットゥータは腕組みして僕を見つめてくる。
「ついでだ。明日顔を合わせたら言おうと思ってたんだが、今、伝えとく。自由民になる手続きの件、まだ時間がかかるそうだ。納めるもんは納めたし、必要書類も揃えた。けど、審査が止まっている」
『気にしてない』
「ムルサダの娘の事件の方は、犯人不明でお蔵入りかもしれない。まだ、油断できないけれどな。もう寝ろよ。アドリー様のことはいいから」
バットゥータが、僕を残してアドリーの寝室に入っていきかけた。
呼び止め、素早く紙に書く。
部屋からはアドリーが低く唸る声が聞こえてきていた。
『香。バットゥータが?』
「あんたのレシピ通りだ」
『まだ余っているなら、僕、焚き直していい?』
「あれじゃあ、駄目なのか?」
『うん』と頷き、強引にアドリーの部屋に入ってく。
僕にしてはかなりの行動力だ。
アドリーは唇を噛み締めうんうん唸っていて、
「他の部屋に声が聞こえないよう、我慢しているんだ」
とバットゥータが力足らずな自分に怒ったように僕に言った。
「普段は、宿に行くけどさ。今は、あんたや赤ん坊がいるから」
窮屈な思いをさせているのは、僕と僕の付属物のせいか。
僕が急いで香炉の中身を変え始めると、バットゥータが寝台へ上がりアドリーに馬乗りになる。
その姿にドキッとする。
普段はきついバットゥータの目元が、今はとても優しいのだ。
「アドリー様。小鳥が来ました。今、香を作り直して貰っているところです」
口付けしながらバットゥータが言う。
いろんな主の館を点々として、それなりにいろんなことがあって、だから、他人がする行為を見たことがないわけじゃないけれど、今、僕の目に移るのは動物的な快楽を求めるだけの行為とは全然違う。
アドリーの唇の隙間からうめき声で返事が返ってきた。
こんなに頻繁に痛むとは知らなかった。
僕の作った香が聞き始め、彼の身体から力が抜けていくのが分かった。
でも、身体の芯は緩んでない気がする。
それが分かっているのか、バットゥータの口付けは執拗なものになる。
枕元の小瓶の蓋を開けて、自分の手になじませたバットゥータはアドリーの性器をあやすように触り始める。
僕は左足の付け根に触れた。
さすり始めると、「何勝手なことやってんだよ」という視線をバットゥータに投げかけられたが、僕は引かなかった。
彼のやり方は、快楽を与えようとするタイプのもので、多分、アドリーは与えられるだけの一方通行なそれを求めていない。
最初のうちは全身をさするようにして触れて、そして、触れ返して、力強さじゃなく、柔らかな快楽を求めている気がする。
でも、これは僕の長年の勘のようなもので、合っているか分からないし、一生懸命やっているバットゥータに違うかもよ、とは言えない。
アドリーが窒息するかのような口付けをしていたバットゥータが口の中から舌を抜き取った。
「緩まねえなあ。痛む回数は減ってきたっていうのに」
え?どう見たって頻繁じゃないか。
僕が思う以上に、アドリーは苦しい夜を超えているようだ。
「ん……。バットゥータ」
ちょっと、甘い声がした。
この部屋にやってきたのは、少しでも自分の心象をよくするため。
それ以外の意図はない。
「あんたが積極的なとこ、始めてみた」
バットゥータは腕組みして僕を見つめてくる。
「ついでだ。明日顔を合わせたら言おうと思ってたんだが、今、伝えとく。自由民になる手続きの件、まだ時間がかかるそうだ。納めるもんは納めたし、必要書類も揃えた。けど、審査が止まっている」
『気にしてない』
「ムルサダの娘の事件の方は、犯人不明でお蔵入りかもしれない。まだ、油断できないけれどな。もう寝ろよ。アドリー様のことはいいから」
バットゥータが、僕を残してアドリーの寝室に入っていきかけた。
呼び止め、素早く紙に書く。
部屋からはアドリーが低く唸る声が聞こえてきていた。
『香。バットゥータが?』
「あんたのレシピ通りだ」
『まだ余っているなら、僕、焚き直していい?』
「あれじゃあ、駄目なのか?」
『うん』と頷き、強引にアドリーの部屋に入ってく。
僕にしてはかなりの行動力だ。
アドリーは唇を噛み締めうんうん唸っていて、
「他の部屋に声が聞こえないよう、我慢しているんだ」
とバットゥータが力足らずな自分に怒ったように僕に言った。
「普段は、宿に行くけどさ。今は、あんたや赤ん坊がいるから」
窮屈な思いをさせているのは、僕と僕の付属物のせいか。
僕が急いで香炉の中身を変え始めると、バットゥータが寝台へ上がりアドリーに馬乗りになる。
その姿にドキッとする。
普段はきついバットゥータの目元が、今はとても優しいのだ。
「アドリー様。小鳥が来ました。今、香を作り直して貰っているところです」
口付けしながらバットゥータが言う。
いろんな主の館を点々として、それなりにいろんなことがあって、だから、他人がする行為を見たことがないわけじゃないけれど、今、僕の目に移るのは動物的な快楽を求めるだけの行為とは全然違う。
アドリーの唇の隙間からうめき声で返事が返ってきた。
こんなに頻繁に痛むとは知らなかった。
僕の作った香が聞き始め、彼の身体から力が抜けていくのが分かった。
でも、身体の芯は緩んでない気がする。
それが分かっているのか、バットゥータの口付けは執拗なものになる。
枕元の小瓶の蓋を開けて、自分の手になじませたバットゥータはアドリーの性器をあやすように触り始める。
僕は左足の付け根に触れた。
さすり始めると、「何勝手なことやってんだよ」という視線をバットゥータに投げかけられたが、僕は引かなかった。
彼のやり方は、快楽を与えようとするタイプのもので、多分、アドリーは与えられるだけの一方通行なそれを求めていない。
最初のうちは全身をさするようにして触れて、そして、触れ返して、力強さじゃなく、柔らかな快楽を求めている気がする。
でも、これは僕の長年の勘のようなもので、合っているか分からないし、一生懸命やっているバットゥータに違うかもよ、とは言えない。
アドリーが窒息するかのような口付けをしていたバットゥータが口の中から舌を抜き取った。
「緩まねえなあ。痛む回数は減ってきたっていうのに」
え?どう見たって頻繁じゃないか。
僕が思う以上に、アドリーは苦しい夜を超えているようだ。
「ん……。バットゥータ」
ちょっと、甘い声がした。
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