72 / 183
第四章
71:そこ、あんまり良い噂をきかねえな。使用人らがよく死ぬって
しおりを挟む
しかし、売られる方は、皆、冷めたものだ。この競りにかけられる前に、何度も奴隷商に転売され、高く売れるために各主の元で磨き上げられてきたので、肌を晒すことに慣れきっている。
貧困の地出身の者も多く、飢えて死ぬよりハレムで名をあげようとする逞しいのもいる。
女の裸と聞いて、アドリーは首を振る。
女は嫌いじゃない。
館にいる女奴隷たちは皆、可愛いし、子猫みたいに撫で回したくなる。
だが、夜を共にできるかと聞かれれば、それは別の話と答える。
バットゥータにさえ言ったことはないが、女の腹に自分の子種を注ぐ行為は考えただけでも鳥肌が立つ。
伴侶候補をバットゥータは次々と見つけてくるが、実はそれはかなりのありがた迷惑。だから、生返事しかできない。
「ヴァヤジット。あんたの元に、白人宦官崩れの返品があったろ。その話で」
とアドリーはすぐに本題に入った。
「そんな者はいない」
「あーれえええ?グランドバザールの薬商っ、おっと」
バットゥータが巨大な奴隷商家の主を煽るように声を大きくする。
すると、彼は目つきを鋭くさせ大広間を抜けた先にある廊下を顎で示したからだ。
「こっちへ来い、アドリー。それと、バットゥータ。お前もだ」
そして、廊下に出ると、周りを警戒するように声を潜めた。
「なぜ、その件を知っている?」
「そいつとは少し前から顔見知りだ。薬商のじいさんよりいい香を作るから」
とバットゥータが答える。
すると、ヴァヤジットが詰め寄ってきた。
「こっちは、詐欺にあったようなもんで、大損だ。あの白人宦官崩れ、きっと自己流で性器を切り取ったんだ。だが、孕ませる力が残っている。元は、ムルタザの奴隷商館にいた」
アドリーは、ムルタザと聞いて眉を寄せた。
「そこ、あんまり良い噂をきかねえな。使用人らがよく死ぬって」
「あちらとは扱う商品がかぶる。だから、長く仲違いをしていてな。でも、白人宦官を破格の値段で渡すからこれまでのことを水に流してくれと言ってきたもんで。こっちだって商人だ。そんな話は真に受けない。実際のところ家業が傾いているんだろうと温情で買ってやればこれだ」
「孕ませる力は残っているのは、どうやって証明したんだ?」
「ムルタザの娘だよ。好色で男奴隷とみれば即、手を出すと評判だ。ムルタザは娘可愛さに野放しにしていて、娘の方は何度子供を宿しても懲りねえ。頭がちょっとおかしいんだ。その娘が生んだのが肌が白っぽい赤ん坊で、どう見ても生粋のオスマン帝国の子ではない。で、孕んだ時期にムルタザの館にいたのが、白人宦官崩れがいた時期とばっちり重なるってわけだ。あそこは基本、白人男は扱わないからな」
「宦官のくせに孕ませやがったか」
アドリーが笑いだすと、 バットゥータが「呑気に笑ってる場合ですか!早く名無しの罪を晴らす方向に話を持っていかないと」と耳元で言ってくる。
だが、アドリーはこの人助けにどうしても熱くなれないのだ。
女に誘われたとはいえ、いい思いをした。
生まれた赤ん坊は、見せしめとして縊り殺されるのが慣例だ。
そうなることは分かっていたんだから、尻拭いは自分でしろよって話だ。
「そこまで証拠が揃っていたら無理だろ」
とバットゥータに言い返すと、
「いや、そうですけど。奴隷商館の主の娘に迫られたらどうしようもないでしょうが。断ったって、いい結果にならない」
「そういうのを上手く避けるのも世渡りの一つだろ」
「会いましょう」
バットゥータが真顔で訴えかけてくる。
「アドリー様、ちょっと冷たすぎます。二晩も助けて貰ってるんですよ?」
「お前はいいの?館に新しいの連れ帰っても。オレは、いい予感がしないよ」
「俺だってあの名無しが表れてから、胸のあたりが、こうモヤモヤムカムカするんすよ。でも、あなたが良くも悪くも執着しているのなら、顔を見るべきです。話をするべきです」
貧困の地出身の者も多く、飢えて死ぬよりハレムで名をあげようとする逞しいのもいる。
女の裸と聞いて、アドリーは首を振る。
女は嫌いじゃない。
館にいる女奴隷たちは皆、可愛いし、子猫みたいに撫で回したくなる。
だが、夜を共にできるかと聞かれれば、それは別の話と答える。
バットゥータにさえ言ったことはないが、女の腹に自分の子種を注ぐ行為は考えただけでも鳥肌が立つ。
伴侶候補をバットゥータは次々と見つけてくるが、実はそれはかなりのありがた迷惑。だから、生返事しかできない。
「ヴァヤジット。あんたの元に、白人宦官崩れの返品があったろ。その話で」
とアドリーはすぐに本題に入った。
「そんな者はいない」
「あーれえええ?グランドバザールの薬商っ、おっと」
バットゥータが巨大な奴隷商家の主を煽るように声を大きくする。
すると、彼は目つきを鋭くさせ大広間を抜けた先にある廊下を顎で示したからだ。
「こっちへ来い、アドリー。それと、バットゥータ。お前もだ」
そして、廊下に出ると、周りを警戒するように声を潜めた。
「なぜ、その件を知っている?」
「そいつとは少し前から顔見知りだ。薬商のじいさんよりいい香を作るから」
とバットゥータが答える。
すると、ヴァヤジットが詰め寄ってきた。
「こっちは、詐欺にあったようなもんで、大損だ。あの白人宦官崩れ、きっと自己流で性器を切り取ったんだ。だが、孕ませる力が残っている。元は、ムルタザの奴隷商館にいた」
アドリーは、ムルタザと聞いて眉を寄せた。
「そこ、あんまり良い噂をきかねえな。使用人らがよく死ぬって」
「あちらとは扱う商品がかぶる。だから、長く仲違いをしていてな。でも、白人宦官を破格の値段で渡すからこれまでのことを水に流してくれと言ってきたもんで。こっちだって商人だ。そんな話は真に受けない。実際のところ家業が傾いているんだろうと温情で買ってやればこれだ」
「孕ませる力は残っているのは、どうやって証明したんだ?」
「ムルタザの娘だよ。好色で男奴隷とみれば即、手を出すと評判だ。ムルタザは娘可愛さに野放しにしていて、娘の方は何度子供を宿しても懲りねえ。頭がちょっとおかしいんだ。その娘が生んだのが肌が白っぽい赤ん坊で、どう見ても生粋のオスマン帝国の子ではない。で、孕んだ時期にムルタザの館にいたのが、白人宦官崩れがいた時期とばっちり重なるってわけだ。あそこは基本、白人男は扱わないからな」
「宦官のくせに孕ませやがったか」
アドリーが笑いだすと、 バットゥータが「呑気に笑ってる場合ですか!早く名無しの罪を晴らす方向に話を持っていかないと」と耳元で言ってくる。
だが、アドリーはこの人助けにどうしても熱くなれないのだ。
女に誘われたとはいえ、いい思いをした。
生まれた赤ん坊は、見せしめとして縊り殺されるのが慣例だ。
そうなることは分かっていたんだから、尻拭いは自分でしろよって話だ。
「そこまで証拠が揃っていたら無理だろ」
とバットゥータに言い返すと、
「いや、そうですけど。奴隷商館の主の娘に迫られたらどうしようもないでしょうが。断ったって、いい結果にならない」
「そういうのを上手く避けるのも世渡りの一つだろ」
「会いましょう」
バットゥータが真顔で訴えかけてくる。
「アドリー様、ちょっと冷たすぎます。二晩も助けて貰ってるんですよ?」
「お前はいいの?館に新しいの連れ帰っても。オレは、いい予感がしないよ」
「俺だってあの名無しが表れてから、胸のあたりが、こうモヤモヤムカムカするんすよ。でも、あなたが良くも悪くも執着しているのなら、顔を見るべきです。話をするべきです」
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる