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第七章
125:彼方サン。夜、したいです
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だから、子供がお気に入りのぬいぐるみを振り回すような愛の伝え方は止めないと。
これでも、日々反省しているのだ。
あと、抱く側に回った日に盛り上がりすぎて、彼方を抱き潰さないとか。
もう一回言っておくが、これでも反省している。
床には楽譜やら服やらが小山になって置かれていた。
これは、堀之堂が思い出したように嫌がらせで送ってくる、かつて彼方が使っていた品々だ。
「どうだ、中卒猟師にはこんな高級な品を与えてやることはできないだろう」と彼は言いたいみたいなのだが、楽譜は持ってないものと持っているものに分けられ、服は趣味じゃない、着てやってもいいに分けられ、必要じゃないものはさっさとメルルンに出品されているということは、堀之堂は知らない。
当初は心の狭いジンには、ムカムカする配送物だったが、当の彼方が、ジンの機嫌を伺うこと無く仕分けを始めたので、口を出すのを止めた。
堀之堂との関係は完全に過去のものと思っているから、ジンの前でそういうことができるのだ。なら、こちらも、彼方の行動を尊重し、心穏でいるしか無い。
何度、物が送られてきても彼方は淡々と仕分けする。
そして、彼のメルルンの売上が増えていく。
だから、
「おっさん。ご愁傷さま」
とフランス語のタグが付いた高級服をつまみ上げながら、ジンは余裕の笑みを浮かべれるようにすらなった。
サンルームの扉が開く音がして、トコトコという無数の足音が聞こえてきた。
そして、愛おしい人の声も。
「ジン。お帰り。最近、帰り早いね」
まさか、彼方の配信を聞きたくて、猟の終わりの時間を早めているとは恥ずかしくて言えない。
「お風呂入る?まだ、スイッチ入れてないや」
パタパタと彼方が風呂場の方に駆けていき、また戻ってくる。
そして、ジンの側までやってきて、伸び上がってキスをしてきた。
足元をうるさいぐらい猫三匹が鳴きながらくるくると回っている。
最高に幸せだ。
高揚感に、
「彼方サン。夜、したいです」
と申し込む。
大げさでも何でも無く、彼方とする性行為におぼれている。
抱くのも抱かれるのも最高に気持ちがいい。
すると、彼方が困った顔をした。
その困り顔も出会った直後から好きだ。
「遅くなるかもよ。美馬君にやり直し食らったから」
「なら、美馬を今から殺してくるから大丈夫」
と半分本気でジンは答える。
「やり直しってホームページの方か?」
ジンはノートパソコン型パソコンを覗き込む。
少し厚みのある型遅れのそれは、千山からもう使わないからと貰ったものだ。
「そう。メニューの部分」
民泊は再始動とは無かったが、まだきちんとしたホームページも出来上がっていない。
そういうのは美馬が得意なので、習いながらやっているのだ。
今まで全然、パソコンを触ったことが無かったくせに、知識の吸収は抜群でかなりのハイペースで進んでいる。
なんせ、民泊の店主は彼方なのだから。
猟に重きを置くなら、ジンはオーナーで。民泊の方は僕がメインでやるからと彼方がかってでてくれたのだ。
失っていた自信が回復できて、彼方ははっきり物を言うようになったから、それはそれでぶつかることもあるのだけれど、大抵は突っ走りがちなジンを上手に諌めてくれる。民泊が起動に乗れば、どんなトラブルが起こってもどっしり構えたいい店主になってくれるに違いない。だって、名字すら隠されていた状態からここまでこれたんだし、並の二十代じゃない。
週末限定の宿は、コンスタントに営業するまではまだ時間がかかりそうだが、こうやって確実に前進している。
これでも、日々反省しているのだ。
あと、抱く側に回った日に盛り上がりすぎて、彼方を抱き潰さないとか。
もう一回言っておくが、これでも反省している。
床には楽譜やら服やらが小山になって置かれていた。
これは、堀之堂が思い出したように嫌がらせで送ってくる、かつて彼方が使っていた品々だ。
「どうだ、中卒猟師にはこんな高級な品を与えてやることはできないだろう」と彼は言いたいみたいなのだが、楽譜は持ってないものと持っているものに分けられ、服は趣味じゃない、着てやってもいいに分けられ、必要じゃないものはさっさとメルルンに出品されているということは、堀之堂は知らない。
当初は心の狭いジンには、ムカムカする配送物だったが、当の彼方が、ジンの機嫌を伺うこと無く仕分けを始めたので、口を出すのを止めた。
堀之堂との関係は完全に過去のものと思っているから、ジンの前でそういうことができるのだ。なら、こちらも、彼方の行動を尊重し、心穏でいるしか無い。
何度、物が送られてきても彼方は淡々と仕分けする。
そして、彼のメルルンの売上が増えていく。
だから、
「おっさん。ご愁傷さま」
とフランス語のタグが付いた高級服をつまみ上げながら、ジンは余裕の笑みを浮かべれるようにすらなった。
サンルームの扉が開く音がして、トコトコという無数の足音が聞こえてきた。
そして、愛おしい人の声も。
「ジン。お帰り。最近、帰り早いね」
まさか、彼方の配信を聞きたくて、猟の終わりの時間を早めているとは恥ずかしくて言えない。
「お風呂入る?まだ、スイッチ入れてないや」
パタパタと彼方が風呂場の方に駆けていき、また戻ってくる。
そして、ジンの側までやってきて、伸び上がってキスをしてきた。
足元をうるさいぐらい猫三匹が鳴きながらくるくると回っている。
最高に幸せだ。
高揚感に、
「彼方サン。夜、したいです」
と申し込む。
大げさでも何でも無く、彼方とする性行為におぼれている。
抱くのも抱かれるのも最高に気持ちがいい。
すると、彼方が困った顔をした。
その困り顔も出会った直後から好きだ。
「遅くなるかもよ。美馬君にやり直し食らったから」
「なら、美馬を今から殺してくるから大丈夫」
と半分本気でジンは答える。
「やり直しってホームページの方か?」
ジンはノートパソコン型パソコンを覗き込む。
少し厚みのある型遅れのそれは、千山からもう使わないからと貰ったものだ。
「そう。メニューの部分」
民泊は再始動とは無かったが、まだきちんとしたホームページも出来上がっていない。
そういうのは美馬が得意なので、習いながらやっているのだ。
今まで全然、パソコンを触ったことが無かったくせに、知識の吸収は抜群でかなりのハイペースで進んでいる。
なんせ、民泊の店主は彼方なのだから。
猟に重きを置くなら、ジンはオーナーで。民泊の方は僕がメインでやるからと彼方がかってでてくれたのだ。
失っていた自信が回復できて、彼方ははっきり物を言うようになったから、それはそれでぶつかることもあるのだけれど、大抵は突っ走りがちなジンを上手に諌めてくれる。民泊が起動に乗れば、どんなトラブルが起こってもどっしり構えたいい店主になってくれるに違いない。だって、名字すら隠されていた状態からここまでこれたんだし、並の二十代じゃない。
週末限定の宿は、コンスタントに営業するまではまだ時間がかかりそうだが、こうやって確実に前進している。
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