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第六章
96:なぜ、彼方がそこまで俺を責める?
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黄色い耳栓を取りながらジンが、恨めしそうに彼方を見た。
「人に向けちゃ駄目だって先生に言われたんでしょ?ジンッ!あんなこと、駄目だって」
「でも、ああするのが最善だった」
「最善なもんか」
「左耳の横を狙って撃った。本当は、ぶち抜いてやりたかったけど。あいつ、今、全然耳が聞こえてないはずだ。彼方が味わった世界をプレゼントだ」
彼方は雪の地面に膝をついた。
ジンが呟くように言う。
「耳、辛かっただろ?聞こえなくなったのは、堀ノ堂が彼方に強烈なストレスを与えたせい。彼方を一人で生きれないよう仕立て上げておいて、使えなくなったら捨てるぞと脅した。でも、あいつの真の目的は、彼方が泣いてすがってくることだ」
「僕の耳のことなんてどうでもいい。僕の人生すらどうでもいい。ジンが殺人を犯してしまったら、ジンの人生そこで終わりだ」
「んなこと、言うなよ」
ジンが猟銃を手元から遠くに寄せて、彼方の耳に両手を伸ばしてきた。
今回ばかりは、消炎臭い香りがする手だった。
今まで無いほどのビリビリとした攻撃的な雄の緊張感が伝わってくる。
「ジン。駄目だって」
たぶん、同じような状況になれば、彼はまた同じことをする。
いや、次はもっと過激なことを。
彼方がジンの手を振り払って大声を上げると、ジンが少ししょげた。
「ちゃんと分かっている。そんなことしたら、一緒にいられなくなるだろ。俺は冷静だ」
「先生との約束は?」
「なぜ、彼方がそこまで俺を責める?」
「……責める立場にないってことぐらい、分かってるよ。けど」
「発砲したのは」
と、ジンが彼方を遮って不服そうに言った。
「後悔してない。彼方が、先生より上ってことだから」
「そんな比べ方、おかしい」
彼方は頰に垂れる涙を拭った。
東京に連れ帰られなかったから安堵したのか、ジンが怖いのか、それとも両方なのか、今はよく分からない。
その後、引っ立てられるようにして家に帰った。
暗い夜道を大声を上げて泣きながら、ジンに腕を捕まれ連れ戻された。
玄関で靴を脱ぐやいなや風呂にも入らずベットのある部屋に押し込まれ、窒息するような荒々しいキスを最初からされ、履いていたズボンを半下ろし状態で尻に指を入れられ、気持ちのいいポイントを何度も押されて、雄の部分に触ることを許されないまま、立て続けにいかされた。
最後の方など、空になって何も出ていなかったと思う。
そして、朝には何事もなかったかのように二人で朝食を食べた。
平然を装って数日暮らした。
でも、やっぱり変化はあった。
あの夜以来、ジンは猟に出ることをぱったりと止めてしまったのだ。
せっかくの猟師の繋がりも、連絡を断っているようだ。最初は携帯がうるさいぐらい鳴っていたが、出ないとなると、今度は家の電話が鳴り始め、最近では、それも静かになってしまった。
完全に、彼方のせいだ。
だが、それを言うと、ジンは怒るに決まっている。
二人の間に、以前よりも距離ができていた。
なぜか、まるでお互いが別世界に住んでいて、その地点に立ち止まったまま、好きだ好きだ大好きだと大声で言い合っているような。心と心の間にプラスチックを挟まれ阻まれてしまったような。
ソファーで、ベットでいつも隣り合っているのに、なんとなく遠い。
きっとジンだって感じているはずだ。
肌と肌を触れ合わせる行為も目に見えて減っていっていた。
会話もだ。
昨日、一昨日なんて一言も話をしなかった。
「人に向けちゃ駄目だって先生に言われたんでしょ?ジンッ!あんなこと、駄目だって」
「でも、ああするのが最善だった」
「最善なもんか」
「左耳の横を狙って撃った。本当は、ぶち抜いてやりたかったけど。あいつ、今、全然耳が聞こえてないはずだ。彼方が味わった世界をプレゼントだ」
彼方は雪の地面に膝をついた。
ジンが呟くように言う。
「耳、辛かっただろ?聞こえなくなったのは、堀ノ堂が彼方に強烈なストレスを与えたせい。彼方を一人で生きれないよう仕立て上げておいて、使えなくなったら捨てるぞと脅した。でも、あいつの真の目的は、彼方が泣いてすがってくることだ」
「僕の耳のことなんてどうでもいい。僕の人生すらどうでもいい。ジンが殺人を犯してしまったら、ジンの人生そこで終わりだ」
「んなこと、言うなよ」
ジンが猟銃を手元から遠くに寄せて、彼方の耳に両手を伸ばしてきた。
今回ばかりは、消炎臭い香りがする手だった。
今まで無いほどのビリビリとした攻撃的な雄の緊張感が伝わってくる。
「ジン。駄目だって」
たぶん、同じような状況になれば、彼はまた同じことをする。
いや、次はもっと過激なことを。
彼方がジンの手を振り払って大声を上げると、ジンが少ししょげた。
「ちゃんと分かっている。そんなことしたら、一緒にいられなくなるだろ。俺は冷静だ」
「先生との約束は?」
「なぜ、彼方がそこまで俺を責める?」
「……責める立場にないってことぐらい、分かってるよ。けど」
「発砲したのは」
と、ジンが彼方を遮って不服そうに言った。
「後悔してない。彼方が、先生より上ってことだから」
「そんな比べ方、おかしい」
彼方は頰に垂れる涙を拭った。
東京に連れ帰られなかったから安堵したのか、ジンが怖いのか、それとも両方なのか、今はよく分からない。
その後、引っ立てられるようにして家に帰った。
暗い夜道を大声を上げて泣きながら、ジンに腕を捕まれ連れ戻された。
玄関で靴を脱ぐやいなや風呂にも入らずベットのある部屋に押し込まれ、窒息するような荒々しいキスを最初からされ、履いていたズボンを半下ろし状態で尻に指を入れられ、気持ちのいいポイントを何度も押されて、雄の部分に触ることを許されないまま、立て続けにいかされた。
最後の方など、空になって何も出ていなかったと思う。
そして、朝には何事もなかったかのように二人で朝食を食べた。
平然を装って数日暮らした。
でも、やっぱり変化はあった。
あの夜以来、ジンは猟に出ることをぱったりと止めてしまったのだ。
せっかくの猟師の繋がりも、連絡を断っているようだ。最初は携帯がうるさいぐらい鳴っていたが、出ないとなると、今度は家の電話が鳴り始め、最近では、それも静かになってしまった。
完全に、彼方のせいだ。
だが、それを言うと、ジンは怒るに決まっている。
二人の間に、以前よりも距離ができていた。
なぜか、まるでお互いが別世界に住んでいて、その地点に立ち止まったまま、好きだ好きだ大好きだと大声で言い合っているような。心と心の間にプラスチックを挟まれ阻まれてしまったような。
ソファーで、ベットでいつも隣り合っているのに、なんとなく遠い。
きっとジンだって感じているはずだ。
肌と肌を触れ合わせる行為も目に見えて減っていっていた。
会話もだ。
昨日、一昨日なんて一言も話をしなかった。
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