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第四章

48:付き合っているよ

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「美馬さん、美馬さん」
 二人を置いて、彼方は美馬に話しかけた。
 携帯をポケットから出して、メルルンのアプリを立ち上げた。
「さん付けじゃなくてもいいよ」
「じゃあ、美馬君。鹿の角、いいねがニ個ついた。もうすぐ売れてく?」
「おお。感触いいね。あ、そうだ。千山」
 美馬がぐいっと千山のコートを引っ張る。
 もうここら辺にしとけというような雰囲気もそこには含まれていて、きっと三人の中では一番美馬が空気が読める男なんだろうなと彼方は思った。
「急に、引っぱるなよ」
「ごんめんて。さっきさあ、捨てるにはもったいないのがいっぱいで、部屋の片付け面倒くさいって言ってたよな。彼方君に売って貰ったら?」
「はあ?」
「そりゃいいや。こいつ、無駄にいいもの持ってるし。ほら、全部出せ」
とジンが手を差し出してくる。
「ジンがそれやると、見た目がそれだからカツアゲみたいに見えるけど。なんで、オラオラ系の奴ってみんなダボッとしたの着るんだ?そこまでして人間性を大きくみせたいのか?」
「お前なんか、ロングコートなんか着ちゃって頭良さそうに見えるけど、実際は馬鹿だもんな。医大は裏口入学ってやつ」
「また始まった」
と美馬がため息をつく。
「ほんと、お前ら、中学の時から成長しないね」
「美馬は前科が付くほど成長した」
「ついてねえって。ジン、真顔で言うなよ。彼方君、信じちゃうだろ。まあ、こいつらこんなんだから」
「慣れた」
と彼方は答えた。
 ジン自体がクセのある人物なので、性格がきつく見える千山も最初の晩のジンに比べたら可愛いものだ。
「手数料、送料を差し引いた純利益の半分をくれるなら、やる」
 これはジンと決めた取り決めだった。それをそのまま、千山にも伝える。
「じゃあ、オレもやってもらおうかな。部屋にいつかメルルンへボックスっての置いてあってそこに売りたいものを入れてあるんだけど、もうパンパンで」
「やる」
と彼方は間髪入れずに返事をする。
 そして、千山をじいっと見つめた。
 すると、千山が不思議そうな顔をする。
「昨日あれだけのことを言ったのに、怒ってないのか?」
「怒ってる。けど、友達が増えそうなのに、見過ごすのは勿体ない」
「彼方君は、ジンや千山よりはるかに大人だなあ。さすが、ジンと付き合えるだけある」
と美馬が感心し、はっと息を飲んだ。
「あ、付き合ってる訳じゃないんだっけ?」
 彼方がジンを見上げると、「付き合っているよ」と彼はさらっと頷いた。
「……本当に?」
 彼方は問い返す。
 付き合うということは、交際をしているということだ。
 そんなのテレビでしか見たことない。
「イエーイ、ジン君に春が来たあ」
 美馬がジンの背中をバンッと叩いた。
 ジンのことを恐れているくせに、こういう部分は怖いもの知らずだ。
「祝ってくれるとこ悪いけど、美馬。お前、彼方に俺が東京によく行ってたことバラしたろ?だから、死ね」
「な、なんでえ?」
「あと、千山」
 ジンはするりと彼方の手を握った。
「一生、彼女が出来ないであろうお前の目の前で、幸せになっちゃってごめんな?」
と言う。
 千山の顔が少し痙攣した。
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