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第三章
29:そっちじゃねえっ!
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すると、美馬が机の下から、手書きの紙と、券を二枚取り出した。
「読め」
と小声で言う。
「契約店舗様特別ご優待券」
「そっちじゃねえっ!」
「衆議院議員 堀ノ堂一事務所」
すると、美馬が手書きの紙を引き裂いて、さらにまた引き裂く。
これで証拠隠滅だ。
「何やらかす気だ?!俺らでも知ってる大物政治家だぞ?八ヶ岳のリゾート開発にも噛んでる。知らねえはずねえよな。あと、これは俺が個人的に調べたものだから、この店は関係ねーぞ。大手キャリアの携帯ショップだからって、不用意に客の電話番号を検索したら怪しまれる。それにしても、何で、お前がこんな相手を調べようとしてるんだ?今の時点で、冷や冷やすんだけど」
「久しぶりに滾ったろ?お前、東京でハッキングでヘマやらかして、バレる前に学校やめたんだもんな?」
「山奥に籠もってんのに、何なんだよ、その情報網」
「山にもスピーカーがいるんだよ。じゃあ、どうもな」
「礼はいいから契約してけ!」
ジンは「時間ないから、ネットと電話が繋がる一番安いプランを見積もって、俺んちに送って」
と伝える。
「年内契約?そんで、前のは解約?電話番号は引き継げるぜ?」
「違う。俺が今使っているのはそのままで二台目が欲しい。契約者が俺で使用者も俺。でも、別の人間が使うことは可能だよな?」
「ああ」
一旦、腰を浮かせたジンは、また椅子に腰を下ろした。
「あれええ、新規をさらにもう一台契約してくださる?ありがとうございます。お客様あああ」
「違う」
ジンはリュックから彼方の携帯を取り出した。
預かったのは、美容院で以前、盗難騒ぎが頻発したからだ。一人の美容師が止めた途端、それは無くなったのだがなんとなく預かってしまった。
「東京から来た知り合いの奴のなんだけど」
「堀ノ堂一と関係ある?」
「調べて貰った携帯番号、これ」
ジンは彼方の携帯を突く。
「この携帯、東京から山梨に移動した夜に、急に使えなくなったって言ってた。契約を止められたみたいだ。タイミングよすぎで、気持ちが悪い」
「ふうん。見てもいい?」
「ああ」
ジンが見たってわからない。持ち主は、何も語らない。だったら、プロフェッショナルに調べてもらうしか無い。
断っておくが、罪悪感がまるで無いわけではない。
携帯を渡すと、美馬はブラウザボタンを押したり、契約情報を調べたりし始める。
「ここのショッピングモールのWi-Fi繋いだ。確かに契約は止まってるけど、ネットは生きてる。移動して急に使えなくなったってのは気になるな。ああ、やっぱり」
美馬が口ごもる。
「何?」
「位置特定アプリが見えないように入れられている。使用者と契約者、一緒じゃないんだな、この携帯。使用者がこんなの入れるのはおかしいから、契約者が勝手に入れて渡したんだと思う。嫉妬深い恋人が、ストーカー化して相手によく使う手口。このアプリが入っていると、どの位置にいるのか、番地まで分かる」
「ふうん。なるほど」
「でも、そいつは、そんなにダークサイドアプリには詳しくない。ちょっと調べただけの素人だ。オレだったらこんなバレやすいアプリ使わないね」
クリスマスソングが鳴り響いていた館内は、一曲がちょうど終わりCMが入った。
『メルルンで、お家の中を大掃除。売れたら自分へのお年玉!』
美馬が天井を眺めた。
「ジンでもメルルンは知ってるよな?フリマアプリの。そいつは、ダークサイドアプリでもメルルンみたいなめちゃくちゃドメジャーなのを使ってるってこと」
「了解。よくわかった」
ジンは、貰った利用券をひらひら振りながら立ち上がる。
「あとで契約書持ってお前の家に行くからな!絶対に契約しろよな!」
と美馬が怒鳴ってきた。
「読め」
と小声で言う。
「契約店舗様特別ご優待券」
「そっちじゃねえっ!」
「衆議院議員 堀ノ堂一事務所」
すると、美馬が手書きの紙を引き裂いて、さらにまた引き裂く。
これで証拠隠滅だ。
「何やらかす気だ?!俺らでも知ってる大物政治家だぞ?八ヶ岳のリゾート開発にも噛んでる。知らねえはずねえよな。あと、これは俺が個人的に調べたものだから、この店は関係ねーぞ。大手キャリアの携帯ショップだからって、不用意に客の電話番号を検索したら怪しまれる。それにしても、何で、お前がこんな相手を調べようとしてるんだ?今の時点で、冷や冷やすんだけど」
「久しぶりに滾ったろ?お前、東京でハッキングでヘマやらかして、バレる前に学校やめたんだもんな?」
「山奥に籠もってんのに、何なんだよ、その情報網」
「山にもスピーカーがいるんだよ。じゃあ、どうもな」
「礼はいいから契約してけ!」
ジンは「時間ないから、ネットと電話が繋がる一番安いプランを見積もって、俺んちに送って」
と伝える。
「年内契約?そんで、前のは解約?電話番号は引き継げるぜ?」
「違う。俺が今使っているのはそのままで二台目が欲しい。契約者が俺で使用者も俺。でも、別の人間が使うことは可能だよな?」
「ああ」
一旦、腰を浮かせたジンは、また椅子に腰を下ろした。
「あれええ、新規をさらにもう一台契約してくださる?ありがとうございます。お客様あああ」
「違う」
ジンはリュックから彼方の携帯を取り出した。
預かったのは、美容院で以前、盗難騒ぎが頻発したからだ。一人の美容師が止めた途端、それは無くなったのだがなんとなく預かってしまった。
「東京から来た知り合いの奴のなんだけど」
「堀ノ堂一と関係ある?」
「調べて貰った携帯番号、これ」
ジンは彼方の携帯を突く。
「この携帯、東京から山梨に移動した夜に、急に使えなくなったって言ってた。契約を止められたみたいだ。タイミングよすぎで、気持ちが悪い」
「ふうん。見てもいい?」
「ああ」
ジンが見たってわからない。持ち主は、何も語らない。だったら、プロフェッショナルに調べてもらうしか無い。
断っておくが、罪悪感がまるで無いわけではない。
携帯を渡すと、美馬はブラウザボタンを押したり、契約情報を調べたりし始める。
「ここのショッピングモールのWi-Fi繋いだ。確かに契約は止まってるけど、ネットは生きてる。移動して急に使えなくなったってのは気になるな。ああ、やっぱり」
美馬が口ごもる。
「何?」
「位置特定アプリが見えないように入れられている。使用者と契約者、一緒じゃないんだな、この携帯。使用者がこんなの入れるのはおかしいから、契約者が勝手に入れて渡したんだと思う。嫉妬深い恋人が、ストーカー化して相手によく使う手口。このアプリが入っていると、どの位置にいるのか、番地まで分かる」
「ふうん。なるほど」
「でも、そいつは、そんなにダークサイドアプリには詳しくない。ちょっと調べただけの素人だ。オレだったらこんなバレやすいアプリ使わないね」
クリスマスソングが鳴り響いていた館内は、一曲がちょうど終わりCMが入った。
『メルルンで、お家の中を大掃除。売れたら自分へのお年玉!』
美馬が天井を眺めた。
「ジンでもメルルンは知ってるよな?フリマアプリの。そいつは、ダークサイドアプリでもメルルンみたいなめちゃくちゃドメジャーなのを使ってるってこと」
「了解。よくわかった」
ジンは、貰った利用券をひらひら振りながら立ち上がる。
「あとで契約書持ってお前の家に行くからな!絶対に契約しろよな!」
と美馬が怒鳴ってきた。
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