26 / 126
第三章
26:だから、パンティ買おうぜ
しおりを挟む
軽トラックの助手席に彼方を乗せて、街に出る。
ショッピングモールは、甲斐大泉駅から数駅先だ。
田舎の路線なので、一駅がやたら長い。つまり、車を走らせてもそこそこ時間がかかる。
「まず、服と下着を買うか。そのあと、彼方は美容院。俺は、いろいろ用事を済ませてくる」
「服はジンのでいいのに」
「下着まで兼用したいって?」
「そうは言ってない」
「こう言っちゃなんだけど、彼方サンのパンティ、尻んとこ擦り切れてんだよ」
「今、何て??」
「一枚をずっと履いてて、んで、洗濯は水道で手もみ洗いしてただろ。いくら高級品でもそりゃボロボロになる。だから、パンティ買おうぜ」
「パンティ言うな」
初めて出会った夜は、会話もままならなかったのに、ちょっとずつ続くようになってきた。
それに、こうやって会話が途切れると、以前は無音が苦痛だったが、今はそれが心地よいものに変わってきている。
「助手席に乗ってするドライブ、初めてだ」
彼方は初めてが多い。
普通に育ってきたなら、当たり前にしか感じないことも、彼にとっては新鮮に感じるものらしい。
たぶんだが、ファーストキスもつい先日だったに違いない。
悪いことをしたなあと感じるが、自分だけしか知らない身体に、これからもっと記憶に残るようなことをすると思うと下半身が落ち着きを無くす。
でも、悟られないようにしないと。
「ドライブっていっても軽トラだ。しかも、これ、仕留めた害獣積む用だし」
「ジン、猟師の仕事は?もしかして、僕に構ってるせいで、できてない?」
「いいや。年末は、ちょっと浮かれた素人猟師も山に入ってくる。狩りのシーズンは、日本全国だいたい十一月十五日から三月十五日まで。北海道は冬が長いからもう少し長い。狩りの解禁期間は決まってるんだ。けど、平日サラリーマンやってる連中は週末とかしか来れないだろ。で、大型連休になる年末年始はわっと増える。あいつら、わざとかと思うぐらい撃たれそうな場所にいたりするから神経使うんだ。だから、今月もう一人では山に入らない。もちろん、集団で狩りしなきゃいけない場合は声がかかれば行く。巻き狩りって言うんだ」
「そうか」
「物物交換に使う獣肉は、大型冷蔵庫にたっぷりある。極端な話、光熱費と、携帯料金さえ払えば、この冬は越えられる。まあ、狩りの仕事がなくても別荘の屋根の雪下ろしのバイトとか、ちょこまか仕事は入ってくるから、暇なのは年内ってとこかな」
「そんな仕事があるんだ?」
「おう。春は果樹園、夏は草刈り。山の木の枝打ちなんてのもある。秋もやっぱ果樹園かな。そして冬は、狩り。狩りしない連中は、春夏秋の三シーズン働いて、冬は休むってのもいる。働き方はさまざま。でも、雪下ろしのバイトは今の彼方じゃ無理だぞ。あれは、かなり体力要るし、慣れてないと屋根から落ちる」
「体力?」
彼方がジンが貸したダウンジャケットの中に手を入れて、上半身をごそごそし始める。
「肉、少しついたよ」
「だな」
「間もなく出荷される」
「豚かよ」
とジンは吹き出した。
まだまだ口は重いが、たまにひょうきんなことを言うようになった。
打ち解けてくれてきたのだと思えて、ジンは彼方の変化が嬉しい。
交差点に差し掛かり、赤信号に捕まった。
彼方の頭に手を伸ばし、ツンと突く
ショッピングモールは、甲斐大泉駅から数駅先だ。
田舎の路線なので、一駅がやたら長い。つまり、車を走らせてもそこそこ時間がかかる。
「まず、服と下着を買うか。そのあと、彼方は美容院。俺は、いろいろ用事を済ませてくる」
「服はジンのでいいのに」
「下着まで兼用したいって?」
「そうは言ってない」
「こう言っちゃなんだけど、彼方サンのパンティ、尻んとこ擦り切れてんだよ」
「今、何て??」
「一枚をずっと履いてて、んで、洗濯は水道で手もみ洗いしてただろ。いくら高級品でもそりゃボロボロになる。だから、パンティ買おうぜ」
「パンティ言うな」
初めて出会った夜は、会話もままならなかったのに、ちょっとずつ続くようになってきた。
それに、こうやって会話が途切れると、以前は無音が苦痛だったが、今はそれが心地よいものに変わってきている。
「助手席に乗ってするドライブ、初めてだ」
彼方は初めてが多い。
普通に育ってきたなら、当たり前にしか感じないことも、彼にとっては新鮮に感じるものらしい。
たぶんだが、ファーストキスもつい先日だったに違いない。
悪いことをしたなあと感じるが、自分だけしか知らない身体に、これからもっと記憶に残るようなことをすると思うと下半身が落ち着きを無くす。
でも、悟られないようにしないと。
「ドライブっていっても軽トラだ。しかも、これ、仕留めた害獣積む用だし」
「ジン、猟師の仕事は?もしかして、僕に構ってるせいで、できてない?」
「いいや。年末は、ちょっと浮かれた素人猟師も山に入ってくる。狩りのシーズンは、日本全国だいたい十一月十五日から三月十五日まで。北海道は冬が長いからもう少し長い。狩りの解禁期間は決まってるんだ。けど、平日サラリーマンやってる連中は週末とかしか来れないだろ。で、大型連休になる年末年始はわっと増える。あいつら、わざとかと思うぐらい撃たれそうな場所にいたりするから神経使うんだ。だから、今月もう一人では山に入らない。もちろん、集団で狩りしなきゃいけない場合は声がかかれば行く。巻き狩りって言うんだ」
「そうか」
「物物交換に使う獣肉は、大型冷蔵庫にたっぷりある。極端な話、光熱費と、携帯料金さえ払えば、この冬は越えられる。まあ、狩りの仕事がなくても別荘の屋根の雪下ろしのバイトとか、ちょこまか仕事は入ってくるから、暇なのは年内ってとこかな」
「そんな仕事があるんだ?」
「おう。春は果樹園、夏は草刈り。山の木の枝打ちなんてのもある。秋もやっぱ果樹園かな。そして冬は、狩り。狩りしない連中は、春夏秋の三シーズン働いて、冬は休むってのもいる。働き方はさまざま。でも、雪下ろしのバイトは今の彼方じゃ無理だぞ。あれは、かなり体力要るし、慣れてないと屋根から落ちる」
「体力?」
彼方がジンが貸したダウンジャケットの中に手を入れて、上半身をごそごそし始める。
「肉、少しついたよ」
「だな」
「間もなく出荷される」
「豚かよ」
とジンは吹き出した。
まだまだ口は重いが、たまにひょうきんなことを言うようになった。
打ち解けてくれてきたのだと思えて、ジンは彼方の変化が嬉しい。
交差点に差し掛かり、赤信号に捕まった。
彼方の頭に手を伸ばし、ツンと突く
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる