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第一章
8:お風呂、……その……ありがと
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皮脂の匂いと、雨に濡れそのまま放置したような雑巾みたいな匂いがする。
洗面台の鏡を見ると、ボサボサ頭の痩せこけた男がいた。
「汚い」
こんなんで、よくジンは受け入れてくれたなと思った。
全部、脱いで言われたとおりに洗濯機に入れた。洗う前なのか、ジンの服もそこに入っていて、生活感を感じた。
乱暴者の線は拭いきれないが、犯罪者でも怪物でもなさそうだ。
浴室に入り、湯おけで湯を掬って身体にかけると、ジンが言ったとおり身体に電流が走ったみたいになった。特に、つま先が痺れる。
シャワーを出して湯が出始めたのを確認し、頭からかぶると、背中もビリビリする。
濡れた髪を触るとゴワゴワなのにベタベタしていて、シャンプーしてもきちんと泡立ったのは三回目の洗髪を終えてからだった。念のために四回目も入念に洗って、今度は身体も洗う。足の爪が伸びていて、汚れが入り込んで汚かった。手の爪もだ。
性器の先も垢で汚れていて、車の中で脱がされていたらかなり恥ずかしい思いをしただろうなと思った。
ぐったりしているそこは刺激混じりに洗っても反応は薄く、こんなんでジンが満足するのか疑問だった。
気が済むまで身体を洗って、白木の湯船に使った。
「アアアアア---」
と勝手に低い声が出る。
ビリビリと今度は全身が痛い。
血が巡り始めると、その痛みも無くなって、彼方はさらにそこから十分ほど浸かって風呂から出た。
タオルで身体と髪を拭き、ジンが用意してくれたスウェットを着る。
「ブカブカ」
どれだけ体格差があるか思い知らされる。
先程の部屋に戻ると、ジンがカウンターキッチンから出てきた。
「お風呂、……その……ありがと」
「顔、真っ赤だぞ」
ジンは、オレンジ色の透明な液体が入ったグラスを勧めてくる。
「フルーツティー。冷やしたやつ」
先程、残った分をわざわざ冷たくしてくれたようだった。
入っている氷は氷山みたにギザギザで、冷蔵庫で水道水を製氷したものではなさそうだ。
一口飲むと、乾いた身体に吸い込まれていく。
顎を天井に向けてごくごく飲み込んでいくと、太い梁が再び目に入った。
カウンターキッチンの上に立って背伸びすれば届きそうな距離だった。
「風呂に行ってくる。あと、俺の部屋はこっちな。案内する。おい、彼方?」
背中を突かれ、我に返る。
少し乱暴に頭に手を置かれた。
「濡れてるじゃねえか。室内だって暖房がないところだと、髪が凍ってバリバリになるんだぞ」
洗面所に連れていかれ、ドライヤーを当てられた。
再び完全に彼方の髪が乾くと、ジンは服を脱ぎ始める。
「ここで見てるか?なんなら、もう一回入る?つまり、一緒に」
ジンはあっという間に素っ裸になってしまい、彼方は何も答えず急いで廊下に出る。
背中しか見えなかったが、想像よりも大きな体だった。
すごすぎる。
同じ男とは思えない。
心臓が痛い。
胃も痛い。
息が苦しくなって、ここで気絶できたら楽だろうなと思った。
目覚めたら全て終わっているなら、どれだけいいか。
ジンの部屋は分かっていた。
髪を乾かすために洗面所に連れて来られたとき、途中で「俺の部屋、ここ」と拳で扉を叩いたからだ。
廊下の前に佇んでいると、冷気が下から上がってくる。
乾かさないと髪が凍るなんて、あながち大げさではない気がしてきた。
ジンの部屋は、暖房が効いていて暖かかった。
寝る前に部屋を温めるのが慣例なのか、彼方のためにわざわざやってくれたのかは、分からない。
洗面台の鏡を見ると、ボサボサ頭の痩せこけた男がいた。
「汚い」
こんなんで、よくジンは受け入れてくれたなと思った。
全部、脱いで言われたとおりに洗濯機に入れた。洗う前なのか、ジンの服もそこに入っていて、生活感を感じた。
乱暴者の線は拭いきれないが、犯罪者でも怪物でもなさそうだ。
浴室に入り、湯おけで湯を掬って身体にかけると、ジンが言ったとおり身体に電流が走ったみたいになった。特に、つま先が痺れる。
シャワーを出して湯が出始めたのを確認し、頭からかぶると、背中もビリビリする。
濡れた髪を触るとゴワゴワなのにベタベタしていて、シャンプーしてもきちんと泡立ったのは三回目の洗髪を終えてからだった。念のために四回目も入念に洗って、今度は身体も洗う。足の爪が伸びていて、汚れが入り込んで汚かった。手の爪もだ。
性器の先も垢で汚れていて、車の中で脱がされていたらかなり恥ずかしい思いをしただろうなと思った。
ぐったりしているそこは刺激混じりに洗っても反応は薄く、こんなんでジンが満足するのか疑問だった。
気が済むまで身体を洗って、白木の湯船に使った。
「アアアアア---」
と勝手に低い声が出る。
ビリビリと今度は全身が痛い。
血が巡り始めると、その痛みも無くなって、彼方はさらにそこから十分ほど浸かって風呂から出た。
タオルで身体と髪を拭き、ジンが用意してくれたスウェットを着る。
「ブカブカ」
どれだけ体格差があるか思い知らされる。
先程の部屋に戻ると、ジンがカウンターキッチンから出てきた。
「お風呂、……その……ありがと」
「顔、真っ赤だぞ」
ジンは、オレンジ色の透明な液体が入ったグラスを勧めてくる。
「フルーツティー。冷やしたやつ」
先程、残った分をわざわざ冷たくしてくれたようだった。
入っている氷は氷山みたにギザギザで、冷蔵庫で水道水を製氷したものではなさそうだ。
一口飲むと、乾いた身体に吸い込まれていく。
顎を天井に向けてごくごく飲み込んでいくと、太い梁が再び目に入った。
カウンターキッチンの上に立って背伸びすれば届きそうな距離だった。
「風呂に行ってくる。あと、俺の部屋はこっちな。案内する。おい、彼方?」
背中を突かれ、我に返る。
少し乱暴に頭に手を置かれた。
「濡れてるじゃねえか。室内だって暖房がないところだと、髪が凍ってバリバリになるんだぞ」
洗面所に連れていかれ、ドライヤーを当てられた。
再び完全に彼方の髪が乾くと、ジンは服を脱ぎ始める。
「ここで見てるか?なんなら、もう一回入る?つまり、一緒に」
ジンはあっという間に素っ裸になってしまい、彼方は何も答えず急いで廊下に出る。
背中しか見えなかったが、想像よりも大きな体だった。
すごすぎる。
同じ男とは思えない。
心臓が痛い。
胃も痛い。
息が苦しくなって、ここで気絶できたら楽だろうなと思った。
目覚めたら全て終わっているなら、どれだけいいか。
ジンの部屋は分かっていた。
髪を乾かすために洗面所に連れて来られたとき、途中で「俺の部屋、ここ」と拳で扉を叩いたからだ。
廊下の前に佇んでいると、冷気が下から上がってくる。
乾かさないと髪が凍るなんて、あながち大げさではない気がしてきた。
ジンの部屋は、暖房が効いていて暖かかった。
寝る前に部屋を温めるのが慣例なのか、彼方のためにわざわざやってくれたのかは、分からない。
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