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第七章

157.御託はいいから、教えろよ

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「あいつがお前に吹き込んだ話は、全部、嘘か、ホラ話か、話を極限まで盛っているかのどれかだからな」

「御託はいいから、教えろよ。豪華王ロレンツォが死に際サヴォナローラに嘘の告解させられたって話だ。そのせいで、ロレンツォ公はユディトがドメニコ会派の修道士を殺して回るの黙認しているって」

「為政者ならそんなことはしないって?そういう奴らほど矮小な人間であることが多い」

「ソースは?」

「ロレンツォだけで充分だ」


 十分かからずサン・マルコ修道院へ。


「うおっ」


 中に入って天井に圧倒された。

 白と金のレリーフに囲まれたマリアがいる。

 オレノ村の教会には絶対にない豪華さだった。

 レオが歩きながら言う。


「天井はピア・フランチェスコ・シルヴァニが制作を始めた。絵はキャンバス画で『聖母被昇天』。正面口裏手には、『受胎告知』と『キリストの変容』。ジョバンニ・バッティスタ・バッギ作」

「そんな説明どうでもいいんですけど?僕、絵には興味ないんで。……うわあ。この言い方、まるでアンジェロだな。結局、あいつはどんな絵描きなんだ?雅号があるんだろ?」

「本人がオレに聞いてきた。俺は誰なんですかって?」

「あんた、何て答えたんだ?」

「知らねえって」 


 レオはずんすんと中に進んでいき、断り無く関係者以外立ち入り禁止区域へと入っていく。

 どこからともなく修道士がわらわらとやってきて押し問答になった。


「RC社のレオ・セル・ピエーロだ。ドメニコ会派修道士が多数殺されている事件で確認したいことがある」


 レオが、首から下げるタイプの黒い革のパスケースを見せると騒いでいた修道士らが水を打ったように静かになった。

 クレジットカードサイズのこれが、国際美術パスなるものらしい。

 中にはリチャード・クリスティンのロゴRCと本部所属という記載。

 それに顔写真。

 物凄い三白眼の男が、犯罪者面で写っている。

 サライは修道士らに告げた。


「お前らにオレノ村から何らかの連絡があっただろう?絵を譲るっていう。そのやり取りを保管しているはずだ。僕の予想だと紙で」

「何を言っているんだ、少年」


 でっぷりと太った白ひげの修道士が愛想笑いをした。

 絶対何か隠している。

 そして、自分のことを舐めきっている。

 年齢で?体格で?

 ああ、畜生。腹が立つ。
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