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第七章
134.自分の過去を受け入れる勇気あるか?
しおりを挟む「あ?」
「ヨハネがそう言っていたんだよ。オレノ村の家にドメニコ会の僧七人を呼び出したのもユディト以外の誰かなんじゃないかって。じゃあ、このマテリア殺傷事件にもそいつが関わっているって可能性があるってことだな?」
「あいつの推理ごっこには付き合うな。いつも、詰めが甘い。被弾するぞ」
「ロレンツォ公といい、ヨハネといい、どうなってんの、あんたらの関係性は」
サライは青い衣の男の側に寄って行って、つま先から頭のてっぺんまで眺める。
「これが僕のファーストマテリアってことか」
「迷惑なことだ」
「あんたに関係ねえだろ。なあ、かつての僕はかなり高名な絵描きだったってことか?めちゃくちゃ上手く描けているもんな、こいつ」
サライは嬉しくなり、鼻の穴が広がりそうになる。
こう言っちゃ何だが、ネットの事件を特定する以外、秀でたものが無いのだ。
過去の自分がこれほどのものだったとはと嬉しくなる。
レオが観念したように息を吐き出した。
しばらく無言になったのち、
「自分の過去を受け入れる勇気あるか?」
「何、格好つけているんだ?映画の見すぎか?滑稽だぞ?」
「お前な。オレの気遣いを何だと」
「僕はどんなことにも動じない。さっさと話せ」
約一ヶ月前、家に帰ったら祖父が死んでいて、周りには見知らぬ修道士の首なし死体があった。
さらには、容疑者扱いされ未成年収容所へ。
助け出してくれたイタリア一の資産家は、死神に姿を変えロンドンの空を飛んだ。
その息子は、九億ユーロの値段が付いた絵をオークション会場から盗み出し、十歳の頃に描かされたものだと宣った。
これ以上、何に驚けというのか。
レオが「じゃあ、いいんだな」と念を押した後、
「お前は、レオナルド・ダ・ビンチの弟子だった」
「――――――――――――はああああああああっ?」
声が盛大にひっくり返った。
「あ、あ、あ、あんたが、僕の師匠ぉ?!」
イタリアは、古くから多くの職人の共に発展してきた国だ。
師匠と弟子なんて、大げさに言ってしまえば血より濃い関係だ。
「じょ、冗談じゃない!!何で、僕があんたの弟子なんだよっ!!嫌だよ!嫌すぎる。今なら、高熱を一瞬で上げられる。いや、死ねる」
サライの反応に、レオが顔を曇らす。
「今のオレがお前の師匠じゃない。お前の、ええい、ややこしいな。アンドレア・サライの師匠がレオナルド・ダ・ビンチだ」
「誰それ?」
「お前だ。それが雅号」
レオが携帯画面を見せてくる。
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