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第五章
96.じゃあ、お前がレオナルド・ダ・ビンチ??
しおりを挟む「俺、父さんの言いなりになんてならないっ!絵なんて絶対に、描かないからなっ!!」
「何を言い出すんだ。私は命令なんて。君が描いた絵を集めた理由は……」
ロレンツォが必死に説明するが、アンジェロは聞く耳を持たない。
そして、何故か、床に置かれていた絵がうっすら光り始めた。
アンジェロの喋りも止まらない。
「絶対に、」
と喉が裂けるような勢いで続けて叫ぶ。
「描くもんかっっっ!」
溢れ出す光はさらに増し、サライはまばゆくて目を開けていられなくなった。
「どうなっているんだ、これ?!」
慌てるサライに、「いいから、見とけって」とヨハネが余裕めいた笑顔を見せる。
その光が去ると、男が立っていた。
水晶玉を持った青い衣の男だ。
サライは目を疑う。
こいつは、カンバスに描かれていた男。
ヨハネが、ピュイと口笛を吹き、レオは顔をますます険しくして真っ黒な背景だけになったカンバスをチラ見する。
ロレンツォに至っては、悲しみを通り過ぎて逆に微笑んでしまったみたいな、そんな表情をしていた。
水晶玉を持った青い衣の男もまた、どっちつかずの顔をしている。
「は?はあああっ??」
レオやロレンツォが神妙な顔をしている最中、サライは素っ頓狂な声を上げた。
絵の中から、マテリアを出したということは、アンジェロは絵描きの生まれ変わりということだ。
「じゃあ、お前がレオナルド・ダ・ビンチ??」
サライが問いかけると、青い衣の男の出現に驚きギョロギョロとどんぐり眼を動かしていたアンジェロが、
「え?」という表情をする。
知らないと、いうことか?
いや、でも。
サライは混乱しかけた。
青い衣の男の出現を、レオもロレンツォもまるで海が割れた奇跡でも見たような顔をしている。
だが、ヨハネだけ、
「アーハハハッ。マエストロ!こりゃ、傑作だなあ」
と腹を抱えて笑っていた。
そして、こちらの肩を叩いてくる。
「サライ。心配しなくていい。マエストロが正真正銘のレオナルド・ダ・ビンチだ。だってこんな雑なお絵かきはしねえもん。なあ、マエストロ?」
実体を持って現れた青い衣の男の周りをヨハネがくるくると回る。
「雑って、九億ユーロの絵だぞ?じゃあ、これは何だ?」
サライは、青い衣の男が居なくなった黒い背景だけになったカンバスと実体を持った男を交互に指差す。
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