上 下
98 / 129
第六章

98:ルル。僕の肩に足を乗せろ。奥の方の毛も整えてやる

しおりを挟む
「進軍まで間もなくなのに馬鹿なことを言っているのは分かってます。でも、主をその気にさせる誘い方が俺には分からない」
「うん。ルルは馬鹿なことを言っている。それに、泣いているのか?」
とわかっているのに、アスランは聞く。
「泣いてません」と強情を張るのが分かっていたからだ。
 でも、その予想は外れた。
「はい」
 素直にルルが答えた。
 ---我慢できない。
 アスランは、もう気持ちを抑えることができなかった。
 永遠の別れになるかもしれない。
 それでも、ぎりぎりのところで理性を保ってきた。
 お互いに努力をした。
 ルルはアスランを避け、アスランは、それよりもっと前にルルを避けはじめた。
 だが、結局は無駄なあがきだったようだ。
 アスランは荒々しくルルを執務机に押し倒した。
 逃さないという意思表示で、固く抱きしめる。
 窒息するほどの勢いで口づけて、久々にルルの唇の柔らかさを味わう。
 ロンドから教わったのか、ルルがアスランの身体をしっかりと抱きしめ返してきて、その腕の力強さに驚いた。前はひ弱で、こんな力は無かったはずだ。
 大人になろうとしている彼の一時を見る機会を永遠に失ったこと、そして、これからもその情報は更新されないことに、アスランは苛立った。
 感情が波打つ。
 悲しみよりも、手に入らない、いや手に入れてはいけないんだという怒りがあった。
 ルルを机から起こして窓辺に連れていき、上着もローブも有無を言わさず脱がせて月明かりに立たせる。
 以前、骨が浮き少し猫背気味だった細長い背中は、薄いが筋肉が付きつつあり、姿勢も良くなっている。
「知らないうちに、こんなに逞しくなっちゃって」
 常時、剣を振っている二の腕もかなり太くなっている。
 こちらを向かせて触った腹は、しっかりと硬かった。
 そこからさらに手を伸ばせば、下生えは未処理のせいで、ごわついている。整えている者より卑猥に見えた。
「さっきみたいな誘い方、誰から習った?ロンドか?それとも、親しくなった魔法使いか?」
 業務ついでにルルが若い魔法使いらと話をする姿を幾度か見ている。王都の剣士や、剣闘大会のことを聞いたりしたいのだろう。若い魔法使いらも、ゴート城主唯一の側仕えである垢抜けない姿の剣士に興味があるようだった。
 ルルが無言で首を振った。
 彼の性器は、月狂いの夜のせいで、腹に突くほど上を向き、滴らんばかりに先走りの液を零していた。
 彼がそれを隠そうと腰をかがめるので、余計アスランの心に火がつく。
「いいよ。切ってやる」 
 アスランは月見草が入った小袋をルルの鼻に押し付けながら、言う。
 魔法でハサミを取り出し、片膝を床についた。
 ルルに立っている性器をできるだけ右側に寄せるよう指示を出す。そして、左側に下生えにハサミを当てた。 
 刃が冷たいのか、それとも感じるのか、ルルが少し腰を揺らす。 
「次は逆側だ」
 そこまで毛量は多くないので、すぐにその部分は整って綺麗になる。
 袋を鼻に押し当てた状態で、ルルが切なげな目でアスランを見つめていた。
「ルル。僕の肩に足を乗せろ。奥の方の毛も整えてやる」
 さすがのルルも引くだろうと思って、アスランはわざと言った。
 嫌われてこれで終わり。
 いつか、ロンドからも離れていき、誰かと夜を過ごすようになったとき、「そういえば、
一番最初に契約してくれた魔法使いがとんでもない変態でさあ」と笑ってくれればいい。蔑む対象になってしまいたかった。
 でも、ルルはアスランの予想とは反対のことした。
 上げた足を震わせながら、アスランの肩に乗せたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

愛孫と婚約破棄して性奴隷にするだと?!

克全
BL
婚約者だった王女に愛孫がオメガ性奴隷とされると言われた公爵が、王国をぶっ壊して愛孫を救う物語

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

堅物王子の側妃は降嫁と言われたので王宮騎士になって返り咲く

あさ田ぱん
BL
辺境伯の四男のアナベルは堅物王子ギルフォードと政略結婚をして側妃となった。ギルフォードは好色な王に習って側妃を数名抱えていたが、いずれも白い結婚で、国庫を圧迫する後宮を縮小したいと考えている。アナベルは唯一の男の側妃で他の側妃からの虐めにも耐えて頑張っていたが、スタンピードが発生したことでギルフォードは側妃達を降嫁させると宣言する。 堅物王子攻×健気受け R18には※をつけております。 いろいろとご指摘の箇所を修正、改稿してアップしています。 ※皇→王に修正、などなど、タイトルも変えました

【完結】王子様の婚約者になった僕の話

うらひと
BL
ひょんな事から第3王子のエドワードの婚約者になってしまったアンドル。 容姿端麗でマナーも頭も良いと評判エドワード王子なのに、僕に対しては嘘をついたり、ちょっとおかしい。その内エドワード王子を好きな同級生から意地悪をされたり、一切話す事や会う事も無くなったりするけれど….どうやら王子は僕の事が好きみたい。 婚約者の主人公を好きすぎる、容姿端麗な王子のハートフル変態物語です。

【R18・完結】ショウドウ⁈異世界にさらわれちゃったよー!お兄さんは静かに眠りたい。

カヨワイさつき
BL
20代最後の日、コンビニ帰りに召喚に巻き込まれてしまった、正道晴人(しょうどう はると)と 同時刻、ゲームを買いに来た岡真琴(おか まこと)は神子召喚されてしまった。 2人の神子は不吉とされ、正道は召喚場所から追い出されてしまった。 正道を中心に世界は動き出したかもしれない?! 衝動、正道の異世界物語! ☆予告なしにR 18入る場合入ります。 暴力や無理矢理なのは、なるべくボカした 表現にしてます。 大切なご意見ご感想、毎回うれしいです😆 読んでくださる皆様に感謝を込めて ありがとうございます❤️ 小さな幸せが たくさん降り注ぎますように❤️

捨てられ子供は愛される

やらぎはら響
BL
奴隷のリッカはある日富豪のセルフィルトに出会い買われた。 リッカの愛され生活が始まる。 タイトルを【奴隷の子供は愛される】から改題しました。

処理中です...