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第四章
47:やっぱり剣だよな
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「集中力が途切れる」
そんな言い方しなくたって。
だったら、昨日の行為は何だったんですか?と聞きたい気分だった。
側仕えに慰みを、いや、手を差し伸べる行為だったとしても、口づけは……。
あの行為は、行き過ぎてますよね?
行き過ぎた行為をするなら、そして、その行為をこちらが許容するなら、距離が縮まったってことでしょう?
自分に気づいて欲しい。
ちょとでもいいから、声をかけて欲しい。
かまって欲しい。
そう思ってしまうのは、いや、そう思わせたのは主でしょう?
なのに。
ルルは、そこではたと気づいた。
俺、おかしい。
どうして、主にここまでの執着を?
これまでの雇い主には、彼らの視界にも入りたくなかったのに。
そそくさと書庫を出た。
日が暮れて、また食事を持っていくと、昼持っていった分は空になっていた。
「邪魔をするな」と再度言われては悲しいので、入れ替わりにそれを下げて、すぐに立ち去る。
寝台に潜り込んだ。
ここにいてもやることがないのだ。
そこそこの広さはあるが、自由に剣を振り回すことはできるほどではない。
流石に時間が早すぎて眠りにはつけず、昨日と今日とでの主の態度の変わりようは何なんだと考えて、答えなんて出るわけもなく悶々として、事あるごとに「邪魔をしないでくれないか」という言葉が反芻されて。
そうこうしているうちにようやく眠りに引き込まれていって、書庫の扉が開く「キイ」という控えめな音で覚醒した。といってもまだ夢見心地だった。
寝台が揺れてアスランが隣に入ってきたのが分って、そこからはっきりと目覚めた。
背中から抱かれたのだ。
うなじのあたりに鼻をこすりつけられ、全身を痛いぐらいに抱きしめられる。
今日は、アスランからはオレンジの香りはしない。
魔法書と格闘して疲労困憊で、そんな余裕はなかったのだろう。
彼がルルが好きな香りを漂わせていれば、寝ぼけて抱きつくことだってできるのに。
馬鹿だ、俺。
とルルは続けて思った。
たった一夜、ああいう行為の最中で優しくされただけなのに、こんなにも舞い上がって。
でも、主は違うじゃないか。
今日は、魔法書と首っ引きで自分には見向きもせず、「邪魔しないでくれないか」ときつい声で言われた。
それに、今だって、ほら。
一瞬、ルルを強く抱きしめてきたアスランだったが、手を離し、側から離れていく。
寝返りを打つ音が聞こえてきた。
肩先で振り返ると人一人分の距離を空けて、アスランが眠りにつこうとしていた。
彼にとっては、手間のかかる側仕えへのただの手助け。
いや、気まぐれ行為に近いものなのかもしれない。
今も気が向いたから、抱きまくら代わりに使っただけ。
このままじゃ駄目だ。
とルルは毛布をかぶりながら思った。
この気まぐれ行為すら、いつか無くなる。
与えてもらうだけでは、受け身のままでは、飽きられてしまうのが目に見えている。
このことだけは忘れてはならない。
自分は、剣士なのだ。
今はまだ魔法使いより弱いが、それでも剣士。
ホズ村にいたころは、立派な剣士になることは、夢であり、辛い現実を生きるための逃避だった。
何のために強くなりたいのか、はっきりしていた。
でも、今は、色んなことが満たされてきていて、そのせいで腑抜けになりつつあることも心のどこかで自覚していた。
「やっぱり剣だよな」
そんな言い方しなくたって。
だったら、昨日の行為は何だったんですか?と聞きたい気分だった。
側仕えに慰みを、いや、手を差し伸べる行為だったとしても、口づけは……。
あの行為は、行き過ぎてますよね?
行き過ぎた行為をするなら、そして、その行為をこちらが許容するなら、距離が縮まったってことでしょう?
自分に気づいて欲しい。
ちょとでもいいから、声をかけて欲しい。
かまって欲しい。
そう思ってしまうのは、いや、そう思わせたのは主でしょう?
なのに。
ルルは、そこではたと気づいた。
俺、おかしい。
どうして、主にここまでの執着を?
これまでの雇い主には、彼らの視界にも入りたくなかったのに。
そそくさと書庫を出た。
日が暮れて、また食事を持っていくと、昼持っていった分は空になっていた。
「邪魔をするな」と再度言われては悲しいので、入れ替わりにそれを下げて、すぐに立ち去る。
寝台に潜り込んだ。
ここにいてもやることがないのだ。
そこそこの広さはあるが、自由に剣を振り回すことはできるほどではない。
流石に時間が早すぎて眠りにはつけず、昨日と今日とでの主の態度の変わりようは何なんだと考えて、答えなんて出るわけもなく悶々として、事あるごとに「邪魔をしないでくれないか」という言葉が反芻されて。
そうこうしているうちにようやく眠りに引き込まれていって、書庫の扉が開く「キイ」という控えめな音で覚醒した。といってもまだ夢見心地だった。
寝台が揺れてアスランが隣に入ってきたのが分って、そこからはっきりと目覚めた。
背中から抱かれたのだ。
うなじのあたりに鼻をこすりつけられ、全身を痛いぐらいに抱きしめられる。
今日は、アスランからはオレンジの香りはしない。
魔法書と格闘して疲労困憊で、そんな余裕はなかったのだろう。
彼がルルが好きな香りを漂わせていれば、寝ぼけて抱きつくことだってできるのに。
馬鹿だ、俺。
とルルは続けて思った。
たった一夜、ああいう行為の最中で優しくされただけなのに、こんなにも舞い上がって。
でも、主は違うじゃないか。
今日は、魔法書と首っ引きで自分には見向きもせず、「邪魔しないでくれないか」ときつい声で言われた。
それに、今だって、ほら。
一瞬、ルルを強く抱きしめてきたアスランだったが、手を離し、側から離れていく。
寝返りを打つ音が聞こえてきた。
肩先で振り返ると人一人分の距離を空けて、アスランが眠りにつこうとしていた。
彼にとっては、手間のかかる側仕えへのただの手助け。
いや、気まぐれ行為に近いものなのかもしれない。
今も気が向いたから、抱きまくら代わりに使っただけ。
このままじゃ駄目だ。
とルルは毛布をかぶりながら思った。
この気まぐれ行為すら、いつか無くなる。
与えてもらうだけでは、受け身のままでは、飽きられてしまうのが目に見えている。
このことだけは忘れてはならない。
自分は、剣士なのだ。
今はまだ魔法使いより弱いが、それでも剣士。
ホズ村にいたころは、立派な剣士になることは、夢であり、辛い現実を生きるための逃避だった。
何のために強くなりたいのか、はっきりしていた。
でも、今は、色んなことが満たされてきていて、そのせいで腑抜けになりつつあることも心のどこかで自覚していた。
「やっぱり剣だよな」
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