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第五章

94:……イク……かも

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「尚、舌出して。性器しごかれながら三回目のキス。それとももっとムードたっぷりな方がいい?お姫様」
 時雨が顔を近づけてきて、尚は逃げずにそれを受け入れた。
 お姫様と言われて、ムカついたからだ。
 今回は最初から舌で触れ合う激しいキスだった。
 口腔を時雨の舌が犯していく。
「ん!んん!!」 
「ほら、いこ。口で僕の舌を感じて、性器は僕の手を感じて。ほら、ほら、ほら」
 追い立てられるがやっぱり性器の先端に蓋をされているようで、どんなに頑張っても最後の極みはやってこない。時雨の超絶手技も型無しだ。
 終いには、舌が引き抜かれてしまった。
「……ごめん」
 口の端に垂れたのがどちらかの唾液なのか、シャワーの湯なのか分からないまま尚は拭う。
「何、言ってるの?終わりじゃないよ」
 今度は四つん這いにさせられ、時雨が後ろから抱きかかえている。
 泡だらけの手が尚の性器を掴んだ。
「さあ。僕の手を貸して上げるから自分で腰を振って」
「自分でって?!」
「尚がどういうセックススタイルなのか見ておきたいじゃない?若者らしくガンガンに突くのか、それともゆっくりいやらしくなのか」
「い、嫌だよ」
「気持ちいいから」
「嫌だって」
「やれ」
 ひどい命令なはずなのに、時雨は反則技を使って甘く囁やいてくる。
 あの優男の時雨が、「やれ」だなんて乱暴な命令。
 身体が痺れる。
 嫌だからじゃない。
 官能でだ。
 先日、唇を押し付けられた首筋をべろりと舐め上げられ、尚は気持ちよさに悲鳴を上げた。
 時雨の手のひらの上で勝手に腰が揺れ始める。
 泡だらけの時雨の指が尚の性器に絡みついてきた。
「以外と激しいね。ほら、もっと声。恥ずかしい?なら、浴槽にお湯を貯めよう。その音で大丈夫だよ、きっと」
「絶対にっ、大丈夫じゃないしっ」
 それでも尚は腰を振るのを止められない。
「時雨、さんっ」
 ドボドボと浴槽に溜まり始める湯の音の中で、尚は首を捻ってキスをねだった。
 時雨の舌が尚の舌の上を滑るように入って来る。
 舌で舌をくすぐられているっ。
 尚はたまらず、浴槽に片手をかけた。
 そして、もう片方の手を時雨の空いている手で握ってもらう。
「……イク……かも」
「初射精は僕の手の中って最高にエロい体験だね、尚」
 尚は大きくうなずく。
 煽られているのは分かってる。
 でも、最高に気持ちがいい。
「いいよ。いきなよ」
「ほら。ほらって」
「思いっきり出しな。僕の手の中に」
 時雨は立て続けに尚を言葉で攻めてくる。
「時雨さんっ!!しぐれさっ……っ」
「いけ」
 声にならない絶叫で尚は上半身をのけぞらせる。
 片方は浴室の縁を掴み、もう片方の手はぎゅっと時雨の手を握りしめていた。
 腰を突き出す。
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