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第五章
91:お風呂に行けば、泣いているのはばれないよ?
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「俺が?」
「いいえ。僕が」
「嘘ばっか言うな」
「二回目しよ?」
「しねえよ。誰かさんが大遅刻してくるから」
「ねえ。尚、抱きしめているのに何で腰を引くの?」
背中に回っていた時雨の手が腰の下まで降りてきて、ぐっと力任せに押される。
「止めろって」
「どうして?出ちゃうから?」
尚は懇親の力で時雨を突き飛ばす。
そして、自分を卑下してせせ笑った。
「その逆。俺、射精出来ねえの。医者には行ってねえけど、たぶん、心因性の射精障害。キスも初めてなら、射精すら一人で出来なくて、時雨さんには面白くてたまらないよな」
部屋に逃げていこうとすると、手首をぐっと掴まれた。
「それ、今まで誰かに打ち明けたりした?」
「言うわけないだろ!!」
「言いたくないことをどうして僕に言うの?前も言ったよね?神様は超能力者じゃないって。透視能力は無いんだから、ちゃんと言葉にして伝えないと分かんないよ」
「勢い」
「じゃあ、この後は?」
「この後って別に。あんたは一人で風呂に入って、俺は後から……」
「また、あんた。相当怒っているね?」
そこまで言われて、尚はとうとうキレた。
「なかなか来ねえからだろうが!そっちから誘っておいて、終わりの数時間前にようやく登場だなんて。俺は、最初は乗り気じゃなかったけれど、前日のあたりとか相当楽しみで。一緒に川釣りだってしてみたかったし、絶品のプレーンオムレツの感想だって聞きたかった」
「じゃあ、また行こう。今度は二人きりで」
「行かねえよっ!あんたらは明日東京に帰る。俺は飛騨に残る」
「残るってずっと?」
「そうだよっ」
「初耳なんだけど」
「関係ねえだろ、他人なんだから」
「尚はそうやっていつも相手を切り捨てようとする」
「いつも?知り合ってたった十日ほどだ。そのうち二日は不在だったろうが」
「つまり、寂しくて仕方がなかったってことだよね?」
尚は言葉に詰まる。
「素直な気持ちを言えばいい。尚が素直になると、隕石が落ちてきて地球が滅亡したりする?」
「素直になっていいことなんて一回も無かった」
「また、そういう決めつけ。じゃあ、過去は全部そういう結果だったとしよう。でも、数秒先の未来は?」
「笑うだろ?」
「笑わないよ」
「からかうだろ?」
「そんなことしないって」
時雨は背中を向けたまま手首を握られている尚を強引に振り向かせ、そのまま抱き寄せてくる。
「ごめんね。待たせた。チェックアウトまでずっとこうやってくっついていようよ」
涙が溢れてきて、尚は時雨の肩に水滴をこすりつけた。
「お風呂に行けば、泣いているのはばれないよ?」
時雨が余計なことを言いながら、尚の服を脱がしにかかる。だからその背中を叩いてやった。目一杯抵抗したはずなのに、簡単に下着まで脱がされてしまう。
「まずシャワーしよ。温かいの出てくるまで待ってね」
尚が前を隠して下を向いていると、時雨は浴槽の端まで行き、天幕を調整する紐を引っ張る。
尚はいきなり現れた夜空を見上げた。
ほぼ全面を透明な天幕にすることが出来るようだ。
「いいえ。僕が」
「嘘ばっか言うな」
「二回目しよ?」
「しねえよ。誰かさんが大遅刻してくるから」
「ねえ。尚、抱きしめているのに何で腰を引くの?」
背中に回っていた時雨の手が腰の下まで降りてきて、ぐっと力任せに押される。
「止めろって」
「どうして?出ちゃうから?」
尚は懇親の力で時雨を突き飛ばす。
そして、自分を卑下してせせ笑った。
「その逆。俺、射精出来ねえの。医者には行ってねえけど、たぶん、心因性の射精障害。キスも初めてなら、射精すら一人で出来なくて、時雨さんには面白くてたまらないよな」
部屋に逃げていこうとすると、手首をぐっと掴まれた。
「それ、今まで誰かに打ち明けたりした?」
「言うわけないだろ!!」
「言いたくないことをどうして僕に言うの?前も言ったよね?神様は超能力者じゃないって。透視能力は無いんだから、ちゃんと言葉にして伝えないと分かんないよ」
「勢い」
「じゃあ、この後は?」
「この後って別に。あんたは一人で風呂に入って、俺は後から……」
「また、あんた。相当怒っているね?」
そこまで言われて、尚はとうとうキレた。
「なかなか来ねえからだろうが!そっちから誘っておいて、終わりの数時間前にようやく登場だなんて。俺は、最初は乗り気じゃなかったけれど、前日のあたりとか相当楽しみで。一緒に川釣りだってしてみたかったし、絶品のプレーンオムレツの感想だって聞きたかった」
「じゃあ、また行こう。今度は二人きりで」
「行かねえよっ!あんたらは明日東京に帰る。俺は飛騨に残る」
「残るってずっと?」
「そうだよっ」
「初耳なんだけど」
「関係ねえだろ、他人なんだから」
「尚はそうやっていつも相手を切り捨てようとする」
「いつも?知り合ってたった十日ほどだ。そのうち二日は不在だったろうが」
「つまり、寂しくて仕方がなかったってことだよね?」
尚は言葉に詰まる。
「素直な気持ちを言えばいい。尚が素直になると、隕石が落ちてきて地球が滅亡したりする?」
「素直になっていいことなんて一回も無かった」
「また、そういう決めつけ。じゃあ、過去は全部そういう結果だったとしよう。でも、数秒先の未来は?」
「笑うだろ?」
「笑わないよ」
「からかうだろ?」
「そんなことしないって」
時雨は背中を向けたまま手首を握られている尚を強引に振り向かせ、そのまま抱き寄せてくる。
「ごめんね。待たせた。チェックアウトまでずっとこうやってくっついていようよ」
涙が溢れてきて、尚は時雨の肩に水滴をこすりつけた。
「お風呂に行けば、泣いているのはばれないよ?」
時雨が余計なことを言いながら、尚の服を脱がしにかかる。だからその背中を叩いてやった。目一杯抵抗したはずなのに、簡単に下着まで脱がされてしまう。
「まずシャワーしよ。温かいの出てくるまで待ってね」
尚が前を隠して下を向いていると、時雨は浴槽の端まで行き、天幕を調整する紐を引っ張る。
尚はいきなり現れた夜空を見上げた。
ほぼ全面を透明な天幕にすることが出来るようだ。
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