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第四章
47:だって、襲う気だろ
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蚊帳をめくって入ってきたのは翠雨だ。
「起きたか、悪尚」
でも、声は尖っている。
ご機嫌斜め?
酔って記憶を飛ばした後、何かやらかしたんだろうか。
にしても、本当に翠雨が来てくれてよかった。
尚は身体を起こし、帯が無いせいではだけそうになる浴衣の前合わせの部分をきゅっと掴んだ。
そして、思う。
さっぱり解らないと。
どうして、俺はパンツを履いてないんだ。
酔って脱ぐ癖があるなら、もう、金輪際酒は飲まないようにしないと。
嫌な夢も見たし。
それに、時雨にも変なことを……。
思考がぐるぐるしそうになっていると、翠雨はあぐらをかいて座っている氷雨にぴったりくっつくようにして隣にごろりと横たわって、でも氷雨に軽く突き飛ばされて蚊帳の端を巻き込みながらごろっと転がり、また戻ってくる。
まるで二人はじゃれ合っているみたいだ。
「悪尚ってカレンダーアプリって使っている?共有できるタイプのやつ」
「いや、特には」
「なら、入れといて。これな」
翠雨は氷雨を挟んで腕を伸ばしてきて尚に携帯画面を見せアプリをカツカツと突く。
「……何故?」
すると、どうして馬鹿馬鹿しいことを聞くんだ、あ、お前馬鹿なのか?という顔を翠雨がした。
「予定合わせるのに便利だろうが。花火大会行きたいです。うな重食べたいです。バーベキューやりたいです。川釣りもしたいです。グランピングもって昨晩言ってたぞ」
「絶対嘘だし。だって、グランピングって言葉の意味が分からない」
翠雨の明るさのお陰で先程の尚の時雨に対する痴態も、氷雨との間に流れた居心地の悪い雰囲気も薄まりつつある。
消えやしないのは分かっているが、この場を逃れられれば、もうそれでいい。
だって、家に帰って一生、この人達を合わなければいいだけだ。
いや、あと五日もすれば嫌でもそうなる。
「わかり易すぎる嘘は頂けないと思う」
「お前、要所要所でオレのこと諭すよな。悪尚のくせに」
「グランピングは豪華キャンプのこと。持ち物不要。食材不要でふらっと行ける。翠雨に誘われて困っている」
と氷雨があくびをしながら言う。
「何で、困るんだよ」
翠雨が匍匐前進で氷雨に近づき、腿の上に手を起くと爪を立てた。
まるでさっきの白猫のようだ。
「だって、襲う気だろ」
氷雨はその手を払いながらつれなく言う。
「お、襲うわけ……ねえだろ」
翠雨がうつむき、氷雨は腕組みして面倒くさそうな顔をした。
こういうときこそ、助け舟を出して欲しい時雨はすやすやと眠っている。
「だったら、時雨と悪尚も一緒なら、行ってやってもいい」
落ち込ませすぎたと思ったのか、氷雨の方が出さなくてもいい助け舟を出してくれた。
「やったー。悪尚。これ、見ろよ!いい感じだろ!」
確かに見せられた画像はすごいの一言だ。
満天の星空に外国映画で見るような白いテントが張られ、中には豪華なベット。ランプも洒落ている。
「いや、俺……」
遊んでいる場合じゃない。
ナイフさえ準備できれば、後は実行のみ。
一人になってシュミレーションして気持ちを整えてって大事な時期なのに、なんでキャンプ……じゃなく、グランピングなんか。
すると、翠雨が尚の肩を抱く。そして、無理やり蚊帳をくぐらされ外に出された。
「起きたか、悪尚」
でも、声は尖っている。
ご機嫌斜め?
酔って記憶を飛ばした後、何かやらかしたんだろうか。
にしても、本当に翠雨が来てくれてよかった。
尚は身体を起こし、帯が無いせいではだけそうになる浴衣の前合わせの部分をきゅっと掴んだ。
そして、思う。
さっぱり解らないと。
どうして、俺はパンツを履いてないんだ。
酔って脱ぐ癖があるなら、もう、金輪際酒は飲まないようにしないと。
嫌な夢も見たし。
それに、時雨にも変なことを……。
思考がぐるぐるしそうになっていると、翠雨はあぐらをかいて座っている氷雨にぴったりくっつくようにして隣にごろりと横たわって、でも氷雨に軽く突き飛ばされて蚊帳の端を巻き込みながらごろっと転がり、また戻ってくる。
まるで二人はじゃれ合っているみたいだ。
「悪尚ってカレンダーアプリって使っている?共有できるタイプのやつ」
「いや、特には」
「なら、入れといて。これな」
翠雨は氷雨を挟んで腕を伸ばしてきて尚に携帯画面を見せアプリをカツカツと突く。
「……何故?」
すると、どうして馬鹿馬鹿しいことを聞くんだ、あ、お前馬鹿なのか?という顔を翠雨がした。
「予定合わせるのに便利だろうが。花火大会行きたいです。うな重食べたいです。バーベキューやりたいです。川釣りもしたいです。グランピングもって昨晩言ってたぞ」
「絶対嘘だし。だって、グランピングって言葉の意味が分からない」
翠雨の明るさのお陰で先程の尚の時雨に対する痴態も、氷雨との間に流れた居心地の悪い雰囲気も薄まりつつある。
消えやしないのは分かっているが、この場を逃れられれば、もうそれでいい。
だって、家に帰って一生、この人達を合わなければいいだけだ。
いや、あと五日もすれば嫌でもそうなる。
「わかり易すぎる嘘は頂けないと思う」
「お前、要所要所でオレのこと諭すよな。悪尚のくせに」
「グランピングは豪華キャンプのこと。持ち物不要。食材不要でふらっと行ける。翠雨に誘われて困っている」
と氷雨があくびをしながら言う。
「何で、困るんだよ」
翠雨が匍匐前進で氷雨に近づき、腿の上に手を起くと爪を立てた。
まるでさっきの白猫のようだ。
「だって、襲う気だろ」
氷雨はその手を払いながらつれなく言う。
「お、襲うわけ……ねえだろ」
翠雨がうつむき、氷雨は腕組みして面倒くさそうな顔をした。
こういうときこそ、助け舟を出して欲しい時雨はすやすやと眠っている。
「だったら、時雨と悪尚も一緒なら、行ってやってもいい」
落ち込ませすぎたと思ったのか、氷雨の方が出さなくてもいい助け舟を出してくれた。
「やったー。悪尚。これ、見ろよ!いい感じだろ!」
確かに見せられた画像はすごいの一言だ。
満天の星空に外国映画で見るような白いテントが張られ、中には豪華なベット。ランプも洒落ている。
「いや、俺……」
遊んでいる場合じゃない。
ナイフさえ準備できれば、後は実行のみ。
一人になってシュミレーションして気持ちを整えてって大事な時期なのに、なんでキャンプ……じゃなく、グランピングなんか。
すると、翠雨が尚の肩を抱く。そして、無理やり蚊帳をくぐらされ外に出された。
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