249 / 250
幼い魔法少女たちのお茶会と、プロローグのエピローグ
しおりを挟む
スターネイルである多摩恵の家。
そこにはマリンとミカの姿があった。
「……なるほどのう。裏ではそのような事件が起きていたのじゃな」
「私もこの手紙を読むまでは知らない事が多かったけど……」
「…………ふん!」
イニーが消えてから二日後。
手紙が届いて一喜一憂している中、どうせ手紙が届いてるのだろうと思い、3人は集まった。
そんな中、マリンは不貞腐れていた。
目の前で灰となり、死んだ事をタラゴンに報告し、世の中に絶望しながらベッドの上で体育座りをしていた時に届いた手紙。
その時はイニーが生きている事に喜んだのだが、喜びは次第に怒りへと変わっていった。
「しかし、三人とも書かれている内容が結構違うのう」
「そっ、そうだね」
スターネイルは動揺を隠しながら答えた。
ミカの手紙には、これからも魔法少女としてがんばれと書かれており、スターネイルの手紙には、世話になったと書かれていた。
そしてマリンの手紙には……。
「何がちゃんと恋愛をしろよ! なんでふたりの手紙にはまた会いに行くと書かれているのに、私のには書いてないのよ!」
マリンはグビッとジュースを一気飲みすると、コップをテーブルの上に叩きつけた。
その反応のせいだろうにとミカは思うが、口には出さない。
「まあ、生きてはいるんだし、きっとマリンちゃんのところにも帰ってくるよ」
スターネイルは年上らしくマリンを諫めるが、実はスターネイルはイニーから2枚の手紙を貰っていた。
マリンにだけは見せるなと書かれた手紙には、マリンを普通の女の子にしてくれと書いてあった。
イニーも少なからず、マリンから貞操の危機を感じていたのだ。
どちらかと言えばマリン側の考えを持っているスターネイルは、手紙を読んで苦笑いした後に、手紙を隠した。
マリンにはもう少し落ち着いてもらい、迫るにしてもお淑やかにするように教育していこうと、スターネイルは考えている。
「次あった時は必ず……」
「やれやれじゃのう」
ずずずと音を立てながら、ミカはお茶を飲んだ。
呆れてはいるが、こんな風に話せる日常が嫌いではないのだ。
「ああ。そう言えばじゃが、わらわもついに強化フォームに至れたのじゃ」
「えっ!」
「本当!」
ミカの突然のカミングアウトに、スターネイルとマリンはかなり驚いた。
こんなに早くミカが強化フォームになれるとは思っていなかったマリンは危機感を感じ、後でもっと訓練しようと心に決めた。
スターネイルは強化フォームになった魔法少女が増えた事に対する、純粋な驚きのみだ。
「ふふふ。これでマリンだけとは言わせないのじゃ!」
「喜んでいるところ悪いけど、ネイルも強化フォームになれるわよ」
「なんと! お主もか!」
強化フォームになれる魔法少女が、こうもそろう事はまずない。
ランカーならありえるが、ここに居るのはスターネイルを除いて、1年も魔法少女をやっていない者たちだけだ。
「あははは」
スターネイルは乾いた笑みを浮かべる。
まだ世間には知られていないが、スターネイルは世界で初めてシミュレーション中に強化フォームへ至った魔法少女だ。
本人としてはまことに遺憾であり、この事実を無かった事にしたい。
強化フォームは魔法少女にとって特別なものだ。
この事について、スターネイルはまだ根に持っている。
「そう考えると、日本の未来は安泰じゃのう」
「他の国はランカーにもかなりの被害が出ているし、私たちにも出撃依頼は来るでしょうね」
滅亡の危機は去ったが、これから先、人類にとって辛い時代が到来する。
人は勿論、建物にも深刻な被害が出ている。
「その内ネイルにもランカーにならないかって誘いが来るかもね」
「あはは。そんな事はあり得ないよ」
マリンはテーブルに腕を乗せて笑う。
そんな時、スターネイルの端末が鳴った。
スターネイルはふたりに断ってから端末を見ると、顔から表情が抜けた。
「どうしたのじゃ?」
「アロンガンテさんから、今回の功績を鑑みて、ランカー候補にならないかってメールが……」
喜んで良いの分からないスターネイルは、ただメールの内容を何度か読み直した。
日本に新たなランカーが誕生するのも、そう遠くないだろう。
まだまだ先は暗いが、日本の魔法少女たちの未来はきっと明るい…………のかもしれない。
1
日本がある世界とは違う世界の、とある屋敷の地下。
光を取り込む窓もなく、床に描かれた魔法陣だけが微かに光る。
外では雨が降り注ぎ、雷が鳴っているので、もしも地下で何が起きても、気付く人は誰も居ないだろう。
「これで……よし」
黒く長い髪を肩から垂らした少女は、自分で描いた魔法陣を隅から隅まで確認する。
少女が描いたのは、この世界では禁忌とされている、悪魔を召喚する魔法陣だ。
悪魔は命を対価にすることで、大いなる力を与えると言われている。
つまり、召喚に成功したら最後、少女は長くは生きられない。
それでも少女は、悪魔に縋るしかない状況に陥っていた。
(どうせ殺されるのでしたら……)
少女の家はこの世界では上流階級であり、相応の力と責任が伴う。
なのに、少女はいわゆる落ちこぼれであった。
「アインリディス・ガラディア・ブロッサムの名の下に乞い願わん。深淵より抜け出しし者よ。契約と対価の鎖を結ばん」
詠唱すると、魔法陣から巨大な門がせり上がってきた。
引き返すことは、もう出来ない。
少女は震える手足を気合いで捩じ伏せ、ゆっくりと開き始めた門を見つめる。
目映い光が門から溢れ、少女は目を細めてしまう。
こつん。こつん。足音が門の中から聞こえ始める。
そして現れたのは白いローブ姿をした何かだった。
フードを被っていても、本来なら顔の輪郭位なら見える筈なのに、顔があるべき場所は暗闇になっている。
「あなたが……悪魔?」
少女は恐怖で今にも座り込みたいが、なんとか声を振り絞って気丈に声を出す。
悪魔に弱味を決して見せてはいけないと知っているから。
白いフードの何者かはただじっと佇んでいた。
少女はどうすれば良いのか分からず、じっと待つ。
すると、ようやく白いローブは口を開いた。
「そうです。私がアクマです」
白いローブ…………イニーの受難はまたまだ続くのであった。
そこにはマリンとミカの姿があった。
「……なるほどのう。裏ではそのような事件が起きていたのじゃな」
「私もこの手紙を読むまでは知らない事が多かったけど……」
「…………ふん!」
イニーが消えてから二日後。
手紙が届いて一喜一憂している中、どうせ手紙が届いてるのだろうと思い、3人は集まった。
そんな中、マリンは不貞腐れていた。
目の前で灰となり、死んだ事をタラゴンに報告し、世の中に絶望しながらベッドの上で体育座りをしていた時に届いた手紙。
その時はイニーが生きている事に喜んだのだが、喜びは次第に怒りへと変わっていった。
「しかし、三人とも書かれている内容が結構違うのう」
「そっ、そうだね」
スターネイルは動揺を隠しながら答えた。
ミカの手紙には、これからも魔法少女としてがんばれと書かれており、スターネイルの手紙には、世話になったと書かれていた。
そしてマリンの手紙には……。
「何がちゃんと恋愛をしろよ! なんでふたりの手紙にはまた会いに行くと書かれているのに、私のには書いてないのよ!」
マリンはグビッとジュースを一気飲みすると、コップをテーブルの上に叩きつけた。
その反応のせいだろうにとミカは思うが、口には出さない。
「まあ、生きてはいるんだし、きっとマリンちゃんのところにも帰ってくるよ」
スターネイルは年上らしくマリンを諫めるが、実はスターネイルはイニーから2枚の手紙を貰っていた。
マリンにだけは見せるなと書かれた手紙には、マリンを普通の女の子にしてくれと書いてあった。
イニーも少なからず、マリンから貞操の危機を感じていたのだ。
どちらかと言えばマリン側の考えを持っているスターネイルは、手紙を読んで苦笑いした後に、手紙を隠した。
マリンにはもう少し落ち着いてもらい、迫るにしてもお淑やかにするように教育していこうと、スターネイルは考えている。
「次あった時は必ず……」
「やれやれじゃのう」
ずずずと音を立てながら、ミカはお茶を飲んだ。
呆れてはいるが、こんな風に話せる日常が嫌いではないのだ。
「ああ。そう言えばじゃが、わらわもついに強化フォームに至れたのじゃ」
「えっ!」
「本当!」
ミカの突然のカミングアウトに、スターネイルとマリンはかなり驚いた。
こんなに早くミカが強化フォームになれるとは思っていなかったマリンは危機感を感じ、後でもっと訓練しようと心に決めた。
スターネイルは強化フォームになった魔法少女が増えた事に対する、純粋な驚きのみだ。
「ふふふ。これでマリンだけとは言わせないのじゃ!」
「喜んでいるところ悪いけど、ネイルも強化フォームになれるわよ」
「なんと! お主もか!」
強化フォームになれる魔法少女が、こうもそろう事はまずない。
ランカーならありえるが、ここに居るのはスターネイルを除いて、1年も魔法少女をやっていない者たちだけだ。
「あははは」
スターネイルは乾いた笑みを浮かべる。
まだ世間には知られていないが、スターネイルは世界で初めてシミュレーション中に強化フォームへ至った魔法少女だ。
本人としてはまことに遺憾であり、この事実を無かった事にしたい。
強化フォームは魔法少女にとって特別なものだ。
この事について、スターネイルはまだ根に持っている。
「そう考えると、日本の未来は安泰じゃのう」
「他の国はランカーにもかなりの被害が出ているし、私たちにも出撃依頼は来るでしょうね」
滅亡の危機は去ったが、これから先、人類にとって辛い時代が到来する。
人は勿論、建物にも深刻な被害が出ている。
「その内ネイルにもランカーにならないかって誘いが来るかもね」
「あはは。そんな事はあり得ないよ」
マリンはテーブルに腕を乗せて笑う。
そんな時、スターネイルの端末が鳴った。
スターネイルはふたりに断ってから端末を見ると、顔から表情が抜けた。
「どうしたのじゃ?」
「アロンガンテさんから、今回の功績を鑑みて、ランカー候補にならないかってメールが……」
喜んで良いの分からないスターネイルは、ただメールの内容を何度か読み直した。
日本に新たなランカーが誕生するのも、そう遠くないだろう。
まだまだ先は暗いが、日本の魔法少女たちの未来はきっと明るい…………のかもしれない。
1
日本がある世界とは違う世界の、とある屋敷の地下。
光を取り込む窓もなく、床に描かれた魔法陣だけが微かに光る。
外では雨が降り注ぎ、雷が鳴っているので、もしも地下で何が起きても、気付く人は誰も居ないだろう。
「これで……よし」
黒く長い髪を肩から垂らした少女は、自分で描いた魔法陣を隅から隅まで確認する。
少女が描いたのは、この世界では禁忌とされている、悪魔を召喚する魔法陣だ。
悪魔は命を対価にすることで、大いなる力を与えると言われている。
つまり、召喚に成功したら最後、少女は長くは生きられない。
それでも少女は、悪魔に縋るしかない状況に陥っていた。
(どうせ殺されるのでしたら……)
少女の家はこの世界では上流階級であり、相応の力と責任が伴う。
なのに、少女はいわゆる落ちこぼれであった。
「アインリディス・ガラディア・ブロッサムの名の下に乞い願わん。深淵より抜け出しし者よ。契約と対価の鎖を結ばん」
詠唱すると、魔法陣から巨大な門がせり上がってきた。
引き返すことは、もう出来ない。
少女は震える手足を気合いで捩じ伏せ、ゆっくりと開き始めた門を見つめる。
目映い光が門から溢れ、少女は目を細めてしまう。
こつん。こつん。足音が門の中から聞こえ始める。
そして現れたのは白いローブ姿をした何かだった。
フードを被っていても、本来なら顔の輪郭位なら見える筈なのに、顔があるべき場所は暗闇になっている。
「あなたが……悪魔?」
少女は恐怖で今にも座り込みたいが、なんとか声を振り絞って気丈に声を出す。
悪魔に弱味を決して見せてはいけないと知っているから。
白いフードの何者かはただじっと佇んでいた。
少女はどうすれば良いのか分からず、じっと待つ。
すると、ようやく白いローブは口を開いた。
「そうです。私がアクマです」
白いローブ…………イニーの受難はまたまだ続くのであった。
10
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!


最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる