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魔法少女と馬鹿な大人
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クラリッサさんの武器。
アクマが2丁の銃と言うので、スターネイルと同じく拳銃サイズだと思っていたのだが、そもそもが違った。
銃身はおよそ1000ミリで、形状的には最早スナイパーライフルだ。
此処がそこそこ広い個室でなければ出すことは出来なかっただろう。
なんとも男心を擽るフォルムをしているだけではなく、なんと変形合体までする。
グリントさんと仲が良さそうに思ったが、これのせいだろう。
見て触れると言うなら是非触りたいが、ここで頷くのは負けたな気がする。
だが……この機会を逃せば、次はないだろう。
「それで、どうなの?」
「…………良いでしょう」
アクマの映像だけでも揺れていた心が、実物を前にして折れてしまった。
魔法があるのに変形などのギミックは必要ないと思われるかもしれない。
だが、こういったモノからしか得られない栄養があると俺は思う。
「やっぱり……って、良いの!」
気持ちは分かるが、実質タダで触れるなら俺の顔位安いものだ。
「先払いでお願いします」
「良いけど……はい」
「少し弄っても良いですか?」
「構わないけど、どうやって?」
普通なら他人の武器を使ったり、弄くったりは出来ない。
正確には、武器の機能を十全に使う事が出来ないのだが、俺には裏技がある。
本人に了承してもらって、とある魔法を使えば、武器の能力を使う程度のことは出来る。
「接続」
「えっ? ちょっ! ええっ!」
武器とクラリッサさんの接続を保ったまま、俺の魔力で染め上げる。
それから10分程、銃のギミックを堪能させてもらった。
剣や魔法も良いが、銃にも憧れてしまうな。
前線で撃つのも良いし、後方でデカイのを撃つのも良い。
少しクラリッサさんが煩かったが、ちゃんと承知してもらっているので無視だ。
「ありがとうございました。お返しします」
「う、うん。……いや、一体全体どういう事よ? なんで私の武器を操れるわけ?」
「そういう魔法なので」
使うのはニ度目だが、この魔法は特殊だがらな。
俺単体だと使えない魔法だし。
「魔法って……いえ、あんな治療をやってのけてるのだから、常識に当てはめない方が良いわね」
「見ている分には面白かったが、どんな感じだったんだい?」
「微々たる量だけど、何度も無理矢理魔力を引っ張り出されてたわ。その度に変形させてたから、私の魔力を使って動かしてたんじゃない?」
その通りだ。
なので頷いておいた。
「だそうよ」
「ふむ。一応報告案件だが、イニーの事だし別にいいか」
「それより、約束を守ったんだから、そのフードを脱ぎなさい!」
別に構わないが、こう言われると断りたくなってしまう。
約束した手前ちゃんと脱ぐが、逆らいたくもある。
「あら……なるほどねぇ。噂通りって事?」
「どの噂かは知らないが。その通りだと答えておこう」
全く話が見えてこないが、どういうことだろうか?
「綺麗な顔立ちなのに、これじゃあねぇ。あら、もちもちね」
「ほうどれどれ」
何故かクラリッサさんは頬をムニムニとし始め、グリントさんが便乗する。
伊達に若い身体で温泉に入り浸っていないからな。
肌質は我ながら素晴らしいものだと自負している。
だからってこうも弄られるのは、辛いものがある。
「ふぁの?」
「……ああ、ごめんね。これは魔性の肌ね。いくらさわっても飽きそうにないわ。これも何か関係あるの?」
「いや。おそらくタラゴンの家にある温泉のせいだろう。タラゴンも肌がもちもちで綺麗だからな」
なんだが女性らしい会話になり始めてしまったか、一体いつになったら次の魔法局に向かえるのだろうか?
30分から1時間もあれば終わるが、もう直ぐ16時になる。
予定時間である17時半にはギリギリだ。
既に魔力は回復しているが、この状態で大規模の回復魔法使うのは厳しい。
いざとなれば、アルカナを解放して魔法局一帯に魔法を使えばなんとかなるか。
「連絡はまだ来ないのでしょうか?」
「そうね。残りの2局……此処もだけど、本来なら明日の予定だったから仕方ないっちゃ仕方ないけど……」
いっその事無視して帰ってもいいが、建前上ジャンヌさんの代わりで来ているので、さすがに駄目だろう。
副局長には飛ばすとは言ったが、あくまでも言葉のあやだ。
本当に飛ばせばどんな嫌味を言われることやら……。
今日中にやると言ってしまった手前、今更明日にするとも言えない。
連絡があるまで待つしかないのだ。
「とは言っても待つのは性に合わないし、先に移動してしまうとするか。全ての準備が終わってないとしても、数部屋分は終わっているだろうからな」
「それもそうね。夕飯のために17時半には帰りたいみたいだし、これまでの時間を考えてもそろそろ始めないと間に合わないものね」
奥の手を使わないで済むなら、そっちの方が良いからな。
流石の俺もケーキは食べ終えているので、さっさとテレポーターに向かい、次の魔法局であるダーウィンへと跳ぶ。
「慌ただしいな……何かあったのか?」
「何かあれば私に連絡があるはずだけど……ちょっと待ってて」
ダーウィンの魔法局に来たものの、テレポーター室と言うよりは、魔法局全体が妙に慌ただしかった。
対処できない魔物が現れたのならば、待機しているクラリッサさんに連絡が行くはずだが、何もなかった。
俺とグリントさんは完全に部外者なので、今はクラリッサさんが帰って来るまで壁際に寄って待つしかない。
「待たせたわね。どうやら魔物じゃなくて指定討伐種が数人暴れているみたいなの。ダーウィン魔法局内で処理しようとしたけど、逆にやられちゃったみたい。そこに治療の件だなんだとごたごたしている内に、連絡どころではなくなったみたいね」
やれやれと首を振るクラリッサさんだが、杜撰以外の言葉が出ない。
何か問題が起きた場合はマニュアル通りに手順を踏むのが妥当だが、それすらできていないのだ。
ミグーリヤや中国は俺が見た範囲ではしっかりと対応していた。
他国に協力を求めたり、丁度居たフルールさんに協力を求めたりしていた。
復興や魔物で通常より忙しいとはいえ、さっさとクラリッサさんに連絡取れば良いのに……。
おかげで俺の予定がストップだ。
「なるほど。もしかして、クラリッサは此処の局長と仲が悪いのか?」
「……そうね」
また魔法少女と魔法局の確執か。
「仕方ないが、ここは私が出るとしよう。殺すだけなら私の方が適任だろうからな。その代わりクラリッサはイニーを連れて治療の方を進めてくれ。私では他国の魔法局内を自由に動けないからね」
「了解よ。今回の事は厳重に注意しておくわ」
「そうしてくれ」
何故行く先々で事件が起きるのだろうか?
今回の件はダーウィン魔法局の局長が、私欲に駈られなければ防げたことだが、馬鹿は死んでも治らないのだ。
クラリッサさん側にも問題があるかもしれないが、責務を果たしていない魔法局側の過失だ。
護衛など要らないと思ったが、居て良かった。
「それと、もし治療が滞るようなら次に行ってしまっても構わないよ。時間に間に合わなかった場合、私も怒られる可能性があるからね」
「分かりました」
グリントさんは局長の所に行ってくると残して、テレポーター室を出て行った。
「さてと私たちも移動するとしましょう」
「よろしくお願いします」
忙しなくしている職員たちを避けるようにしながら目的の部屋に向かうが、何やら怒鳴り声が聞こえてきた。
「そこをなんとか!」
「確かに動けない程の怪我じゃないけど、無理をして死ぬのは私たちなのよ? それに、治療するからって集められたのに、話が違うんじゃない?」
「今連絡を取っているようなので、先に討伐の方をお願いします! 治療の方はその間に準備しておきますので」
「だから、先に治療してからでしょう? それに待機しているランカーが居るんじゃないの?」
…………あららら。
「クラリッサさん」
「……ごめんなさいね。人ってそう簡単に割り切れないのよ」
俺に向けて謝罪したクラリッサさんは舌打ちをしてから言い合いをしているふたりの所に向かっていった。
「おい! 糞野郎! さっさと局長の所に戻りな! 私の代わりに優秀なのが動いているから、もう大丈夫よ」
「お前は!」
「いいから行きな! こっちはお前たちのせいで予定が詰まってんのよ!」
クラリッサさんは魔法少女と話していた職員を追い払ってしまった。
「助かりました」
「良いのよ。それより部屋に戻るのよ。治療役の魔法少女は連れてきたから直ぐに治るわ」
「……ありがとうございます」
「良いのよ。直ぐに行くから、部屋で待ってなさい」
言い寄られていた魔法少女はクラリッサさんに頭を下げて離れて行った。
腕を吊っているって事は罅か骨折か。
そんな魔法少女すら駆り出そうとするのだから、亀裂が入るのは当然か。
「これは後で本部に伝えといた方が良さそうね……それじゃあ行きましょう」
「分かりました」
落ち込んでいるクラリッサさんに付いていき、患者が収容されている部屋に入る。
「静かになさい! 直ぐに治療を開始するから、静かに座っていなさい!」
クラリッサさんの声であっという間に静かになったので、これまでと同じ要領で魔法を使う。
やはり範囲回復が出来るのは楽で良い。
「終わりました。次に行きましょう」
「ありがとう。終わったから後は魔法局の指示に従いなさい! それとして、理不尽な命令を出された魔法少女や職員は本部に報告するように!」
こうやって指示を出しているのを見ると、やはりランカーは面倒だと思ってしまうな。
貰った資料ではダーウィンの患者が多いが、この様子だと動ける魔法局関係者は駆り出されていそうだな。
流石に怪我してる一般人を帰らすなんて、馬鹿なことをしてないと思うが……とにかく、さっさと済ませてしまおう。
「グリントも言ってたけど、居る分だけ治してくれれば良いわ。何か言われてもこっちで対応するから気にしないでね」
「はい」
手さえ出してこなければ、俺から何も言うことは無いからな。
テキパキと移動と回復魔法を繰り返し、治療をしていく。
何度か言い合いをしている現場に遭遇したが、クラリッサさんが一喝して追い払った。
なんとか指定されてる部屋を回り終えた頃、グリントさんが帰ってきた。
「待たせたね。順調に進んでいるようでなによりだ」
「そんな訳ないでしょ。馬鹿が勝手な事をしていたから、見かける度に追い払っていたのよ」
「どうやら根深い問題があるみたいだね。指定討伐種の魔法少女も、元は此処の魔法少女だったみたいだ。証拠隠滅のためにも、ごたごたしていたのだろう」
「殺したの?」
「いや。交渉して一旦日本で預かることにした。まだ未遂だったからね」
(グリントさんの方は何があったんだ?)
『ちょいとややこしい事情があるけど、魔法少女3人が叛乱したって感じだね。この魔法局は魔法少女と魔法局の信頼関係が全く回復せず、遂に一部の魔法少女側がキレたみたい』
行くとこまで行ってしまったパターンか。
これは物理的に、魔法局側の人間の首が飛ぶかな?
『グリントが言った通りほぼ未遂だから、死者や怪我人は居ないよ。ただ、本来なら結構重い罪になるけど、そこはグリントが妖精局とアロンガンテに掛け合ったみたいだね。魔法少女たちはお咎めなしになると思うよ』
3名か。多い少ないで語ることではないが、よく決心したものだ。
死者を出そうとは思っていないだろが、それでも重罪として判決が下される可能性はある。
もしもこのままダーウィン魔法局内で処理できていた場合、3名は殺されていた可能性もあっただろう。
その前に魔法局本部が動くとは思うが、隠蔽されていると捜査は困難となる。
ただでさえ無い時間を無駄にされたのは遺憾だが、後はグリントさんなりクラリッサさんなりがどうにかするだろう。
「そう。ダーウィンの魔法局は首を挿げ替える事になりそうね。全く、馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、これ程とは思わなかったわ……次に行きましょう」
「連絡はあったのかい?」
「とっくにね。ついでに本部の副局長から詫びのメールがあったわ」
「ならとっとと行くとしよう。時間もギリギリだからね」
16時45分。
治療しましたからの帰りますなら良いが、報告などを考えればギリギリの時間だ。
次が最後だし、やむを得ない奥の手であるアルカナを使ってしまおう。
「グリントさん。時間がないので、次は魔法局ごとやろうと思います」
「……そうか。それは無理のない方法なんだよね?」
「はい」
「いや、魔法局をって、どれだけ広いと…………そう言えば都市を丸ごとやってたわね。何か手を回しておくことはある?」
「騒がないように伝えといてもらえれば。魔法の特性上疲労も取れるので、突然の事態に驚く方も居ると思うので」
「分かったわ」
さて、少し事件があったが、次で最後だ。
アクマが2丁の銃と言うので、スターネイルと同じく拳銃サイズだと思っていたのだが、そもそもが違った。
銃身はおよそ1000ミリで、形状的には最早スナイパーライフルだ。
此処がそこそこ広い個室でなければ出すことは出来なかっただろう。
なんとも男心を擽るフォルムをしているだけではなく、なんと変形合体までする。
グリントさんと仲が良さそうに思ったが、これのせいだろう。
見て触れると言うなら是非触りたいが、ここで頷くのは負けたな気がする。
だが……この機会を逃せば、次はないだろう。
「それで、どうなの?」
「…………良いでしょう」
アクマの映像だけでも揺れていた心が、実物を前にして折れてしまった。
魔法があるのに変形などのギミックは必要ないと思われるかもしれない。
だが、こういったモノからしか得られない栄養があると俺は思う。
「やっぱり……って、良いの!」
気持ちは分かるが、実質タダで触れるなら俺の顔位安いものだ。
「先払いでお願いします」
「良いけど……はい」
「少し弄っても良いですか?」
「構わないけど、どうやって?」
普通なら他人の武器を使ったり、弄くったりは出来ない。
正確には、武器の機能を十全に使う事が出来ないのだが、俺には裏技がある。
本人に了承してもらって、とある魔法を使えば、武器の能力を使う程度のことは出来る。
「接続」
「えっ? ちょっ! ええっ!」
武器とクラリッサさんの接続を保ったまま、俺の魔力で染め上げる。
それから10分程、銃のギミックを堪能させてもらった。
剣や魔法も良いが、銃にも憧れてしまうな。
前線で撃つのも良いし、後方でデカイのを撃つのも良い。
少しクラリッサさんが煩かったが、ちゃんと承知してもらっているので無視だ。
「ありがとうございました。お返しします」
「う、うん。……いや、一体全体どういう事よ? なんで私の武器を操れるわけ?」
「そういう魔法なので」
使うのはニ度目だが、この魔法は特殊だがらな。
俺単体だと使えない魔法だし。
「魔法って……いえ、あんな治療をやってのけてるのだから、常識に当てはめない方が良いわね」
「見ている分には面白かったが、どんな感じだったんだい?」
「微々たる量だけど、何度も無理矢理魔力を引っ張り出されてたわ。その度に変形させてたから、私の魔力を使って動かしてたんじゃない?」
その通りだ。
なので頷いておいた。
「だそうよ」
「ふむ。一応報告案件だが、イニーの事だし別にいいか」
「それより、約束を守ったんだから、そのフードを脱ぎなさい!」
別に構わないが、こう言われると断りたくなってしまう。
約束した手前ちゃんと脱ぐが、逆らいたくもある。
「あら……なるほどねぇ。噂通りって事?」
「どの噂かは知らないが。その通りだと答えておこう」
全く話が見えてこないが、どういうことだろうか?
「綺麗な顔立ちなのに、これじゃあねぇ。あら、もちもちね」
「ほうどれどれ」
何故かクラリッサさんは頬をムニムニとし始め、グリントさんが便乗する。
伊達に若い身体で温泉に入り浸っていないからな。
肌質は我ながら素晴らしいものだと自負している。
だからってこうも弄られるのは、辛いものがある。
「ふぁの?」
「……ああ、ごめんね。これは魔性の肌ね。いくらさわっても飽きそうにないわ。これも何か関係あるの?」
「いや。おそらくタラゴンの家にある温泉のせいだろう。タラゴンも肌がもちもちで綺麗だからな」
なんだが女性らしい会話になり始めてしまったか、一体いつになったら次の魔法局に向かえるのだろうか?
30分から1時間もあれば終わるが、もう直ぐ16時になる。
予定時間である17時半にはギリギリだ。
既に魔力は回復しているが、この状態で大規模の回復魔法使うのは厳しい。
いざとなれば、アルカナを解放して魔法局一帯に魔法を使えばなんとかなるか。
「連絡はまだ来ないのでしょうか?」
「そうね。残りの2局……此処もだけど、本来なら明日の予定だったから仕方ないっちゃ仕方ないけど……」
いっその事無視して帰ってもいいが、建前上ジャンヌさんの代わりで来ているので、さすがに駄目だろう。
副局長には飛ばすとは言ったが、あくまでも言葉のあやだ。
本当に飛ばせばどんな嫌味を言われることやら……。
今日中にやると言ってしまった手前、今更明日にするとも言えない。
連絡があるまで待つしかないのだ。
「とは言っても待つのは性に合わないし、先に移動してしまうとするか。全ての準備が終わってないとしても、数部屋分は終わっているだろうからな」
「それもそうね。夕飯のために17時半には帰りたいみたいだし、これまでの時間を考えてもそろそろ始めないと間に合わないものね」
奥の手を使わないで済むなら、そっちの方が良いからな。
流石の俺もケーキは食べ終えているので、さっさとテレポーターに向かい、次の魔法局であるダーウィンへと跳ぶ。
「慌ただしいな……何かあったのか?」
「何かあれば私に連絡があるはずだけど……ちょっと待ってて」
ダーウィンの魔法局に来たものの、テレポーター室と言うよりは、魔法局全体が妙に慌ただしかった。
対処できない魔物が現れたのならば、待機しているクラリッサさんに連絡が行くはずだが、何もなかった。
俺とグリントさんは完全に部外者なので、今はクラリッサさんが帰って来るまで壁際に寄って待つしかない。
「待たせたわね。どうやら魔物じゃなくて指定討伐種が数人暴れているみたいなの。ダーウィン魔法局内で処理しようとしたけど、逆にやられちゃったみたい。そこに治療の件だなんだとごたごたしている内に、連絡どころではなくなったみたいね」
やれやれと首を振るクラリッサさんだが、杜撰以外の言葉が出ない。
何か問題が起きた場合はマニュアル通りに手順を踏むのが妥当だが、それすらできていないのだ。
ミグーリヤや中国は俺が見た範囲ではしっかりと対応していた。
他国に協力を求めたり、丁度居たフルールさんに協力を求めたりしていた。
復興や魔物で通常より忙しいとはいえ、さっさとクラリッサさんに連絡取れば良いのに……。
おかげで俺の予定がストップだ。
「なるほど。もしかして、クラリッサは此処の局長と仲が悪いのか?」
「……そうね」
また魔法少女と魔法局の確執か。
「仕方ないが、ここは私が出るとしよう。殺すだけなら私の方が適任だろうからな。その代わりクラリッサはイニーを連れて治療の方を進めてくれ。私では他国の魔法局内を自由に動けないからね」
「了解よ。今回の事は厳重に注意しておくわ」
「そうしてくれ」
何故行く先々で事件が起きるのだろうか?
今回の件はダーウィン魔法局の局長が、私欲に駈られなければ防げたことだが、馬鹿は死んでも治らないのだ。
クラリッサさん側にも問題があるかもしれないが、責務を果たしていない魔法局側の過失だ。
護衛など要らないと思ったが、居て良かった。
「それと、もし治療が滞るようなら次に行ってしまっても構わないよ。時間に間に合わなかった場合、私も怒られる可能性があるからね」
「分かりました」
グリントさんは局長の所に行ってくると残して、テレポーター室を出て行った。
「さてと私たちも移動するとしましょう」
「よろしくお願いします」
忙しなくしている職員たちを避けるようにしながら目的の部屋に向かうが、何やら怒鳴り声が聞こえてきた。
「そこをなんとか!」
「確かに動けない程の怪我じゃないけど、無理をして死ぬのは私たちなのよ? それに、治療するからって集められたのに、話が違うんじゃない?」
「今連絡を取っているようなので、先に討伐の方をお願いします! 治療の方はその間に準備しておきますので」
「だから、先に治療してからでしょう? それに待機しているランカーが居るんじゃないの?」
…………あららら。
「クラリッサさん」
「……ごめんなさいね。人ってそう簡単に割り切れないのよ」
俺に向けて謝罪したクラリッサさんは舌打ちをしてから言い合いをしているふたりの所に向かっていった。
「おい! 糞野郎! さっさと局長の所に戻りな! 私の代わりに優秀なのが動いているから、もう大丈夫よ」
「お前は!」
「いいから行きな! こっちはお前たちのせいで予定が詰まってんのよ!」
クラリッサさんは魔法少女と話していた職員を追い払ってしまった。
「助かりました」
「良いのよ。それより部屋に戻るのよ。治療役の魔法少女は連れてきたから直ぐに治るわ」
「……ありがとうございます」
「良いのよ。直ぐに行くから、部屋で待ってなさい」
言い寄られていた魔法少女はクラリッサさんに頭を下げて離れて行った。
腕を吊っているって事は罅か骨折か。
そんな魔法少女すら駆り出そうとするのだから、亀裂が入るのは当然か。
「これは後で本部に伝えといた方が良さそうね……それじゃあ行きましょう」
「分かりました」
落ち込んでいるクラリッサさんに付いていき、患者が収容されている部屋に入る。
「静かになさい! 直ぐに治療を開始するから、静かに座っていなさい!」
クラリッサさんの声であっという間に静かになったので、これまでと同じ要領で魔法を使う。
やはり範囲回復が出来るのは楽で良い。
「終わりました。次に行きましょう」
「ありがとう。終わったから後は魔法局の指示に従いなさい! それとして、理不尽な命令を出された魔法少女や職員は本部に報告するように!」
こうやって指示を出しているのを見ると、やはりランカーは面倒だと思ってしまうな。
貰った資料ではダーウィンの患者が多いが、この様子だと動ける魔法局関係者は駆り出されていそうだな。
流石に怪我してる一般人を帰らすなんて、馬鹿なことをしてないと思うが……とにかく、さっさと済ませてしまおう。
「グリントも言ってたけど、居る分だけ治してくれれば良いわ。何か言われてもこっちで対応するから気にしないでね」
「はい」
手さえ出してこなければ、俺から何も言うことは無いからな。
テキパキと移動と回復魔法を繰り返し、治療をしていく。
何度か言い合いをしている現場に遭遇したが、クラリッサさんが一喝して追い払った。
なんとか指定されてる部屋を回り終えた頃、グリントさんが帰ってきた。
「待たせたね。順調に進んでいるようでなによりだ」
「そんな訳ないでしょ。馬鹿が勝手な事をしていたから、見かける度に追い払っていたのよ」
「どうやら根深い問題があるみたいだね。指定討伐種の魔法少女も、元は此処の魔法少女だったみたいだ。証拠隠滅のためにも、ごたごたしていたのだろう」
「殺したの?」
「いや。交渉して一旦日本で預かることにした。まだ未遂だったからね」
(グリントさんの方は何があったんだ?)
『ちょいとややこしい事情があるけど、魔法少女3人が叛乱したって感じだね。この魔法局は魔法少女と魔法局の信頼関係が全く回復せず、遂に一部の魔法少女側がキレたみたい』
行くとこまで行ってしまったパターンか。
これは物理的に、魔法局側の人間の首が飛ぶかな?
『グリントが言った通りほぼ未遂だから、死者や怪我人は居ないよ。ただ、本来なら結構重い罪になるけど、そこはグリントが妖精局とアロンガンテに掛け合ったみたいだね。魔法少女たちはお咎めなしになると思うよ』
3名か。多い少ないで語ることではないが、よく決心したものだ。
死者を出そうとは思っていないだろが、それでも重罪として判決が下される可能性はある。
もしもこのままダーウィン魔法局内で処理できていた場合、3名は殺されていた可能性もあっただろう。
その前に魔法局本部が動くとは思うが、隠蔽されていると捜査は困難となる。
ただでさえ無い時間を無駄にされたのは遺憾だが、後はグリントさんなりクラリッサさんなりがどうにかするだろう。
「そう。ダーウィンの魔法局は首を挿げ替える事になりそうね。全く、馬鹿だ馬鹿だとは思ってたけど、これ程とは思わなかったわ……次に行きましょう」
「連絡はあったのかい?」
「とっくにね。ついでに本部の副局長から詫びのメールがあったわ」
「ならとっとと行くとしよう。時間もギリギリだからね」
16時45分。
治療しましたからの帰りますなら良いが、報告などを考えればギリギリの時間だ。
次が最後だし、やむを得ない奥の手であるアルカナを使ってしまおう。
「グリントさん。時間がないので、次は魔法局ごとやろうと思います」
「……そうか。それは無理のない方法なんだよね?」
「はい」
「いや、魔法局をって、どれだけ広いと…………そう言えば都市を丸ごとやってたわね。何か手を回しておくことはある?」
「騒がないように伝えといてもらえれば。魔法の特性上疲労も取れるので、突然の事態に驚く方も居ると思うので」
「分かったわ」
さて、少し事件があったが、次で最後だ。
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