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恋の後始末
凪がいない
しおりを挟む「澪ちゃん?」
「凪、凪が!凪がどこかに行っちゃった!
どうしよう、家にも学校にも友達の家にもいない!」
「どうしたの?どこへ行ったの凪ちゃん」
困惑する加奈子の顔、テーブル、床の順番に視線は移り変わっていた。
千鶴との甘やかな記憶は俄かに薄れていき、ある予感は確信へと変化していった。
「……凪、遠くに行っちゃった。加奈子、どうしよう」
自分の口から出た言葉が他人の言葉のように思えた。
凪は今、確かに私からかなり離れた場所にいる。
よく分からないけれど、今、凪がものすごく遠く感じる。
「落ち着いて。一緒に探そう?」
「探すって、でも、凪が行きそうな場所とか分からないんだよ私。姉失格だよ」
「急にどうしたの澪ちゃん。大丈夫だよ、きっと。
どこかにはいるよ」
こんな事態に陥って初めて、凪が普段どこへ遊びに行って誰と何をしているのかを、私は全然把握していないのだと思い知った。
突然視界が狭くなって、こめかみに緊張が走った。
私は本当に勘違いの大馬鹿野郎だった。
凪が長い間、総大くんと会っていないことにたった今気が付いた。
「凪ぃ……」
「澪ちゃん、泣かないで。凪ちゃんきっと、お友達の家にでもいるんじゃないかな」
突然、熱湯を浴びたように胸が熱くなって、私はむせび泣いた。
深い、やるせない悲しみが胸いっぱいに広がった。
とても寂しくて、行き場のない心細さが体を小さくさせる。
——ブーッ、ブーッ
その時、着ていたコートのポケットの中で、携帯の長い振動が体に伝わってきた。
曇った視界で画面を見ると、千鶴からの着信中だった。
すぐに通話を押し、私は鼻をすすりながら携帯を耳に当てた。
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