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恋の後始末
都合の良い解釈?
しおりを挟む「なんかさぁ~。お姉って千鶴さんと仲直りできてから、勘違いしてない?
世界中のみんながみんな、お姉たちみたいに幸せだと思ったら大間違いだよ」
「は?勘違い?誰が?私が?アンタ、私が幸せだから調子に乗ってるって、そう言いたいワケ?
それに何で私が幸せだって勝手に決め付けるのよ。アンタこそ勘違いしてるんじゃないの」
「あ?なにそれ。誰が1ヶ月も心配して色々世話したと思ってんの。誰に向かってそんな風に言ってんの。
恩知らずにも程が——」
「恩着せがましいのよ、そういうの。
あと話の論点ズレてるし、そもそも私はちょっと聞いてみただけで内容に深い意味は無——」
「ああそう!ようく分かった。それならアタシはもう何も言うことはないね。あとは自分で出来るでしょ。じゃあね、夜は友達と予定があるから」
ドアが閉まる音と濡れたタオルが床に叩き付けられた音がほぼ同時だった。
ああ……またやってしまった。
凪と喧嘩をするつもりは毛頭ないのに、どうしてこんな些細な論争でいつもすれ違うのだろう。
床に張り付いたタオルを手に取り、まだ拭かれていないキャリーバッグの車輪をタオルにくるむと、濁ったため息をついた。
入院してから色んな事が変化したんだって、そう思っていた。
音信不通だった千鶴と進展があったのを筆頭に、甲斐甲斐しく世話をしてくれた凪にも、10年分の思い遣りを感じていたのに。
何もかもが新しく変わって、良い方向へと向かっていってるんだって、そう思っていたのに。
もしかしたら、そんな妹の感情の機微に気付けもしない勘違い大馬鹿野郎の私の事だから、あの日の千鶴と過ごした夜の事でさえ、実は自分の都合良く解釈しているだけかもしれない。
あの日、キスをしたのだって、ただの成り行きとか、その場の雰囲気とか、ただの性欲のはけ口の導入部分だったとか、そんな部類のものだったのかもしれない。
何もかもが自分の理想通りに収束されてハッピーエンドだなんて、そんなのムシが良すぎるよね。
——ガタタタタッ
「ひっ!!」
妹との喧嘩によって、一気にネガティブ思考に頭を腐らせていると、突然キャリーバッグが膝の上で上下に振動した。
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