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恋の片道切符
特別な女性
しおりを挟む「君は……満月百合さん、ですか?」
千鶴はハンカチで顔をゴシゴシと擦りながら、その汚れの元凶である満月さんに言った。
「……はっ!
藤堂くんが私の名前を呼んでいる……これは何のドリームだろうか」
「……」
先ほどのカナブンの件で私が千鶴にした菩薩の微笑みを、そっくりそのままヤツがしている。
虫ケラを見下す黒い笑顔だ……。
一方の満月さんは、すっかりマイワールドに浸りながら独り言を公開していた。
「……はっ!藤堂くんが虫ケラを見下す黒い笑顔を私に向けている……。どうする、百合?1、『雌犬とお呼び付け下さい!と言う』2、『何でもいいからとりあえず踏んで下さい!と言う』3……」
「ち、千鶴、このイッちゃってる人は……?」
「はあ、恐らく高校時代の同級生でしょうか」
「へぇ~……」
しまった、『へぇ』以外のリアクションがとれない。
ここは気を取り直して……。
「アンタね、同級生に『恐らく』とか酷いでしょー」
「おやおや、妬いているのですね」
ズズイと私の側に寄ってきた千鶴に不覚にも心臓が跳ねたが、今はそれどころではないようだ。
「違うっつーの!
いちいちそんな風に言うな!」
未だに千鶴に見惚れている満月さんを余所に、私達は喋り続けた。
「まあ、僕は逐一他人の名前なんか記憶しませんが、彼女は特別でしたからね……」
「え」
——ズキン
特別……?
どういうこと?
「彼女は呪詛と思わしき文書や毛髪で編んだマフラーを高校の3年間毎日僕のロッカーに詰めてきた、最低最悪醜悪なストーカーです。あまつさえ僕の使い捨てた後のティッシュをゴミ箱から拾い漁ったり、自宅まで着いて来たりと……警察沙汰になる始末でしたよ。
全く、嫌でも名前を覚えざるを得なかったというか、人生の大汚点ですよね」
さっきの『ズキン』を返せ。
「藤堂くんがそこまで私のことを覚えてくれていただなんてっ……ああ、なんたる光栄!」
この人もこの人だ。
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