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少女の恋③
一緒の生活
しおりを挟むその言葉を最後に、玄関のドアは閉ざされた。
少年が階段を降りて行く音を、澪は静かに聞いていた。
旦那様を見送る新妻の気持ちとはこんな感じだろうか、そう想うと心臓が暴れ出してしまう。
澪はすっかり少年のお嫁さんになった気分でいた。
それも昨夜交わした約束がきっかけで、ついついその気になって鼻歌を鳴らしながらその辺の掃除をしてみた。
少年は冗談か本気なのか、澪と一緒に生活することを望んできたのだ。
上手くいくはずが無いそんな無謀な計画を、あの少年が望んだのだ。
この上ない幸せを噛み締め、澪は優雅な足取りで掃除機をカーペットの上で走らせた。
「お兄ちゃんの部屋って何もないな~。お掃除のしがいがないよ」
元々吸い込む塵も無い部屋は、几帳面というよりも潔癖に近かった。
澪は途端につまらなくなり、ソファの上にごろんと横になる。
ソファの端には黒いクッションがあった。
それをそっと抱き寄せてみた。
「何か……ドキドキするなぁ」
少年の匂いがするクッションを顔に埋めて澪は呟く。
このソファにはすぐに眠たくなる魔法がかかっているに違いない、そう思うと次第にまどろんできた。
日曜日はいつもより遅く目覚めるため、まだ眠いようだ。
少年を待つ以外に特にすることも無いので、澪は少しだけ寝ることにした。
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