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少女の恋③
あの子
しおりを挟む……そう言えば、母が入院していた頃に、一度だけ病院に出向いた事があった。
藤堂専属の医者に掛れば良いものを、母は庶民の病院に入院したいと言った。
母は父を愛しているから嫁いだに違いないが、昔から藤堂家そのものを忌み嫌っていた。
だけど、そのお陰で僕は発見する事が出来たんだ。
その時廊下で見掛けた女の子。
彼女はどこか母に似ていた。
僕は一目でその子に心を奪われた。
いつか病院の外で出会えたら、話をしてみたかった。
大人になったら、さぞ母に似るだろうに。
気になった僕は使用人にその子の素性を調べさせた。
その結果、色んな事が分かった。
その子の名前、年齢、家族構成、住んでいる場所、通っている学校、その子の現状を。
その子は今……
あの男と接触していると。
やっぱり許せない。
どこまで僕の物を奪えばお前は満足なんだ。
骨の髄まで吸い尽して、僕を殺すつもりか。
冗談じゃない。
そうなる前に、僕がお前を殺してやるよ。
母はお前を殺すと言った。
だけど今はもういない。
自分でやらなきゃいけない時だってある。
どんな物事でもだ。
さあ、お前に飲ませてやるよ。
羨望の毒薬を。
人を羨む事を何ひとつ知らないお前にも、味あわせてやるよ。
誰かを奪われる味を。
199X年7月某日
最愛の母が死んだ。
そして明日、あの子が死ぬ日。
君の墓標は綺麗に磨いてあげる。
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