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少女の恋③
最愛の母
しおりを挟む199X年7月某日
最愛の母が死んだ。
僕は発狂しすぎて嘔吐した。
ああ、分かっているさ。
全てはあの男のせいだ。
憎むべきは節操の無い父なのかもしれないが、母が最期まで愛した父を責められなかった。
だけど、母は逝くその時まであの男を憎んだに違いない。
そうに違いない。
他の女が孕んだあの男を憎んだ。
僕とお揃いの憎悪で、焼かれて灰になったに違いない。
あんな小さな箱に収まる母を、僕はもう見ていられない。
ああ、見ていられない。
もう終りだ。
世界中の人間が死ねばいいのに。
どうして母が死んでいて、他の人間がのうのうと生きていられるんだ。
それを考えただけで、あの男に付けられた火傷の痕が病む。
顔面の綺麗な部分と火傷の部分の境目が、真っ二つに裂かれそうだ。
むしろ分裂してしまえばいい。
勝手に分裂してくれないのなら、自分で切り裂いてしまいたい。
その断面の狭間を行き来して迷っている。
僕の顔は迷路のようだ。
僕はそんな自分が嫌いだ。
あの男が嫌いな事よりも、更に嫌いだ。
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