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少女の恋②

忘れていたら、好きになってあげましょうか

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「もしかして君は、その事を伝える為に僕に執着したんですか」


「えっと……それだけが理由じゃないけど、でも、やめてほしい。
お兄ちゃんにイジメとかしてほしくないもん」


「まあ、そこまで言うなら止めますよ。ただの暇潰しでしたから」


「あと!あとね、生き物を殺しちゃダメだよ!可哀想!」


「はい」


「それとね!タバコもダメ!
体に悪いんだよ!」


「はい」


「あとね、えっと、あと……
私と結婚して!」


「何故そうなるんですか」


途中までは素直に返事をしていた少年だったが、澪の突然の求婚には間の抜けた返事を返した。


「私、将来お兄ちゃんのお嫁さんになってあげる!」


「冗談はよして下さい。
君が大人になったら、僕の事なんて忘れていますよ」


「どうしてそうやって決めつけるの?」


「決め付けなどではありません。
僕はただ、そういった類の夢物語が嫌いなだけです」


「夢じゃないよ。
私はお兄ちゃんが好きだよ」


「……そうですか」


「ホントだよ」


「……もう帰って下さい。
そんな戯言ばかり言って。
少し、甘い顔をし過ぎましたね」


「……ホントだよ」


「いい加減にして下さい」


「嘘でもいいから、好きって言ってほしいな」


「これ以上、そんな発言は慎んで下さい。君はきっと忘れるに違いありませんよ」


「大人になっても、忘れないよ。
私はずっと、ずっと、大好きなままだよ。
絶対に忘れない」


「それじゃあ……忘れていたら、好きになってあげましょうか」


「意地悪だね」



この生き物は、どうしてこんなにも不可解なのだろうか。

少年は急に落ち込み始めた澪を見てそう思った。
さっきは突然求婚してきた癖に。

感情の無い自分の発言に、この生き物はたくさんの感情を示してくれる。

再び体中が気持悪い感覚に陥った。

『好きとは、どんなことだろうか』

ムスッと頬を膨らませる澪を見て、少年は思考を巡らせる。

『大好きとは、どんなことだろうか』

自分が知り得ないものを、この生き物は知っているのだろう。

ハリセンボンのように膨らんだ頬を見つめながら、少年は静かに口を開く。

  
 
 

 
 
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