333 / 399
少女の恋②
悪魔なんかじゃなかった
しおりを挟む次第に泣き声はゼイゼイとしたかすれ声に変化していき、みるみる内に疲弊していった。
虚ろな目をして隙間風のような呼吸をし始める澪の様子に、少年は気付く。
その隙間風のような呼吸は、壊れた機械のようで。
ザザザ、ザザザと、聞こえた。
ザザザ、ザザザ。
ヒュー、ヒュー。
時計の音が、カチコチと鳴った。
時の刻みが消えた。
少年は、澪を抱き締めていた。
「!?」
体は心地良い重圧感に包まれている。
シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。
澪は自分が今の今まで泣いていたのも忘れ、目を大きく見開き仰天した。
頭が噴火しそうになった。
少年は澪の小さな肩に顔を埋め、目を細めていた。
それは、うたた寝しそうなほど穏やかであると同時に、哀しそうな表情であった。
「……お、おにいちゃん……?
あ、あの……」
10歳の脳内はパンク寸前まで炎上する。
ただただこの状況に赤面するばかりで、少年が何を思いどのような経緯で自分なんかを抱き締めているのかは知る由もなかった。
少し苦しい。
だけど、先ほどの苦しさとは全く別物だった。
骨が軋みそうな抱擁は震えていて、あの日屋上で行われた光景とよく似ていた。
少年の背中が小さくなっていく。
その時、最期に見た皐月の顔が澪の脳裏を横切った。
澪は少年の背中に短い手を回して、この上なく幸せそうな微笑を溢した。
ねえ、おばさん。
この子は悪魔なんかじゃなかったよ。
やっぱり私の言った通りだったでしょ?
ただの、寂しい子供だよ。
ねえ……
お空からちゃんと見てる?
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる