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少女の恋②
醜い涙
しおりを挟む「ああ、だから大人しくしていろと言ったんですよ」
Tシャツ姿のラフな格好をした少年は、ヒイヒイ泣いている澪を見て『ちょっとした問題が起こった』程度の溜め息を吐いた。
しかしあまり大声で泣かれると、近所から不審に思われかねないと危惧した少年は、機械的な動作で澪の頭を撫でてみた。
「お、おっ、にいちゃん、のっ!ば、かぁっ、あーっ!」
ヒックヒックと引きつった声を上げて泣く様は子供特有のもので、それに困り果てた少年は純粋に面倒臭いと思った。
「すみませんが、泣き止んでもらえませんか」
自分としては最大の努力をもって優しく声を掛けたつもりだが、澪の泣き声が止まる気配は無い。
「煩いんですよ。
ここはマンションですから、もう少し静かにして下さい」
「うぅっ、っく、うう、っうっく……」
苦しそうに咽び上げる澪を見て、少年は再び溜め息を溢す。
何故、子供は泣くとこんなにも醜いのだろうか。
そう思いながら澪を涼しげな目で観察した。
血を昇らせた顔は真っ赤で、グチャグチャな涙が更にそれを醜くさせた。
ひたすら泣き声を抑えると、余計にしゃくれ上がって苦しそうに体を上下させる。
呼吸すらままならないようだ。
不思議そうに少年は眉を潜めたが、しばらくの間そのまま澪を放置し観察を続けた。
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