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少女の恋②
ベランダと死骸
しおりを挟む少年はそう言い残すと脱衣所へ消えた。
ソファの上でひとり、澪は顔を赤らめながらシャワーの音を聞いた。
『今日、私はきっとお兄ちゃんの家に泊まるんだわ』
そう思うと体中の血液が沸騰してしまいそうだった。
これが適齢期の女性だとすれば、この後起こり得る官能的な展開に想像を膨らませるのだろう。
しかし、まだ小学生の澪は顔を赤くするだけで終わった。
それどころか再び眠気が襲ってきて、もうお休みの時間に勝てない状態である。
澪は眠い目をパチパチ瞬かせ、睡魔に打ち勝とうと躍起になった。
皐月との約束を、まだ忘れてはいなかったのだ。
今夜こそが約束を果たすチャンスだと意気込むと、小さな胸を張った。
その時ふいに、灰色のカーテンがヒラヒラと踊っていることに気付いた。
窓が半開きになっている。
それを閉めようと、何気なく澪はベランダの方へ足を運んだ。
窓を閉めるだけなら、物色とは言えないだろう。
これは親切でやっていることだ。
そう自分に言い聞かせていると、ベランダに何かが転がっているのが目に入った。
「?」
何だろうと思うと、澪はそれをよく見るために闇の中で目を細めた。
「!?」
血の気が引いた。
幼い心臓は縮み上がり、背筋に電流が走った。
「きゃああっ!!!!」
思わず大声を上げてしまったが、今はそんなことを気にするよりも誰かにすがり付きたい思いで一杯になった。
ベランダに落ちていた物は、無数の鳥の死骸だった。
乾いた赤黒い血痕が、コンクリートの上で模様を作っている。
死骸、いや、これは死骸とは呼べなかった。それは原型を止めない、ただの残骸である。
あまりのショックに澪は泣きじゃくった。
すると、先ほどの大声を聞き付けた少年が脱衣所の方からやってきた。
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