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少女の恋
病室
しおりを挟む「……あ!待って!」
少女が膨らませた頬を萎ませた頃には、すでにエレベーターのドアが閉まっていた。
「……あーあ、置いてかれた……」
少女が酷くガッカリと頭を下げると、閉まったはずのドアは突然開き出した。
「何やってるんです、早くして下さい」
パアッと少女の顔は明るくなった。
少年が『開』のボタンを押しながら自分を待っていることに、とても感激したのだ。
「うん!待って!」
少女が慌てて少年の脇に立つと、エレベーターは2人を乗せて5階を目指し上昇を始める。
「待っててくれて、どうもありがとう」
「いえ。あまりにも君がチビ過ぎて、側にいるのかと思って」
突き放したようにそう喋るも、事実少年は『開』を押したのだ。
少女は得意げになって折鶴の入ったレジ袋を振り回した。
「さっきからそれ、煩いですよ」
「お兄ちゃん知らないのね!これは千羽鶴って言うんだよ?
お兄ちゃんて無知だね!」
「それ位知っていますが、何を得意げに喋っているんですか」
——ポーン
エレベーターは5階に着き、2人が出るとすぐに下降し始める。
少年は再びスタスタと歩き始めると、どこかへ向かって行った。
それは偶然にも少女が行きたかった、とある病室と同じ方向であった。
「お兄ちゃん、誰のお見舞いに行くの?」
「……」
すると先ほどまでの悪態はどこへやら、少年は急に沈黙した。
重々しい雰囲気を感じ取った少女はそれに気を遣うと、黙って後を着いた。
——あれ?
少女は皐月の病室を目指していたが、不思議なことに少年も同じ病室に向かっているようだった。
ついに辿り着いたその病室を前にして、それは明らかとなった。
少年も皐月の病室に用があったことに。
初めから、目的地はピッタリ同じだったことに。
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