318 / 399
少女の恋
病室
しおりを挟む「……あ!待って!」
少女が膨らませた頬を萎ませた頃には、すでにエレベーターのドアが閉まっていた。
「……あーあ、置いてかれた……」
少女が酷くガッカリと頭を下げると、閉まったはずのドアは突然開き出した。
「何やってるんです、早くして下さい」
パアッと少女の顔は明るくなった。
少年が『開』のボタンを押しながら自分を待っていることに、とても感激したのだ。
「うん!待って!」
少女が慌てて少年の脇に立つと、エレベーターは2人を乗せて5階を目指し上昇を始める。
「待っててくれて、どうもありがとう」
「いえ。あまりにも君がチビ過ぎて、側にいるのかと思って」
突き放したようにそう喋るも、事実少年は『開』を押したのだ。
少女は得意げになって折鶴の入ったレジ袋を振り回した。
「さっきからそれ、煩いですよ」
「お兄ちゃん知らないのね!これは千羽鶴って言うんだよ?
お兄ちゃんて無知だね!」
「それ位知っていますが、何を得意げに喋っているんですか」
——ポーン
エレベーターは5階に着き、2人が出るとすぐに下降し始める。
少年は再びスタスタと歩き始めると、どこかへ向かって行った。
それは偶然にも少女が行きたかった、とある病室と同じ方向であった。
「お兄ちゃん、誰のお見舞いに行くの?」
「……」
すると先ほどまでの悪態はどこへやら、少年は急に沈黙した。
重々しい雰囲気を感じ取った少女はそれに気を遣うと、黙って後を着いた。
——あれ?
少女は皐月の病室を目指していたが、不思議なことに少年も同じ病室に向かっているようだった。
ついに辿り着いたその病室を前にして、それは明らかとなった。
少年も皐月の病室に用があったことに。
初めから、目的地はピッタリ同じだったことに。
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】こんな産婦人科のお医者さんがいたら♡妄想エロシチュエーション短編作品♡
雪村 里帆
恋愛
ある日、産婦人科に訪れるとそこには顔を見たら赤面してしまう程のイケメン先生がいて…!?何故か看護師もいないし2人きり…エコー検査なのに触診されてしまい…?雪村里帆の妄想エロシチュエーション短編。完全フィクションでお送り致します!
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる