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少女の恋

僕も嫌いです

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はぁ。

少年は疲弊した溜め息を吐く。

すれ違う人々は自分と少女を見ているし、ここで置き去りにすれば間違いなく自分に責任が圧し掛かることを少年は自覚していた。


「……この糞餓鬼」


ボソリとそう呟いた後、少年の歩くスピードは少しだけ落ちた。

それに気付いた少女は安堵した表情になる。


「ありがとう」


「いえ、目的地が一緒というだけですから。別に親切でやっている行為とは違います。お礼など不要です」


「お兄ちゃんも病院に行くの?」


「だったら何ですか。
君は他人を逐一詮索するのが趣味なんですか」


病院を目指しながら、少年は嫌味っぽく言った。


「センサクってなあに?」


「おやおや、糞餓鬼な上に無知ですか。おまけにチビで……良いとこ無しですね」


ご愁傷様、とその後に少年は付け足した。


「ごしゅーしょー……?あ!チビって言った。悪口はいけないんだよ」


「悪口ではありません、事実です」



すれ違う人々は2人を見て微笑んでいる。
おそらくは口喧嘩をしている兄妹に見えるのだろう。

少年の胸中は不本意な思いではち切れそうになると、ギロリと少女を睨み付けた。


「……なあに?」


「いえ、何でもありませんよチビ餓鬼さん」


「!チビガキじゃないよっ。……なんかちょっと怒ってきた。
お兄ちゃんなんてカラスじゃん」


「チビで無知でその上図々しい愚かな人間よりは、鴉の方がよほどマシですね」


「ひっどーい……
お兄ちゃんなんか嫌いだ」


すでに病院まで2人は辿り着いていたが、少女はそのことに気付きもせずイジケ始めた。


「それはそれは何よりです。
僕も嫌いです」


少年は朗らかにそう言うなり少女をロビーに置き去りにし、エレベーターまで足を運んだ。


 


 
 

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