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少女の恋
カラス
しおりを挟む少女はそのことに寂しさを感じるよりも、少年の綺麗な横顔に見とれることで一杯一杯だった。
「……何見てるんですか」
お世辞にも好意的とは言えない少年のその態度に、少女は怯むどころか余計に惹かれてしまった。
「ねえ、ありがとう」
首をかしげながら少女が礼を言うと、折鶴の入ったレジ袋も一緒にガサガサと音を鳴らす。
それが耳障りなのか少年は鋭い目付きで折鶴を一瞥した。
しかし何も言わずに再び窓に顔を向けてしまったので、少女はじれったそうに話し続けた。
「あの、お兄ちゃんはどこに行くの?私は病院に行くんだけど」
「何処だっていいでしょう。君には関係ありません」
バッサリと斬るように少年は返答した。頬杖を付き、ひたすら風景を眺めている。
一方の少女はその絵になる姿に夢中になり、何とか会話をしようと試行錯誤した。
「教えてほしいな」
「……」
列車の騒音がしばしの沈黙を掻き消した後、少女はめげることなく無謀なコミュニケーションを再開した。
「お兄ちゃんって、カラスに似てるね」
「は?」
少女の顔は途端にパアッと明るくなった。
『やった!』と今にでも口に出してしまいそうなほど、それはニンマリとした満面の笑みであった。
何故なら少年が、やっとまともにこちらを向いてくれたからである。
しかし端正な顔は彫刻のように無表情で、何を考えているかは容易に想像できない。
本音を言えば、少女は少年に先ほどのような笑顔をして見せてほしかった。
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