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少女の恋

皐月と少女

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するとそこには何度か目にした少女の姿があった。

ガラガラの音の正体は、少女が引きずって歩いた酸素ボンベを乗せた台車である。

痩せ細った小さな手で毎日毎日引きずっては、自分の部屋の前を右往左往していたのを皐月は知っていた。


「おじゃまします」


鼻には酸素ボンベに繋がる管が通っており、懸命に酸素を送り込んでいる。
それ以外は普通の健康な女の子と変わりはなく、興味津々な様子で皐月の顔をじいっと見つめてきた。

皐月は無言で引き出しから透明なビンを取り出すと、中に入っていた色とりどりの飴玉を少女に差し出す。


「ありがとう」


皐月の手招きに誘われ、ベッド脇にあった椅子に少女はゆっくりと腰をかける。
少女はニコリと笑いもせず、きょとんとした顔で飴玉をひとつ口に含んだ。

コロコロと飴玉が歯に当たる音を聞きながら、皐月は自分の胸を撫で擦った。

不思議な沈黙が流れる。

自分が何故、見知らぬ子供を部屋に招き入れたのかは分からなかった。
しかし、煩わしく自分を悩ませるガラガラから解放されたことには違いない。

皐月はそう思うと数回咳き込んだ。


「おばさん、それ危ないよ」


少女は飴玉を口内で転がしながら、皐月の手元に横たわるナイフを見付けた。

ギクリと身をよじらせるも皐月はそれを誤魔化す為に、淡々と言葉を紡いだ。


「果物を剥こうと思って」


 



 

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