304 / 399
少女の恋
皐月と少女
しおりを挟むするとそこには何度か目にした少女の姿があった。
ガラガラの音の正体は、少女が引きずって歩いた酸素ボンベを乗せた台車である。
痩せ細った小さな手で毎日毎日引きずっては、自分の部屋の前を右往左往していたのを皐月は知っていた。
「おじゃまします」
鼻には酸素ボンベに繋がる管が通っており、懸命に酸素を送り込んでいる。
それ以外は普通の健康な女の子と変わりはなく、興味津々な様子で皐月の顔をじいっと見つめてきた。
皐月は無言で引き出しから透明なビンを取り出すと、中に入っていた色とりどりの飴玉を少女に差し出す。
「ありがとう」
皐月の手招きに誘われ、ベッド脇にあった椅子に少女はゆっくりと腰をかける。
少女はニコリと笑いもせず、きょとんとした顔で飴玉をひとつ口に含んだ。
コロコロと飴玉が歯に当たる音を聞きながら、皐月は自分の胸を撫で擦った。
不思議な沈黙が流れる。
自分が何故、見知らぬ子供を部屋に招き入れたのかは分からなかった。
しかし、煩わしく自分を悩ませるガラガラから解放されたことには違いない。
皐月はそう思うと数回咳き込んだ。
「おばさん、それ危ないよ」
少女は飴玉を口内で転がしながら、皐月の手元に横たわるナイフを見付けた。
ギクリと身をよじらせるも皐月はそれを誤魔化す為に、淡々と言葉を紡いだ。
「果物を剥こうと思って」
0
お気に入りに追加
269
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる